てぃあ の いちにち


 

 

 

 AM4:30.

 起床。

 

「…んっ」

 

 上体を起こしてベッドの中で身体を伸ばす。

 美容を保つためには早起きは秘訣ね。

 ・

 ・

 ・

 年寄りなだけですって?

 ・

 ・

 ・

 そう…

 覚えておくわ。

 

 ベッドの外に出てシャワールームへ向かう。

 シャワーを浴び、寝汗と共に昨日の疲れを全て洗い落とす。

 

「ふぅ」

 

 と一息。

 バスタオル一枚躰に巻いて、シャワールームから出る。

 

 キッチンに行き、昨日の夜から準備していたコーヒーを煎れる。

 トーストにチーズとピーマンとタマネギを乗せてオーブンで軽く焼く。

 朝食の準備完了。

 

「さてと…」

 

 椅子に座って小鳥の囀りを聴きながらブレイクタイム。

 一日で最も至福の瞬間ね。

 いえ、今はこれしか楽しみが無い…

 そう言った方が適当かしら。

 

 朝食を済ませると、食器を食器洗い機に入れセットしておく。

 いつまでもバスタオル姿でいるわけにもいかないので、タオルを取って下着を着用する。

 その上にスーツを着ると、表情が自然と固くなる。

 後何万回、この様な朝を迎えるのだろう。

 何万回、そう思ったことだろう。

 

 物思いに耽りながら、バッグを手にして家の外に出る。

 キーをかけて出勤。

 キーと言っても、私の場合は、魔術による結界だけど。

 

 アーカム本部に到着。

 今日も雑務。

 たまには、あのコみたいに任務として外で暴れ回りたいわね。

 最近はデスクワークが多過ぎて、退屈している。

 

「私がやらなくても良さそうなのも多いわね…」

 

 呟くと、気配を殺して外に出る。

 

 気が付くと公園で噴水を眺めていた。

 

「ふぅ…」

 

 と一息。

 

「キャァァァッ!!」

 

 突然、遠くから女性の悲鳴が聞こえる。

 

「…」

 

 声のした方向に気を向けると、女性が男二人に襲われているよう。

 

「治安維持が役割の警察は、どうしたものかしら」

 

 見捨てるわけにもいかないので、男二人の方に手を向け、力を最低限まで落として魔術を使用する。

 

「ぎえぇぇっ!!」

「ぐぎゃぁっ!?」

 

 見にくい悲鳴が聞こえる。

 そして暫くすると、気配が2つ消える。

 男達は立ち去ったようね。

 

「…素人相手に力を使うだなんて、どうしました?」

「っ!!」

 

 いきなりの背後からの声に、私は驚き振り返る。

 見られた!?

 

「そう驚く事もないでしょう。それとも、あなたともあろう御方が、私の気配に気付きませんでしたか?」

「…朧」

 

 朧。

 仙人と称する男。

 私と唯一互角に戦えるだろう男。

 だろう、とは何かって?

 力の反発が怖くて戦ったことが無いから。

 とにかく、私が絶対勝てると断言できない相手は、この朧だけよ。

 

「何かありましたか?」

「…いえ、逆。何も無いから」

「なるほど…刺激が足りないわけですか」

 

 朧は私の横に腰を下ろす。

 

「あなたは?」

「私は、とは?」

 

 朧は、私の問いに惚けたような感じで問い返してくる。

 分かっているくせに…

 

「あなたは、刺激が足りなくないの?」

「私は、程々に遊ばせてもらってますから」

 

 そう言うと朧は喉で笑う。

 読めない男…

 

「それに、優の観察というだけで、刺激は事足ります」

「優、ね…」

 

 私は思慮深げに彼の名前を口にする。

 

「あなたも、何か思うところがありますか?」

 

 その私の口調に、朧は気になったよう。

 

「可愛いわね」

「…ティア」

 

 私がふざけてそう言うと、朧はやれやれといった感じで私の名前を言う。

 

「何?」

「…いえ、意外ですね。そのような言葉がティアの口から聞けるとは」

「あら失礼ね。私だって女よ?」

「そういえばそうでしたね」

 

 …一瞬殺気が膨れ上がる。

 

「フフ、冗談ですよ。怒らないで下さい」

 

 当然、と言うべきか、朧は私の殺気を感じ取って、笑いながら私を宥める。

 

「それで、本当のところを言うと?」

「可愛い」

「…ティア、禅門道をやっているわけではないのですよ」

 

 私の同じ答えを聞き、朧はちょっと声のトーンを落として言う。

 

「あのコの事が、随分と気になるようね?」

 

 逆に問い掛けてみる。

 少し卑怯かしら?

