SPRIGGAN / 『赤頭巾』





むか〜し むか〜し 

……ではなくこれは20世紀のお話です!!


あるところに超古代文明のオーパーツを欲しがっている芳乃というトレジャーハンターがおりました


「あ〜あ、どっかにオーパーツ転がってないかな〜〜」


などと不謹慎極まりない発言です


「ああぁぁ〜〜,オーパーツ オーパーツ!!」


まさに今の芳乃はオーパーツに飢えた狼!

この芳乃の前にオーパーツを持って現れれば、まさに"奪ってください♪"と主張しているようなもの

だがいくら芳乃がオーパーツに飢えてるからといってそうそうオーパーツが………


「いや〜〜、今日も遺跡から無事に“オーパーツ”回収完了ッと」

「!!」


芳乃の耳に間違い無く"オーパーツ"という言葉が飛びこんできました

芳乃は素早く木陰に隠れてその相手を観察します

芳乃の視線の先には明らかに芳乃よりも年少の少年が

そしてその少年の手にはしっかりとオーパーツが握られておりました


「(あれはまさしくオーパーツ!)」


芳乃は心の中で歓喜の叫びをあげて拳握ってガッツポーズ


「やった〜〜〜★☆」



だがここで芳乃はふと疑問に思いました

目の前の少年は一体誰なのだろうと?

そこで考えた芳乃は暫くこの少年の後を尾けることにしました


そして尾けてから暫くして………


「これで俺も御神苗先輩にスプリガンとして認めてもらえるだろうな」


とその一言で芳乃はこの少年が彼女の商売敵である御神苗優と同じスプリガンだということがわかりました


「そっか〜〜…優ちゃんと同じスプリガンなのね、この子ってば」


言葉と共に芳乃の目が妖しく輝き出したのを前方の少年は知るよしもありません


「そうと決まれば、先回りよ!」


芳乃はダッシュで駆け出しました

口元からこぼれ出す「ふひょひょひょ」という世にも妖しい笑い声と共に


新米スプリガンの少年、大槻達樹の運命は如何に!?

危うし達樹!!




達樹が歩くこと暫くして目の前に突如として分かれ道が!!


「あれ?御神苗先輩の家までって分かれ道なんかなかったはず……」

「おっかしーなー ……どこかで道を間違えたのかな?」


達樹は突如の出来事に困惑の色を隠せません


「もしもし、お困り!?」

「うわっ」


突如達樹の背後から声がしたので達樹はビックリして近くの木に勢いのままよじ登ってしまいました


「び、びっくりした〜〜〜」

「(そ、それはこっちの台詞よ)」


背後からあらわれた女性、芳乃はそう心の中で突っ込みを入れながら頬を汗が伝わりました

達樹も突如木の上によじ登ったのことに羞恥心を覚えたのか照れながら地面へと降り立ちます


「いや〜、後ろからいきなり声がするもんだからびっくりしちゃいましたよ」

「オホホホ、ごめんなさいね」

「(…まさか木によじ登るなんて思わなかったけど)」

「それよりお困りのようだけどどうしたの?」

「ああ、それは……」

「まぁ〜、それは大変♪」

「……まだ何も言ってないんっすけど……」

「細かいことは気にしなくていいの」

「さて、幸いにも私には霊媒体質という特技があるの。それであなたの行くべき道を占ってあげるわ」

「え、霊媒体質!!しかも占う!?」

「そうよ☆」

「へ〜、霊媒体質ってそんなことできましたっけ?」

「もちろん♪」

「(嘘に決まってるじゃない)」


ニッコリと微笑む表情の下には、すでに狡猾な悪魔が笑いを浮かべておりました


「それでは早速 ………」

「………」

「………」

「……」

「でたわ!右の道を行けと!!」

「右っすね、どうもサンキュー!」


達樹はそう叫ぶと、お礼を言い残して駆け出すのでした


「あ、お客さんお金お金」


あろうことか芳乃は騙して上にお金まで請求しようとしました


「いいじゃない、これ(特技)は私の商品でもあるんだから」


しかしそんな突っ込みをいれている間にすでに達樹は遠方へ


「………ちぃ〜〜、逃げられたわ」

「まぁいい、あの子(達樹)が嘘の道で遠回りをしている間に………」

「さってと……」


携帯電話を取り出し電話をかける


「あ、お姉さまどうもご協力ありがとうございました」


電話の相手はアーカムの会長兼スプリガンのティアであった


『いえ、別にいいのよ。でもなんで私の魔術で異空間に別の道なんか作らせたの?』

「いえいえ、ちょっとした野暮用だったんです」

『そう、まぁ今度約束通り私の依頼も受けてもらうわよ』

「はい、勿論♪」

「(なんだかんだ理由つけて断るけど♪)」

『あ、"なんだかんだ理由つけて断る"なんて考えてたらそれなりのお仕置きを用意しておくわよ』

「は、はい勿論。そんな考えなんてこれっっっっぽっちも考えていません」

「(……よ、読まれてる)」

「そう、じゃあね」


全てを見透かしたような声でティアは電話を切る

芳乃はやっぱりティアだけにはかなわないのかもと思いつつも…


「ふ〜、さてお次はっと……」


言い終えた後、再び芳乃は妖しい笑みを浮かべるのであった




「ふ〜やっと着いた。でもなんだか遠回りしたような気がしたのは気のせいだったかな?」


騙されたことなどは知らずに達樹はようやく御神苗の家へとたどり着きました


(コンコン)


