『絵本』
終章ーエピローグー ゴルゴンお姉ちゃんは言ったわよね。 好きな人が幸せだったらそれで良いって。 私には高槻君が今、幸せかどうかは分からない。 でも、私の入り込む余地は無くても、高槻君は私の大好きな高槻君だった。 そして最後にほんの少しだけど、高槻君と心を触れ合えた。 だから、私は・・・哀しくなんてない・・・・・・・・・・・・・・・・。 さようなら・・・・・・・・・高槻君・・・・・・・・・・・・・・・・。 さようなら、恵さん、隼人君、武士さん、アル、兜さん、李さん、ラルフ さん、ブルーメンの皆さん、ティリングハースト博士、美沙さん、十三さん、 オスカー、チャペルのこども達、ギャローズ・ベルの皆さん、スティンガー さん、猟犬(ハウンド)の皆さん。 そして・・・ご免ね・・・・・キャロル。 「十三おじいちゃん。」 「なんじゃ、キャロル。」 濡れ縁に座っていた新宮 十三は、キャロルの声に振り返った。 古い絵本を持ったキャロルが、その視線に映る。 「あのね・・・この絵本・・・私に読んでくれない?」 十三は眉をひそめた。 「キャロルはもう人に本を読んでもらうような年じゃないじゃろ。どうしても 読みたいのなら自分で読みなさい。」 そう言いながら、十三はキャロルの落胆した表情に、何とも可哀想なと言う むず痒い気持ちを感じていた。 修一郎や隼人は厳しく躾けてきたが、どうも女の子というのは、またそれとは 扱いが違ってきてしまうもんじゃて・・・・・。 「ご免ね、十三おじいちゃん。 なんか無性にユーゴーの事を思い出しちゃって ・・・。 だから昔ユーゴーに読んで貰ったように、この本を誰かに読んで 聞かせてもらいたくなったんだ。」 「キャロルは、本当にユーゴーさんが好きなんじゃのう。」 「うん。だってユーゴーは私のお姉さんみたいなもんだもん。」 「そうか・・・。」 しばらく十三は、なにかを考えていたがやがて口を開いた。 「どうじゃろう・・・。帰ってきたらユーゴーさんに、ここに住んでもらうと いうのは・・・。」 急に十三の口からそのような言葉が出たのにキャロルは驚いたが、次に十三の 口から出た言葉にもっと驚いた。 「というかな・・・。その・・・ユーゴーさんをゆくゆくは隼人の嫁にどうか と思うんじゃが・・・。」 「隼人お兄ちゃんの!?」 「うむ。キャロルや美沙さん、それに久留間君たちの話から察するにユーゴー さんというのは実に優しくて芯の強い女性のように思える。」 「うん。」 「隼人、あやつも先の戦いでは随分成長した。今まで修一郎達の復讐に縛られ ておったあやつがの・・・。 じゃがワシから見ればまだまだ隼人の奴は 危うい。 奴には包容力を持ち、なおかつしっかりした女子が嫁として必要 じゃ。 ユーゴーさんみたいなの。 どう思うキャロル。」 「まだ・・・早いと思うよ・・・。」 「勿論、今すぐと言うわけではない。 ゆくゆくはという事じゃよ。それに ユーゴーさんの気持ちも聞かねばの・・・。」 うーん。 キャロルは考えていた。 隼人お兄ちゃんは、確かに悪い奴じゃない。 でも、多分ユーゴーのタイプじゃないんだろうな。 だけどそんな事を言ったら、十三おじいちゃんがっかりしちゃうな。 よし。ここは本心で無くても、おじいちゃんに合わせておこう。 「そうだね。ユーゴーが隼人お兄ちゃんのお嫁さんになったら、私も嬉しいな。」 「そうか。」 十三が満足そうに頷く。 「そして隼人お兄ちゃんとユーゴーの赤ちゃんが産まれたら、私がその子の面倒 見てあげる。」 「うむ。」 「そんで赤ちゃんが大きくなったら、私がこの本を読んであげるわ。昔ユーゴー に読んでもらった様に。」 話しているうちに、次第にキャロルはこの考えを気に入り始めた。 隼人お兄ちゃんとユーゴーの前で、隼人おにいちゃんかユーゴー、それか二人 のどちらにも似た子供に絵本を読んであげる自分の姿。 なんかとっても楽しそう!! 「キャロル、ここに座れ。」 十三が自分の座っている隣の濡れ縁を叩きながら言った。 素直にキャロルがそこに座る。 「これキャロル。その本を持って来ぬと・・・読んでやれんじゃろ。」 照れ隠しの為か、十三がぶっきら棒な口調で言う。 喜んだキャロルが、絵本を持って十三に渡すと、十三はキャロルが座るのを 待ってから、たどたどしく棒読みで朗読を始めた。 月光がそんな二人を優しく包んでいた。 The End |
後書き
この度は、私の拙作「絵本」を最後まで読んで頂き有難う御座いました。
この作品は、ARMS本編で亡くなったユーゴー=ギルバートを偲んで何かユーゴー
関係の作品を書きたいとの思いから誕生してしまいました。
最初は涼と恵がユーゴーの墓の前で生前の彼女の思い出を語り、ユーゴーの
墓を皆で訪れる日を決めて別れると言うストーリー
、研究所時代の短編など
間接的にユーゴーが関わる物を考えていたのですが、先日実家で最近結婚した
妹に会い、やはり兄妹は良いものだとの思いから、涼たちと会う以前の生活を
彼女の視点からという形で書いてしまいました。
思いっきり私の思い込みで書いてます。
ユーゴーファンの方、すいません・・・・・。
それでは、本作について2〜3お話を・・・・・。
本編には登場しないメアリーとゴルゴンと言う私が勝手に創り出したキャラクター
は、ユーゴーが余りに出来た娘なので、きっとクリフの他にも彼女を可愛がった
人が居た筈だと考え、創りました。
じゃないとあんな人権も無い研究所だと性格が歪んでしまっちゃうんじゃないか
と思ったものですので。
それと同様の考えで、居住空間での生活は実験時間や、消灯後などを除けば比較的
自由なものとしました。
またユーゴーのテレパシストの覚醒を二段階に分けたのも、あまりに幼い時期
に人の表層心理がオープンラジオのように入って来たらすぐ精神崩壊するのでは
と思い、完全覚醒は12歳ごろにしました。
まぁそれでも早すぎる気はしますが・・・・・。
でもそうなると18歳で天に召されるまでの期間が短かすぎるので・・・・。
X-ARMYの設立を比較的遅くしたのは、原作ではクリフやユーゴー達は実験動物的
面が強調されており、とてもエグリゴリの戦闘部隊とは思えず、最近になって
設立された特殊な実験部隊という事にしました。
あと終章の話は、十三の祖父馬鹿ぶりを書きたかったので書いてしまいました。
十三フアンの方、ご免なさい・・・・・。
文章の稚拙さ、誤字脱字などが御座いましたら、何分素人の書いたものですので、
ご容赦ください。
内容の方も、あくまでも銀光の考えです。
皆様のご意見・ご感想が御座いましたら、メールで送信して頂けましたら幸いです。
銀光
パラ@管理人より!
銀光さん、どうも長いこと『絵本』の投稿ありがとうございました!
銀光さんの次回作を心よりお待ちしております♪
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