 

「そうですね…素晴らしい逸材ですよ、彼は」

「そう?」

「ええ、そうです。唯一人、私を越え得る存在です」

 

 あなたを越える?

 冗談言わないで欲しいわね…

 そう言いそうになる私の口を、意識して抑え込む。

 

「何か言いたそうですね」

 

 朧は、そんな私を見て抑揚の無い声でそう言う。

 

「何でもないわよ」

「そうですか? 信じられないといった表情ですが」

「聞かなくても分かってるじゃないのよ…」

 

 意地の悪い男ね…

 

「フフ、そうですね、すみませんでした」

「それで、どういう事? 彼が逸材とは」

「優れた才能を持っている事は、あなたもお分かりでしょう?」

「ええ」

 

 優れた才能を持ってなかったら、アーカムなんかに入って仕事してないでしょうね。

 

「彼は唯の才能ある者ではないのです。あなたなら分かってくれると思いましたが…」

「仙人の考えている事なんて、分からないわ」

「私も、魔女の考えている事は分かりません」

 

 私が冷たく言うと、朧も返してくる。

 ホント苦手なタイプの男ね、朧って…

 

「安心してください、私もティアはタイプではありませんから」

 

 この男…

 表情から心情を読んだっていうの?

 表情に出している覚えはないけれど…

 流石ね。

 嫌な能力だけど。

 

「そう、それは良かったわ。あなたから求愛されたら、どうしていいか分からなくなるもの」

「なるほど、そのようにして困らせることも、一つの手でしたね」

 

 …ケンカ売ってるのかしら、この男。

 

「別に、あなたとは争う気はありませんから」

 

 争う気があるようにしか思えないわよ。

 

「さて、それではそろそろ失礼しますよ。彼の様子を見に行かなければならないので」

 

 朧が立ち上がる。

 何しにここに来たのかしら…

 

「あのコ、今任務中?」

「そんな事も忘れているのですか? しっかりしてください」

「…そうね。しっかりと雑務をこなさなきゃならないわ。何処かの誰かみたいに、気ままにフラフラ出来ないのよね」

 

 私も立ち上がる。

 私も…仕事に戻らなければね。

 

「嫌味ですか?」

「さぁ?」

「フッ…」

「フフフッ」

 

 お互い僅かの間笑い合う。

 

 朧と別れて数時間後。

 

 自宅に帰って来る。

 結界を見ると、粒子が少し乱れている。

 誰か結界を破って侵入しようとしたという証拠。

 無駄な事を…

 

 結界を解いて中に入る。

 

「ふぅぅ…」

 

 スーツを脱いでハンガーにかけると、下着姿のままキッチンに向かう。

 明日のコーヒーの準備のために。

 

 それを終えると、私はベッドに倒れ、布団の中へ潜り込む。

 明日のブレイクタイムを待ち望みながら…

 

 PM10:00.

 就寝。

 

 

 

 終

 


 

後書き

 

 

はい、どうも、ひろえです。

初めましての人は、初めましてです。

10000HIT、おめでとうございます!!

…遅いって?

いやいや、遅れてすみません…。

う〜ん、初スプリガン小説…

何か…

スプリファンにケンカ売ってしまったような気がしないでもない…

私みたいな、一回しか読んでないで知識も記憶も不確かな者が、書いてしまっていいんだろうか…

何だか性格も違うような…

っていうか、小説か、これは?

気に食わないからって、剃刀メールは送らないで下さいね(笑

 

ではでは、次は1000000HIT目指して頑張って下さい(飛過


-パラの感想-


拍手ぅぅーーーーー!!(パチパチパチ)
ひろえさんより遅れ馳せながら10000HITのお祝いに頂きました!
そしてひろえさん初のSPRIGGAN小説です!!

しっかしよく書いてくれましたね〜
ひろえさんは本来はEVE作家だから皆川系はホンマはジャンル違い
しかし祝いになにがいい?と聞かれてまず即答したのがARMS小説でした!
しかしひろえさんから後日、「SPRIGGANにしてくださいお代官様」(多少脚色)
と言われてしまったので、こちらも迷わずに即答でOKを(爆)
そしてできあがったのがこの「てぃあのいちにち」なのです♪

いや〜朧やティアの小説なんて滅多に見なかったもんだから
なんか新鮮ですね……
どうですひろえさん、今度芳乃か初穂小説でも書いてみません?(笑)



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