………眠い………
……このまま瞳を閉じ続けていたい………
…しかし私にはやらなくてはいけないことが……
……………………………………
やらなければならない!?
……何を?……
思い出せない………
でも思い出さなければ……
これは私がやらなくてはならない責務、そして……
…私の過去の鎖を断ちきるための…
…でも何を!?
何をしなければならないんだ!
誰でもいい、教えてくれ!!
私の前に誰かが浮かび上がってくる…
誰?
…男だ、だがそいつは背を向けている
……男!?誰なんだお前は、いやだが私は奴を知っている
いつも何を考えているのか悟らせず、大事なことを胸の中にしまい込んでいるそいつを…
たった数日の付き合いだったが、奴とはなんでも話せるような気がした
もちろんそれは私の思い込みだったかもしれない
ちょっと暗い感もあるが、それがまた奴への興味を湧き立たせる
…そう数日とはいえ私にとって大切な存在
だが今私には奴の名前が浮かんでこない
男がこちらを振り返る
そして私と奴との視線が交錯する
そしてどこからともなく一風の風が私の頬をくすぐる
その瞬間、私は不安が払拭されたような気がした
奴の名…
奴の名前は…
”見城 ! !”
私はうっすらとその瞳を開けたとき、最初に視界に入ったのは見知らぬ天井であった
私にはここがどこなのかわからない、いやなんでここにいるのかさえも
「……ここは……どこだ…」
不安を払うためにも思ったことを口に出す
私の現在の状況、それは見知らぬ場所でベッドに寝かされているということ
両隣には点滴と心電図であろう医療器具が置かれている
そしてその無機質な機械音を断続的に誰にともなく告げている
私には自分がいまどこにいて、どうしてここにいるのかはどうでもよかった
ただ窓から吹き込んでくる風の息吹が心地よく感ぜられ、生を実感できるのだった
ガラッ
私の部屋の扉が静かに開かれる
私は顔は動かさずに、目だけその音のした扉の方に向ける
そこには見たこともない女がいた
「あら、目が覚めたんですね?もう4日も眠ったままだったんですよ」
良く見るとその女性は看護婦のようで、私に優しく微笑みながら語り掛けてくる
私はその微笑みを見つめながら
「……4日も……眠っていたのか……」
誰にともなく、ただ自身に語った
「4日……か…」
私は窓の外に見える青空を見つめながらつぶやいていた
簡単な診察も終え、彼女は何をするでもなく身を起こしてただ窓の外の景色を眺めていた
彼女には今何もすることがない、いや、すべきこと考えるべきことはたくさんあるはずなのに彼女は敢えてそれをしようとはしなかった
視線をふと医師が置いていった新聞に目を移す
そこには『世界を襲った恐怖!だが救世主は日本からやってきたたった一人の女性!!』『プリシア女王、その無事な姿を国民の前へ!』この2つの話題がもっぱら取り上げられていた
日本からやってきた女性…
「フッ、あいつのことか…」
私はそのことを考え始めたとき、彼女との初対面のことも思い出していた
そう、桐野 杏子との出会いを…
コンコン
考え始めたちょうどその時来訪者を告げるノックが病室にとどろく
返事をするのはおっくうで、どうしようか迷ったが…しないわけにもいかないのでとりあえず「どうぞ」としか言わなかった
そして扉は開かれ来訪者は入室する
だが私はそちらには目を向けず、窓の外を見続ける
「………」
来訪者は私の近くまで近寄るが、そのまま黙って立っている
だが私は気にせずにそのまま外を見続けている
そのままその沈黙は約10分ぐらい続いたのだろうか、来訪者は未だに話し掛けようとすらしない
こちらからも話し掛けようとは思わないし、それに…
それに、私には今なにもすべきことはないのだからこのまま時が流れていっても一向に構わない
そしてさらに約倍の20分が経過した
「いい…天気ですね…」
「!?」
来訪者はやっとその重い口を開き私に向かって語り掛けてくる
私はこの時驚愕した
なぜなら私はこの声の主をよく知っていたから…
私にとってこの声の主は…
すぐさま振り返るとそこには思った通り、その声の主エルディア女王プリシアその人がいた
「プ、プリシア様!?」
そこにはこのエルディアの最高権力者たるプリシア女王がいたのである
「やっとこちらを向いてくれましたね」
プリシア女王はニッコリと微笑みながら私に語りかけるが、その表情は次の瞬間に変わった
彼女の両目から涙が零れ落ちたかと思うと、その涙は止めど無く彼女の頬を伝い止まらなかった
「プ…プリシア様…!?」
私は一体彼女に何事が起こったのか、なぜ泣くのかがわからずにただ狼狽するしかできない
何と言ったらいいのか、このような状況でなにを言えばいいのか、思案にくれるばかりである
「……モニカ…」
だが私がなにかを言う前に彼女は私に抱きついてくる
「プ、プリシア様、……一体!?」
私は彼女のこの行為にふたたび狼狽させられるが、彼女の次の一言で彼女の気持ちが私には分かった
「よかった…モニカ……あなたが生きていてくれて本当によかった」
「!?」
私にはこの瞬間彼女が私への気持ちがはっきりと分かり、顔には自然と笑みがこぼれた
…こんな私でも生きていてくれてよかったと思っていてくれる人がいる
…私の居場所がここにはある…
