Written by エル
「まりなぁ」
桂木弥生の呼びかけは、デパート内の喧騒に掻き消された。
彼女は、親友の法条まりなの休暇に付合って、ショッピングに来ていた。
3階、淑女コーナーの一角で、弥生は、少々、困った顔で、前方の激戦を見つめる。
バーゲン。
「ちょっと、弥生っ!! この服似合うと思わない? こっちのワンピもいいわよね?」
どっさりと服の山を抱えて、まりなが振り返る。
「ホラ、弥生もボーッとしてないで」
パワー全開の顔で、まりなが弥生の袖を引っ張る。
「いや、私は……」
「ね、このバッグもイイと思わない? ちょっと! おばサン!! これ、私の方が先よ!!」
「はぁ……」
軽く息を吐きつつ、弥生は後ろにあった柱に背を預けた。
「あう〜、重い……」
安さに目が眩んで、買いすぎちゃったかしら?
「まりな、買いすぎじゃないのか?」
や、やっぱり……。
う〜ん、問題は、私におしゃれするほど時間的余裕があるかどうかよね。
ほとんど、スーツなんだもの。
教官というのも因果な仕事だわ。
あ〜、捜査官の時は、私服で良かったのに〜。
「ねぇ、弥生、ちょっと持つの手伝って欲しいんだけど?」
「仕方ないなぁ」
弥生は、溜め息をつきながら、吹いていた煙草を携帯灰皿に押し込む。
あんなの持ち歩いてるなんて、さすが、ヘビースモーカーね。
「ホラ、半分持ってやるよ」
「うふふ、アリガト。まるで、私たち夫婦みたいね」
私の言葉に、弥生は真っ赤になった。
「そ、そういう妖しい冗談はやめてくれ」
「なに、赤くなってんのよ?」
「心底嫌なだけだ」
「嫌よ嫌よも良いのうちってね」
「捨てるぞ」
「わぁ〜っ!! 嘘嘘っ!!」
「まったく。で、お昼はどうする?」
「お蕎麦なんてどう? 近くにおいしい店知ってるのよ」
「へぇ、まりなのお勧めの店か。良いんじゃないかな」
ホントは、私の教え子のお勧めなんだけどね。
まぁ、そこは、教官の特権ということで、私のお勧めにしておくわ。
「はぁ……食った食った」
「ま、まりなぁ、オヤジっぽいぞ」
「うぐっ……」
「そんなんだと男も寄って来ないぞ」
「や、弥生こそ、小次郎とはどうなのよ?」
「い、いや、それは関係ないだろ?」
「ふ〜ん、うまくいってないんだぁ?」
「そ、そんなことは、どどどどどうでもいいだろ!?」
弥生ったら、彼のことになるとホントおもしろいわね。
私も彼氏欲しいなあ……。
「はっは〜ん、氷室さんに取られちゃったとか?」
「ひ、氷室さんがなんだってんだっ!? 私の方が深ぁぁぁく小次郎のことを……」
「深く?」
「いや、その、なんだ……ぶつぶつ」
「もう、彼のことになると、大慌てね」
「……荷物、捨てるぞ」
「わぁ〜っ!! ゴメンゴメンッ!!」
「さあ、飲むわよっ!!」
「ちょっと待て、まりな」
「何よ?」
「なぜ、脈絡もなく飲みモードに入っているんだ?」
「なぜって、今夜は一緒に朝までぱ〜っと飲みもうって約束したじゃない」
「いや、それはそうだが、それは昨日の約束であって、唐突に場面変換されては読者も困るのではないかと思ってな」
「弥生、読者ってなによ?」
「えっ? さ、さあ?」
「もしかして、電波!? 電波には気をつけなさいよ」
「はぁ?」
「何でもないわ。それより乾杯しましょ」
「そうだな」
「じゃ、かんぱ〜いっ♪」
「乾杯」
んぐっんぐっんぐっんぐっんぐっんぐっ……ぷはぁ♪
「よっ、いい飲みっぷりだね〜、弥生ちゃん!!」
「謎ハイテンションだな、まりな」
「さぁて、小次郎でも呼び出す?」
「何だ、その展開は!?」
「だって、ほら、おもちゃが欲しいじゃない」
「おもちゃって、あのなぁ……」
「いいじゃないのよ。ね?」
「わ、わかったよ。じゃあ、私が電話かけるから」
ピッポッパ……。
プルルルルル……プルルルルル……。
「は〜い、あなたの街の便利屋さん天城探偵事務所でございます!って、小次郎!! どこ触ってんのよ!?」
「ぐはあっ!?」
ガチャッ!!
