「絆」−前編−
このストーリーはARMS「ハートの女王−クイーン・オブ・ハート」をもつ
久留間 恵の視点で書かれています!
………暗い
………ここは………どこ?
あたりを見渡すがまだあたりの暗さに目が慣れない
………しかし闇に対する恐怖は微塵もない
なぜなら私の目は特別だから、力を発動させれば暗闇などは意味を持たない
私は目の力を発動させる……
私の目に備えられたARMSを…
発動するとまわりは昼間のように明るくなった
あたりに見えるのは……・牢獄のように密閉された部屋
部屋には何も無い……いや、ようく見ると隅には監視カメラが備えてある
どうやら私は監禁され、監視もつけられているようだ
「目が覚めたかね?」
スピーカーから声が響く…
私はこの声を知っている…
反エグリゴリ組織「ブルーメン」の創始者であり、「ブルー」と呼ばれる人物だ
しかし私は会ったことはなく、ブルーメンでも一握りの人物しか彼(?)には会ったことがない
「気分はどうかね久留間君?」
私の名を呼ぶ
「………・・」
私は監視カメラの方に視線を向けるだけで返事はしない
「君がそこに入れられている理由は分かっているね?」
声からの質問は続く…
質問に対する答えはもちろん「Yes」だ
私はつい数時間前に仲間(?)、同じブルーメンに所属する隊員に大怪我を負わせた
理由は私を怪物とみなし、中傷したからだ
「…久留間君、我々は組織なんだ」
スピーカーから流れる 声は続く
「組織に必要なのは、仲間と強調できる人間だ」
強調?ふん、私を怪物呼ばわりしたやつらと?
「確かに君の能力はずば抜けているが、訓練中に乱闘を起こして五人も病院送りにする人間など我々は必要としない」
「少しその場所で反省してくれたまえ」
言いおわると声は止み、もとの静寂が戻った…・
…・静寂が訪れると乱闘の原因となった声が聞こえてくる
「ふん!!なにが仲間だ…」
口々に私を罵る声…
私が聞いているとも知らないで…
「仕方ないさ…」
口元に薄ら笑いを浮かべる男もいる
「あの子はARMSという怪物(モンスター)だ、人間がかなうわけがない…」
「所詮、親もいないエグリゴリのモルモットだ」
私の頭の中にはこの台詞の後の私の行動もありありと思い出される…
私は話していた彼らをARMSを発動させて、あたりを血の海にさせるほどの乱闘(?)、
いや、私が一方的にぶちのめして、彼らを皆病院送りにしてしまった…・
…・しかし私には後悔はない
そうよ…・仲間なんていらない!!
私はこれからも一人で生きていくの…・
ずっと…
一人で…
夢を見ていた……
ずっと昔の夢を……・
「言っただろう…俺は二度と仲間を殺させないって…」
…声が聞こえる
『仲間』?わたしの一番嫌いな言葉…
誰?誰がしゃべっているの?
「お前だってエグリゴリの学者と同じだ!!平気で仲間を“物”として扱っているじゃねーか…」
声は続いている…・
誰?一体誰が?
「俺は負けない。そんなやつに負けはしねーぞ!!」
!?
なにかが私の頬に落ちた…
水?
なにも見えない…・
光が欲しい…
光が…
私はうっすらと瞳を開ける…
するとそこには少年がいた
私がつい最近知り合った私と同じARMSの力をもつもの
“魔獣(ジャバオック)”高槻 涼
顔中血だらけになりながらも私を抱えている
いったいなにが?
…高槻を見つめていると、私を見ているのではないことに気づいた
高槻は一点を睨んでいる
高槻の視線の先を追うとそこには一人の男が浮かんでいた
「ククク…クハハハハハ」
笑っている男の周りにはベンチや屋根飾り、ごみ箱、鉄柱、ほかにもたくさんの物が浮かんでいる
!?
私はその男が誰なのか思い出した!
ブルーメンの資料で読んだことがある
エグリゴリで「魔王(セイタン)」と呼ばれている男だ
私はこの時全てを理解した
なぜ私がここにいるのか!
私は高槻に電話で彼の家がサイボーグ部隊に囲まれていることを知らせ、さらにもっと厄介な連中が来ていると知らせようとした矢先に何者かに気絶させられていた
おそらく高槻は私を助けにでも来たのだろう…
何故?
