Take.13


「イテテテテテテテッ!」

「バカ!痛ェぐらいですんでよかったと思え!!」


ここは天文寺の部屋

なんでこんなところに俺がいるのかって?

それは天文寺曰く“名誉の負傷”の手当てをすべきため

天文寺は道路に飛び出した子供を救うべく飛び出した

そして車のブレーキの叫びが響く中、天文寺は見事にその子供を助け出したってわけだ

だがその助けた代償として、飛び込んだ時に頬を切ったらしく男前が台無しだなどとほざいている

まぁそんな軽口が叩けるのなら大丈夫だろうとは思うが

まぁこんな性格のやつでなきゃ俺はこいつとは付き合わんとは思うがな


「よっし、と!!」

「イテッ」

「バーカ、一応消毒して手当てはしといたけど病院行ったほうがいいぜそれ」

「どれどれ?」


俺の忠告など無視するかのように天文寺は鏡で自分の顔を確かめる

そして様々な角度から確かめつつ


「……そういや今日って何日だったっけ?」

「あん?」


俺は予想もしなかった質問だったので最初何のことかわからなかった


「今日の日付だよ」

「あ、ああ ……ちょっと待て」


俺は鞄の中から携帯を取り出して今日の日付を確認する


「6/14」

「サンキュ」


天文寺はお礼を言うと同時に小声ながら何かを呟いた


「じゃあまだ大丈夫か」


と……

俺にはなんのことだかわからないが、

興味はあってもそこどまり、磨有美曰くの「まぁ、いっか」ってやつ


(ピッピリリリ ピッピッ)


「……なにその着信音?」

「…ふふ、秘密!」


天文寺のその言葉に背筋がゾクッする

そして妙に色気のある表情だった


「もしもし?あ、社長……えっ?」


電話に出てる天文寺が何やら慌てている


「だって、それは2週間も先のはず……ちょっと待ってくださいよ社長!俺今顔ケガして…………わかってますよ、でも不可抗力なんだからしょうが……―」


ふと天文寺の声がとまり、俺のほうにその視線を向ける


「な、なんだよ」


俺は思わずそうもらす

だが天文寺のやつは相変わらずに俺をただじっと見ているだけだ

そして暫くすると再び俺に背を向けて、


「社長!一人見込みのあるやつがいます。たしかこの仕事なら大丈夫でしたよね?……ええ、ええ。任せてください、そっちの方も大丈夫なやつですから」


…そっちのほう?

おそらくその言葉は俺を示しており、天文寺のさっきの様子と電話の話の内容俺のことを言っているのだと想像できる


「ええ、じゃあそういうことで!」


その言葉を終えるや、天文寺は俺のほうを向いて再び色気のある笑みを浮かべる


「な、なんだよ ……その笑みは」


俺は天文寺が何かを言う前に言ってしまった

これは俺もさすがに動揺しているせいだと自分でもわかる

そしてまた同時に興味もある

一体天文寺が、いや電話の相手がか?

どちらにしろ俺に何をやらせるのかということにだ

そして天文寺の言葉は俺の予想していない言葉だった


「青山、お前バイトしてみる気……ない?」

「へっ!?」




(つづく)

2001年10月25日


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