「留守だった」
「……」
氷室さんの声が聞こえたのは気のせいね。
小次郎の声が聞こえたのも気のせいね。
気のせい、気のせい。
弥生のこめかみが引き攣ってるのも気のせいよ。
「……」
「じゃ、じゃあ、私の教え子でも呼ぶわ。おもちゃにするのにちょうどイイのが一匹いるから」
杏子なら、絶好の酒の肴よ。
「い、一匹って、ひどい言われようだな」
「良いの、良いの、気にしないで」
ピッポッパ……。
プルルルルル……プルルルルル……。
「はい、桐野です。お〜い、杏子!! 電話だぞ〜!!」
「待って〜、今、お風呂上がるからぁ」
ガチャッ!!
「留守だったわ」
「……」
私の言葉に、弥生のこめかみを汗が伝ったのは気のせいね。
あ〜、杏子のヤツ、今夜はお楽しみねッ!?
今度、また、いじめてやらなきゃ!!
「ふぅ、仕方ない、二人で飲み明かすか」
「ちょっと待って、もう一人、私の教え子に良いカモがいるわ」
「じゃあ、頼むよ」
「OK」
ピッポッパ……。
プルルルルル……プルルルルル……。
「はい、水見です」
「ああ、葵? 私、法条だけど?」
「法条教官? 何か用でも?」
「用があるから電話したのよ。今、暇?」
「はぁ、暇といえば、暇ですけど?」
ホッホッホッ、葵は暇なのね。
にやり。
「ほらほら、葵もグッといきなさい、グッと♪」
「シクシクシク、何で私がこんな目に!?」
「こんな目とは何よ、こんな目とは!?」
「うむ、シイタケの断面のような目だな」
「ひょっとこのような目より、断然かわいいと思うわ」
「(一体、何の話を……つ、ついていけないわ)」
「葵、これも飲んで〜」
「ゴクゴクゴク……!? げはっ!? げほげほっ!!」
「うむ、90℃は、やはり危険なようだな」
「殺す気ですか!? げほげほっ!!」
「軽い冗談じゃないの」
「法条教官の冗談って一体……?」
「う〜ん、それにしても、暑くないか?」
「アラ、弥生。もう、クロスアウト?」
「フフッ、帝国軍人たるもの、薄着で戦えなくてどうする!?」
バサッ……。
「よっ、いい脱ぎっぷり!!」
「な、なぜ、下着に……?」
「ふぅ、涼しい。やはり、飲むときは、この格好が一番だな」
「じゃ、私も脱いじゃおうッ!!」
バサッ……。
「フッ、洗濯板だな」
「が〜んっ!?」
「ほ、法条教官まで下着姿に……!?」
「さ〜て、葵ちゃ〜ん、ここで問題です」
「な、何ですか?」
「この部屋の中で、一つ調和が取れていない部分があります。それはなんでしょう?」
「さ、さあ?」
「ヒントは、私たち3人の中の調和だな」
「えっ!? それって……(逃げた方がいいかしら?)」
「葵、脱ぎなさ〜い♪」
「ひいいっ!! やっぱりっ!!」
「あっ、逃げるなっ!! 弥生、抑えて!!」
「うむ」
「せ、先輩、冗談はやめましょう? ね、ね?」
「葵、往生際が悪いわよ♪」
「きゃああああああああああああああああ!!??」
かわいい声ね。 さすが、私の教え子よね。
ああ、楽しい。
リフレッシュできる休日の過ごし方はこれに限るわね。
さぁ、葵、今夜は帰さないわよ〜。
その後、水見葵がどうなったか知るものはいない。
あとがき
パラサイトさん、10000HITおめでとうございます!!
このショートストーリーをお贈り致しますっ!!
最初は、「まりなの一日」という話だったのですが、どこで軸が狂ったかまったく意味不明の小説と相成りましたこと、お詫び申し上げます。
時間軸や、キャラ関係は無視させていただきましたので、あしからず。
内容がないのは、コメディということで、お許しを。
この贈り物にめげず、これからもHP更新がんばってください(笑)
-パラサイトの感想-
エルさんに拍手〜〜〜!!
すごいぜエルさん!まさかうちのキャラの葵まで出していただけたとは(笑)
最初まりなが教え子呼ぶっていった時他に誰がいたっけ?
っていう思考になったんだけど、出てきたときに笑っておったよ★
10,000へのお祝いにかようなものを頂きメルシィ〜エルさん!
Novel