「呆れたやつだ、自分の身を犠牲にしてまでそんな非力な仲間を助けたいか!!」
そうよ!なぜ?
同じARMSを持つものだから?
私が女だから?
それとも誰かに頼まれたから?…分からない
「そんな奴がこの魔王(セイタン)クリフに勝つつもりか!?」
「ジャバオックも発動させずに!!」
奴はジャバオックという言葉を強調した
「虫唾が走るんだよ、高槻 涼」
「その女と共に押しつぶしてやる」
!?
私のARMSが自動的に発動し奴の周りの空気を捉える
奴の周りの空気に微妙な揺れが生じている
おそらくそれが奴、魔王(セイタン)の力なのだろう
そしてその揺れが突如私たちに向かって道を作る
このままだと!
「左30度、身を低くして走るのよ!!」
「えっ!?」
高槻は私の言葉にびっくりしたようだが、すぐに理解して行動に移した
ドガガガガガガガ
「うわっ!?」
私たちがいたところを様々な飛来物が襲う
間一髪であった!
しかし飛来物はまだ浮かんでおり、再び私たちに狙いを定める
そして私たちが走っていく後を飛来物が次々と襲う
飛来物によって起こった粉塵も手伝って私たちは何とか一時にしろ身を隠すことができた
外ではまだ奴が私たちをいぶり出そうと絨毯爆撃のごとく破壊を繰り返している
「大丈夫だ、奴はこの職員用通路に気づいていない…どうやらあいつ目に見える物しか破壊できねーようだな」
息を切らしながら話す高槻
どうやらここは建設途中の遊園地らしい…
そして私たちはそこの地下の職員用通路にいる
「さて…と、さっさと隼人と武士も助けてこなくちゃ…」
高槻はヨロッと傷だらけの身体を引きずって歩き出す
「久留間…お前はここに隠れていてくれ………」
「……」
私はなにも言えない…
こうゆうときなんといったらいいのか分からない…
「馬鹿じゃないの!?」
私に口が発した言葉は私も意識していなかったことだった
「あんた一人であの“魔王(セイタン)クリフ”に挑むつもり!?」
しかし私の高槻への罵声は止まない
「あいつは破壊力が大きすぎて、エグリゴリでも手をもてあましている怪物(モンスター)なのよ!!」
『怪物』……これも私が嫌いな言葉…
私も組織ではこう呼ばれていたから…・
「………・」
「……あなたを見てるとなんか苛立ってくる…」
私にだって理由は分からない
「人質を取られたからってノコノコ相手の用意した舞台に飛び込んでくるなんて…ろくな戦略も立てないからそんな血みどろになって…」
私は話しているうちに負の感情が高ぶってくるのがわかる
これは…・・苛立ち…
「だいたいあんた達はやたら仲間意識が高いようだけど、私まで仲間だと思わないで!!」
そうよ…
私に仲間なんていらない…
私の頭の中に、仲間を病院送りにした解きの映像が流れる
「いくら仲間なんてきれい事いったって、赤の他人なんか信じられるわけないでしょ!!」
仲間なんて言葉は所詮ただの幻想!
そのことを私はよく知っている
私は一人で生きていくの!!
「…………」
高槻は黙って私の言う事を聞いている
「……そうだなぁ……・・仲間っていうとどうもニュアンスが違う…・」
何を言って?
「隼人と武士と会って思ったんだ…オレ達…生まれた時から自分の意志に関わりなくARMSを移植されて、同じ運命を与えられちまっただろ!?」
確かに高槻の言う通り私たちはARMSを移植するための「適格者」として生まれた
…だけど
…だけどそれがどうしたっていうのよ!
だからって「仲間」だなんて私は思わない
だいいち仲間じゃなければなんだっていうの?
ただのARMSを移植された怪物集団?
「つまりオレ達…同じ運命の下で生まれた兄弟みたいなもんじゃねーかってな…」
兄…弟…?
「たとえ血はつながっていなくとも…どれだけ過酷なことが起きようと決して置き去りにはできない…」
「それがオレ達が最後まで信じあうことができる絆だと思う…・」
高槻 涼…あなたはそこまで彼らと信じあえるの?
ただ単に仲間でなく兄弟だと思うことで?
…・あなたがただ単にそう思いこんでるだけじゃない
「ふん…馬鹿らしい!!なにが兄弟よ、なにが絆よ!!」
「そんなの仲間より質が悪いわよ!!」
そう、あなたは所詮はおぼっちゃんなのよ!
