花宴　Hana･no･utage．
Act1-5
2001･2･17（Mon）
This story is written by Azuma Miyako.

＊

アーカムビルの最上部に位置する所長室。

芳乃が山本に挨拶をしたい、と言うので
御神苗が連れてきたところだ。

しかし現在、山本は別室で来客を応接しており、
しばらく待っているように、
と秘書を通して指示があった。

そういう理由で、
この所長室のソファで
山本を待っている。

（大人しい芳乃、というのも珍しい･･･）

御神苗優はそう思う。

隣の芳乃。
背筋を伸ばし、無言を保っている。

しかし、気を使う間柄でもなかった。
なにを今更、である。

「芳乃の実家の巫女姫達、
　全員、桜の名前って本当？」

「そうよ。
　御魂と交信する力を持つ者は、全員。
　姫の称号だから」

「芳乃の母親も？」

「そう。ママは一葉、といった。
　これはヒトハサクラという花から」

　叔母の花澄は"霞桜"、
　従妹の沙乃は"佐野桜"からという。
　
「で、おまえはソメイヨシノから、か。
　因果な名前だな。」

　芳乃がうなずく。

　桜は魂を鎮める、鎮魂の花だ。

　その花を、鷹峯は鎮めるためでなく、
　自己の権力維持のために利用している。

　まあ、染井芳乃にいたっては、
　自分の資産のためだけに
　その力を使いまくっているわけだが。

　それでも、自分のために自分の力を
　使う方が、まだいいと思う。

　他人に強制されてより、ずっと。
　
　「たぶん、いちばん創めは、
　　魂を鎮めるためだけの、
　　純粋な巫女だったと思うけど･･･」

　「ふーん。
　　千年前、その巫女姫の力に目をつけた
　　鷹峯という輩がいた、って事かな？」

　　いつの時代も、変わらないものだ。
　　貴重で権力になるものは、必ず狙われる。

　ふと思いついて、御神苗は所長秘書に、
　ある写真を出すように頼んだ。

　御神苗が山本から見せられた、
　鷹峯の沙乃姫の写真。

ほどなく、B５に拡大された写真が
手渡された。

芳乃に渡すと、
ずっと見入っている。

「この子が、沙乃姫か？」

「そうよ。
　もう何年も会っていないけど、間違いない。」

　それから、つぶやく。

「宇都が言ってた、
　もう長く生きられないって」　

まだごく若い少女の年齢なのに。

「本当の姉妹のように育った。

　あの晩も連れて行きたかった、
　でも私は自分を逃がすのに精一杯で、
　果たせなかった」

過去の回想を、御神苗は黙って聞いている。

「後悔しても時間が還らないのはわかっているの、
　でも、いつも未練があって」

「そういう過去は思い出して当然。
　俺だって、忘れられない過去、あるぜ？」
　
　思わず芳乃が目をむけた。
　御神苗が、つづける。

「･･･ただ、『わたしのせいだ』なんて考えるなよ」

言った、とても強く。

「自分を責める方が、楽なんだよ。
　それよりも戦ってみる方がいい、
　大変だけどさ」

「うん、ありがと」

その時、芳乃のポケットで携帯電話がなった。
単音の着信音。

「パパからだわ」

芳乃はそう言った。

▽TO BE CONTINUE

-パラサイトの感想-

東みやこさんの芳乃小説『花の宴』第五話です
芳乃のパパ？一体どないなパパなんでしょう？
まぁサリーちゃんのパパなんておちはないでしょうからいいですけど（爆）
次回がまたしても気になる～～～（＾～＾）

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