花宴　Hana･no･utage．
Act1-6
2001･2･24（Mon）
This story is written by Azuma Miyako.

＊

さすがの御神苗優も一驚した。

「芳乃の親父？」

どういう人物なのだろう。

その御神苗の反応も構わず、
芳乃が携帯電話で通話を始めた。

パールグレーの携帯電話。
海外へでも通話できる、衛星式の機種だった。

相手は国外にいるらしい。

英語で会話をしている。
見事なクイーンズイングリッシュ。

（父親、日本人でないのか？）

そこで気がついた。

芳乃の髪と瞳の色素が薄いのは、
混血だからだ、と。

当時の鷹峯は、さぞかし慌てただろう。

なにしろ巫女姫の相手が、一族外の男どころか、
日本人でさえないのだから。

芳乃はまだ通話中だ。

どうやら、狙撃を受けたことを
説明したらしい。

『私は大丈夫だから』
という英語をくりかえしている･･･。

そしてようやく、通話を切る。

「親父さん、なんだって？」

「心配だから、今すぐ東京に来たいって。
　もちろん、無理だけど」

「なんで？
　見舞いに来てもらえばいいのにさ」

「一般の民間人なの。
　何も知らないし、かえって危険だから」

　それに、とつけ加える。

「日本に入国できないの」

　「なぜ？」

　芳乃の父という人は、英国人だという。

なんでも父方もふるい家柄で、
爵位もあるのだそうだ。

米国資本の大手商社に所属し、
日本の古美術・アンティークの真贋を
鑑識する専門家だった。

20数年前、仕事で京都を訪ねた折、
偶然、一葉と出会う。

「ひとめぼれ、というやつか」

「さあ？

　でも、それから何度も会ってたみたい。
　
　けれど、関係が発覚した後、
　鷹峯からの要請で、
　日本政府の圧力があり、国外退去。

　いまだに日本に入れない。」

「ひどい話だな」

「殺されなかっただけ、良かったと思う」

「それはそうだけどさ」

そこで御神苗は気がついた。

"鷹峯"で過ごした、10歳まで。
そしてレジャー･ハンターの現在まで。

その間は、どこにいたのだろう？

たずねると、すぐに答えがあった。

「英国のパパの屋敷に、13歳までいたの。

　でも普通の暮らしにすぐ飽きて、
　今の生活になったのだけど」

　今の生活、というのは言うまでもなく、
　世界を放浪して宝探し、という暮らしである。

それでもこの東京で、
形だけでも通学しているのは、
父親を安心させるための、
芳乃なりの親孝行であるらしい。

「あれ？
　芳乃はどうやって、
　父親のいるイギリスまで
　行けたんだよ。

　10歳の子供じゃ無理だろ」

　いくらなんでも。
　それから、あの"鷹峯"の屋敷を脱出するときも。

「ママの友達の力を借りたの」

「友達？」

「そう、スプリガンよ」

　その時、所長室の扉が開いて、
　山本が入ってきた。

▽TO BE CONTINUE

-パラサイトの感想-

東みやこさんの芳乃小説『花の宴』第六話です

次回がまたしても気になる～～～（＾～＾）

Novel