「…そーかなー」
な!?そ、そーかなーですって!
「兄弟ごっこはあんた達が勝手にやってなさい。私は一足先に逃げさせてもらうわ」
私は言うと走り出そうとする
「あ…・ちょっと待て。今外に出たら危ないぞ」
高槻は私を呼び止め、忠告をする…・
確かに下手に出たら危ないかもしれない
……けど、
「…・あのねぇ、…私を一体誰だと思ってるのよ」
そう高槻はまだ私のARMSの能力を分かっていない
「戦術偵察型ARMS“ハートの女王(クイーン・オブ・ハート)”。飛んでくる弾丸だって見えるし、1キロ先の本だって読める。あんた達のARMSより数段すぐれた代物なのよ」
そう、私のARMSならこんなところから無事に脱出するぐらいわけはない
「あんた達がここから無事に出られたら、また会いましょうね。まぁ無理だと思うけどね」
私は言うと高槻を残し走り去る
…・私には兄弟も仲間もいらない…
私は職員用の通路を駆け抜け
そのまま一気に外に出た
私は一人で生きていくの!!
一人で…
外に出るとまだ粉塵がまきあがっており、私は周囲を調べるためARMSを発動させる
するとその粉塵はまるで何も無いかのごとく気になら無くなりあたりをクリアーにさせる
が、この時私は自分の不運を呪った!
入ったところとは逆方向から出たのに…・なのに目の前の宙には
魔王(セイタン)クリフが浮遊しており、しかも目が合ってしまった…
「ハハハハ、やっと見つけたぞ久留間 恵。あの短時間で仲間を救出するとはたいした腕前だ?」
奴の形相は怒りに満ちている
…・でも…・
仲間を救出?
なに…私、知らない……!?
「……・だが…魔王(セイタン)にたてついてただですむと思ったら大間違いだ」
言葉と共に奴は多数の瓦礫を中に舞わせ
「この場で処刑してやるよ」
そのまま全ての瓦礫が私めがけて飛来してくる
私はARMSによって飛来物の軌道は見えた!が、
…・だめ…身体が動かない…
私は恐怖から目を閉じてしまった
ドンッ!
鈍い衝撃が私を襲った…
ああ〜私死んじゃうの?
でも…・痛くない…・
死ぬ時は痛くないんだっけ?
!?
ホントに痛くない!
なんで?私生きてるの?
でも確かに瓦礫がぶつかった衝撃が…
私はうっすらと目を開けると地面に寝ていた
体を見るとどこも怪我をしていない
…じゃあ
…じゃああの衝撃は?
私はさっきまでいたところを見るとそこには!?
私は目を見開いた!
そして動けなかった
私がさっきまでいたところには、高槻、高槻 涼が…・・
高槻が鉄柱に己の身体を貫かれおびただしい出血をしていた
私を…かばった?
なんで?なんでそんなことができるの?
「ぐはっ!!」
おびただしい血を口から吐き出す
まだ高槻は生きてはいるが明らかに危険な状態だ
『オレ達は兄弟だから…』
高槻の言葉が頭の中で鳴り響く
どうして?
兄弟や仲間なんていってもしょせん他人でしょ…
私は呆然とする
とにかく助けなきゃ!
そう思って身体を動かそうとするが動かない
ジャリ
不意に音が聞こえそちらを見やると魔王(セイタン)クルフが立っていた
「フフフ、仲間思いとはいいもんだな、久留間 恵」
違う!仲間なんかじゃない!!
私は頭の中で奴の言葉を否定する
「おかげで高槻 涼を捕らえることができた」
「だからお前には名誉な役を与えてやる。奴のジャバオックを発動させるため、お前には生け贄になってもらう」
中編へ続く!
涼のジャバオックを発動させようと
恵に迫る魔王クリフ!
果たして恵の運命はいかに?
どうも〜!筆者のパラサイトです!
これはARMS第5巻の話を恵の視点で書いてみました
なぜ恵か?それは私にも分かりません(爆)
ただ後編で出てくる話の内容が気に入ったからです
一番気に入っているキャラはユーゴーなんですけどね
(うお!ユーゴーの話も書きたくなってきた!)
では後半で!
できれば感想を送って頂けると嬉しいです