…私、モニカ・セレッティは彼女に必要とされている
彼女の意を察してか、私はしばらく彼女のやりたいようにさせていた
「モニカ、この度はご苦労でしたね」
彼女はしばらくして冷静さを取り戻し私と向かい合う
「ええ……しかしあの桐野杏子がLost Oneを食い止める救世主になっていたとは…」
「(クスッ)あなたも彼女に助けられた一人なのですよ」
彼女のその一言に私は思わずプッと吹き出し、
「確かに」
私はこの時どんな表情をしているのかは知らないが、目の前のプリシア様の顔を見ればおそらく笑顔なのだろうと察しがつく
だが、彼女も少し笑みを浮かべるが、すぐに悲しい表情の一面を見せる
「しかし…今度のことで帰らぬ人がいることも事実なのです」
その言葉に私は彼女の言葉が誰を指しているのかに気付く
私はベッドの隣りにおいてある男物の腕時計に視線を移し…
「やはり、彼……見城は死んだのですね…」
私は極力冷静にその事実を受け止めようとするが、自分でも胸が苦しいのが言っていてわかる
彼女も私の意を察してくれたのか、首を静かに縦に振る
「ええ、彼の最後は杏子さんが看取ったそうです」
また……桐野か……
私は心の中でそう呟いていた
私はプリシア女王の身を守るため、自身の危険も省みずに彼女のクローン、コードネーム”EVE”こと御堂 真弥子を連れ出していた
いかなる権力争いからもプリシア女王と、彼女御堂 真弥子を守るため
…そしてこの国での私の呪いの呪縛を解き放つために…
そして砂漠へと運び出し、ここなら安全と考えたところまで運び後はEVEを見つからないよう埋めればそれで全てが終るはずだった
だが私はそれを目前に力尽きてしまった、いやLost One が私にも発生し、そのまま眠りについてしまった
本来なら目覚めることのない永遠の眠りへと
だが私は今こうして生きている
結局桐野はプリシア女王や御堂真弥子を救っただけでなく、Lost Oneに感染していた世界中の人々、そして私さえもを救ったわけだ
だが自分の先輩であった見城は救えなかったわけだ
私はそう考えると自然と再び窓の外に視線を移していた
「モニカ、あなたは見城さんを……愛していたのですか?」
彼女、プリシアは私に唐突な質問を投げかけた
「……………」
しかし私はこの質問には応えずにいた
いや、応えることができなかった
「……わかりません…」
私の発した言葉はただそれだけだった
「……ただ、私があなたを守るためにEVEを運んで逃走していた間、アイツは私を探して……そして見つけてくれました」
「その前に会ったとき、私達は互いの立場、いや面子にこだわって喧嘩別れしたままだったのです」
私は黙って告白を続ける
「私はEVEを運んで逃げなければならず、その道中見城とはその時が最後なのかと思ったら・・・正直悔やんでいました」
「………でも」
私に両目にふたたび涙が溢れてくる
「でも目を覚ましたとき私の隣りにアイツが…見城がまるで子供のように静かに眠っていた、私にはそれだけで嬉しかった」
「そして私は奴の腕時計を借りて、何も告げることなくその場を去りあの場所へと向かったのです」
私は全てを彼女に語った
それを黙って聞いていたプリシア女王は私に向かって優しく微笑み、
「モニカ…それはあなたは見城さんを愛していた証拠よ」
「!?」
愛していた?
私が……見城を!?
その言葉を聞いた瞬間私の目にたまっていた涙が頬を伝う
同時に外からの風がその頬に吹きかけてくる
その風は私が長年囚われていた呪縛から解き放ったような気さえした
その囚われていた呪縛はどこへ行くのだろう?
だが私にはそれとなく感じられる…
その思いはそのまま砂漠の風が運んでいくのだろう…
そしてそのまま砂漠の土に飲まれ新たな思いへと
私はそう思いたい……
「兄さん…見城……」
「…会いに行くのはもう少し先になりそうだ」
「私にはここでやることができた」
そう、しっかりと地に足をつけて為さねばならないことが
だからこそ2人には私を見守っていて欲しい…
会いに行くのが少しばかり遅れるだけなのだから
その時風が再び私の頬を伝っていった…
後書
この話の設定はほとんどの方がご承知の通り”Lost
One事件”の直後です。そもそもSS版では死んだのに、PC版では生存していたといったキャラなだけに自分の中ではかなり印象に残っておりました。
今回のこのFD プロジェクト、本来の締め切りが3月中旬(やったかな?)で、「とても間にあわ〜ん」ということで一時は辞退したのですが、締め切りが延期になったために急遽参加を決心しました(^^;
で、これの構想は2月、一ヶ月ほどのアメリカ短期留学の際に行きの飛行機の中10時間(飛行機の中で眠れないという事もあって)必死に考えながら書いておりました。
所々読みにくいところもあるでしょうがそこは飛行機内での上空での気圧変化による・・・・ウソ、ただ単にまだまだ私の表現能力等がつたなかったという事でご理解ください
とういうのがFDプロジェクト参加のために書いていた内容
で、今度のが自分のHPにて公開するために多少手を加えたものです
モニカ、彼女はこれから出てくるのでしょうか?頼むC's、出してくれ!そうすれば買ってやろう(爆)
作成 2000年4月末日
改訂 2001年4月7日