Take1.




俺の奴への印象…

一言で言えば"優等生"、そんな言葉が何故かまず頭に浮かんできた

根暗といった陰気さもなく、かといって陽気な感じもない

こちらが話し掛ければちゃんと返してくるし、冗談だってもちろん言う

別に太っているとか、がりがりに痩せているといった身体的特徴はなどはなく
美形といった整った顔立ちに短い髪が調和しており
男の俺から見ても顔のつくりは悪くないなどといったレベルではない

その証拠に密かに女生徒間では人気があるのだろう、
よく奴のほうを向いてヒソヒソと話している連中を見かける

もちろんその話題は嫌悪といったものではない

だが俺にはそんなことよりいつもかけて
外さないそのメガネが印象深かった


そいつの名前は天文寺(てんもんじ)……


……しまったな…俺はまだクラスの生徒の名前全部を覚えたわけじゃない

だが苗字は覚えやすかったのですぐ覚えたのは事実だ

とにかくその天文寺はいつも一人で度際の席に座って
休み時間なにかしら様々な本を読んでいる

「テーブルマナー」「科学100選」「美味なるコーヒーの煎れかた」「独裁者の心理」
などの本に始まり、
科学・物理・宗教・天文学、考古学、哲学、心理学…
種類も本当に様々だ

そして驚いたことにこのあいだなどは「恋愛白書」なるものまで読んでいた

それを見たときは俺は本当に驚いた

別にそいつが女に奥手だとか、女嫌いだとか、
更に言ってしまえばホモ、古風な言い方をすれば男色だとかいうわけじゃあない

ただ天文寺がそんなものを読むなんて思わなかったからだ

とにかく様々な本を休み時間になると誰とお喋りをするでもなく
一人黙々と読んでいる



俺の名前は青山佑作

成績は中の上

友達付き合いはそこそこ

結構かわいい彼女が一人

趣味は特になし…
この前の進級時の自己紹介では音楽鑑賞と書いておいた

17年間生きてきて、まぁこんなもんだと思ってすごしている

とにかく毎日をなんの刺激もなく過ごしていたのだ

だからっていって別に無口だとか暗いといった性格でもない

普通に友人と話して、時にはその友人を笑わせるようなことだって言う

女に対して奥手なこともないし、普通に話せる

彼女がいるというのがその証拠だ

俺、青山佑作

たいした不満もないけどなんとなく退屈を感じる今日この頃だった


そんな俺は最近奴に興味を引かれていたのは事実だった…

そのメガネを通して奴はどんな世界を見ているのか

そして奴という人間に今までにない関心を抱いていた

こんなことは初めてだった…
自分の彼女にすらこんな気持ちを抱いたことはない

いったい天文寺って……


(つづく)

2001年2月2日



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