Take.9
「はい、これがサンドイッチで、こっちがフライドチキン、でもちろんサラダに卵焼き……」
屋上にやってきた俺の眼前に並べられた料理の山々
俺はその数に圧倒された
しかもまだまだカバンの中から出てくる
「これ…全部……君が作ったの?」
「そだよ!」
「どうだ!」と言わんばかりに胸を張って言いきる佐々木磨有美
「料理は私の特技の一つだからね」
俺はそれを軽く聞き流してとりあえずサンドイッチを一つつまんで口の中に入れる
「どう?」
そして俺がサンドイッチを飲みこむや否や、彼女は俺にサンドイッチの意見を求めてきた
俺はズボンのポケットからハンカチを取り出して軽く口の周りを拭き
「どうって……君は俺に料理の批評を求めるためにこんな手の込んだことをしたわけじゃないだろ?」
「う”っ」
俺の意見が的を射ていただけに彼女の方もぐうの音しか出てこない
弁当を食べるのは口実、彼女にはなにか聞きたいことがあるからこそ俺に話し掛けて来たのだ
「で、君が聞きたいのは……ズバリこの間のことだろ?」
俺は口元を歪め、苦笑しながら彼女の言いたいことを予想してみる
そして彼女の方もそれは全然的外れじゃない証拠に勢いよく首を何度も縦に振った
「ったく…」
予想していたこととはいえ、まったくそのとおりなんだから多少ため息も出るというものだ
「で、で……あの女(ひと)は天文寺君の……彼女なの?」
遠慮もなくズバリストレートに質問を浴びせてくる
まぁ俺としても遠まわしに聞かれるよりもはっきりと聞かれたほうが気分的にもいいことは確かだ
まわりくどい質問などはかえってその質問者の性格等が下劣に見え、つくづく人間というものが嫌に感ぜられる
だが彼女のこれは不快ではない、むしろ好意に値する
(だがやはりストレートは……)
そう思いながら付き合うとなるとかなりの苦労はしそうだと実感する
そう思いながら俺は青山の苦労を察する
「ねぇ、ねぇ」
俺のこんなことを考えているなどは意にも介さないのだろう
彼女は俺の回答を急かす
さて、なんと応えたものやら…
「……なんで佐々木はそんなことが気になるんだよ?」
とりあえず俺はそう応える
この質問に対する彼女の回答にも興味があったからだ
「う〜〜〜ん……わかんない」
(ズルッ)
彼女の回答に俺は座りながらその場に崩れ落ちた
う〜〜ん、言い切れる彼女の性格が羨ましいというかなんというか
「ただね……天文寺くん……君ってどことなく他の男子と違ってて興味ある存在なんだよね」
「お褒めのお言葉感謝いたします」
彼女のその言葉に悪意のないことから俺は素直に感謝の言葉を述べる
「そのお褒めの言葉にさっきの質問には応えるよ」
「ホント!?」
「ホント……応えは“No”」
「マヂ?」
「マジ」
「じゃ、じゃあさ彼女は……!!」
そこまで言い掛けた彼女の言葉を手で制すると俺は立ち上がって昇降口に歩き出す
「質問には応えたよ。それとごちそうさん、マジでうまかったよ!」
「またお昼誘ってもいい?」
「……本気で言ってんのソレ?」
「もちろん☆」
「…青山が嫉妬しない?」
「う〜〜〜ん、佑作が嫉妬?考えたこともないな〜〜〜…」
(おいおい、お前等の関係って一体なんだよ)
俺は口に出して突っ込みたかったが敢えてその言葉を出さない
「まぁ大抵の日は本でも読みながら昼は食いたいし…」
「駄目?」
暫く考えるフリをしてから俺はニッを笑うと
「卵焼き、もう少し甘さを控えてくれたら考えるよ」
とだけ告げる
すると彼女も俺の意図を察したらしく笑みを浮かべると
「了解!」
と返事を返す
そして俺は彼女を屋上に残して昇降階段を降りて屋上を後にした
俺が階段を降り終えた時、校内に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた