Take.6





「ファ〜〜〜…」

「あれ、佑作ってば寝不足」

「ん〜…昨夜ちょっと遅くまでテレビ観てたからかな?」

「何のテレビ観て…ハッハ〜ン♪」

「な、なに? そのさもわかったような笑いは」

「いやいや、全てを言わなくてもわかってますよ佑作の旦那!」

「旦那って…磨有美…」

「佑作も男だもんね〜、わかってるわかってる」

「!?」

「いや〜やっぱ佑作ってば若いね〜 …昨日私としたばかりだっていうのに」


この一言で俺は磨有美が何を考えているかがわかった

そして思わず赤面してしまう


「ち、違う違うっ!」


俺は思いっきり否定する


「まぁーまぁー、そんなにむきにならなくても… でもむきになった佑作も結構可愛かったりして」


口に手を当ててプププッと笑う磨有美

これだ、この磨有美の性格が俺には苦手だ


「磨有美!!」


俺は自分でも顔が紅潮しているのだろうというぐらいに恥ずかしかった

だってそうだろう?

昨日ホテルで男と女がすることをした…

それで二人ともなんの不満もなく、むしろ満足して家に帰ったはずだ

それなのに磨有美は家で俺が…その…

ああ〜、言えるわけないじゃないかこんなこと!


「ねぇーねぇー、でそのAVってばどんなのだったの?今度私にも観せてよ♪」

「だから違うって言ってるじゃん!!」


俺は思わず声が大きくなっていることに気付かなかった


「昨日磨有美とシタばっかだっていうのにどうして夜中にAVなんか観る必要が―!!」

「…………」


ここで俺はやっと自分の声が周りに聞こえるぐらいに大声になっていることがわかった

しかもここはもう俺と磨有美が通う学校内である

当然周りには俺と同じ制服をした男子生徒、そして女子生徒がたくさんいる

もちろん顔見知りだっているのだ


(………やば……)


まわりの視線が痛いぐらいに感じる


「よっ、青山!良く言った!!」

「よっ、ご両人昨日は熱かったようだね」

「昨日“も”だろ?」

「青山くんと磨有美ってば仲いいね〜」

「結婚式には呼んでくれよ〜」

「磨有美、避妊だけはちゃんとしてもらいなよ〜」


(………)


案の定外野からは口々に笑い声の混じった声援が寄せられる

俺はなにも言えずただこめかみを抑えて天を仰ぐばかりだ

そして磨有美は……

その声援の一つ一つに応えるかのように周りに手を振っている

いつも思うのだが磨有美には羞恥心とかいうものはないのだろうか? と無駄と思いつつ期待してしまうのだった



(つづく)

2001年3月20日


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