「御神苗せんぱ〜い、達樹っすけど今着きました〜〜」


しかし中からは何の反応も無い

達樹はもう一度ノックを苦り返す

やはりなんの反応も無い


「留守 ……かな?」


そう思ったとき、やっと中から人のいる気配がした


「開いてる  ……ぜ」

「あ、なんだいるんじゃん」


達樹はノブに手を掛けて扉を開け御神苗の部屋へと入る


「御神苗せんぱ〜い」

「こっち  ……だぜ」

「ん?」


達樹は声のした方へというと、ベッドの上に背を向けた格好で寝ている人物がいた


「お、御神苗先輩 ……っすか?」

「おう、ご苦労だったな」


言いながら背を向けていた状態から達樹の方へ向きを変える


「お、御神苗先輩 ……ですか?」


恐る恐る再び尋ねる達樹


「お、俺以外の誰に見える …っていう …のよ」

「い、いや〜なんかいつもと違うんで」

「気のせい気のせい」

「ああ、なんだ。気のせいっすか」


手をポンッと叩いて納得する達樹

賢明な読者ならわかろうが、ここにいるのは御神苗優ではない

では一体誰なのか!?

そして本物の御神苗はどこに?


「それより ……ちゃんと仕事は成功したん でしょう、だろうな?」

「あ、もっちろんすよ。こうしてちゃんと御神苗先輩に渡しにきたんっすから」

「よし、見せて ……もらおうか」

「はいっ!」


達樹は手渡したあとに誉められることを期待して喜んで御神苗(?)の元へと近寄る

そして懐から取り出したるオーパーツ!!


「どうっすか先輩!」

「おお おおぉぉーーーーっ!! もっとちゃんと見せなさい」

「は、はぁ…」


達樹は言われるがままにオーパーツを持っている手をさらに御神苗(?)へと近づける

そしてそれに手を伸ばす御神苗(?)


「あ、そうだ」

「あら?」


だが突如手を引っ込めた達樹と空振りをした御神苗(?)


「そういや先輩 ……今日はやっぱなんかいつもと違いますよ」

「そ、そう?」

「ええ ……先輩の髪はどうしてそんなに長いんすか?」

「(う”っ)そ、それは ………」

「さ、散髪に行くのを忘れたのよ」


…明らかに苦しい言い訳です


「ふ〜ん ……あと……」

「先輩なんか身体縮んでません?どうしてそんなに小さいんですか?」

「(う”っ)そ、それは ……あなたの身体が大きくなったからよ」

「ああ、そっか!!」


ますます苦しい言い訳

だが手をポンッと叩いて納得する達樹

単純すぎるぞ達樹!


「さ、さぁそんなことよりオーパーツを」

「あ、まだあるんすけど ……どうして先輩は今日なんかそんな"女"みたいな口調なんですか?」

「(う”っ)そ、それは ……そ、そっちの道に目覚めたのよ」

「ええーーーーーーっ!!」

「なによ、なんか文句ある!?」

「い、いえ別に」

「さ、さぁいいかげんそんなことよりオーパーツを」

「あ、実はまだ ……」

「どうして先輩 ………今日はそんな鉄仮面なんかかぶってるんすか?」


そう、達樹が部屋に入ってきた時御神苗(?)は鉄仮面を被っていたのでした

達樹は最初それに驚きを隠せなかったのです


「そ、それは……」

「それは?」


返答に窮する御神苗(?)!


「(ええ〜〜い、もう!!)」

「それはね……あなたにこうしてこの鉄仮面で頭突きを!!」


だが御神苗(?)が全てを言い終え行動に移す前に押し入れから何か物体が飛び出してきました


「う、うわーーー な、なんだぁーー!?」

「あっ!」

「モガガガガーーーッ!」


驚きの声をあげる達樹と、「しまった」という呟きを漏らす御神苗(?)

そこに現れたのは猿轡をかまされ身体を縛られている本物の御神苗でした


「ああーーー、せ、先輩が2人!! これは一体!!」

「モガァーーーーッ」


未だに気付かない達樹に抗議の叫びをあげる御神苗


「な、なんで私がもう一人!?」


狼狽(?)の声をあげる鉄仮面御神苗!

だがその声に口の猿靴を噛み切り、御神苗はやっと声が出せるようになった


「てめぇー芳乃! それのどこが俺なんだよ」

「え、芳乃?」

「あちゃー、もうばれちゃったか」


芳乃と呼ばれた鉄仮面御神苗は渋々と鉄仮面を脱ぎ捨てその素顔をあらわにする

だがその光景に達樹は驚愕の叫びをあげる


「ああーーー! 御神苗先輩整形までしてたんすか!?」


その言葉にこける芳乃と御神苗


「あ、あのねーーー」

「た、達樹お前なぁーーーーー」


だが更に言葉を続けようとした瞬間!!

もの凄い音と共に部屋の扉が蹴破られたのでした!


「おらぁーーー、御神苗いるかーーー!!」

「げぇーーーー! あ、あなたは!!」

「げげ、ジャ、ジャン!!」

「えっ!?」


そこに現れたのは獣人スプリガン、ジャン!

突然の訪問者ジャンの登場に3人とも表情が引き攣るのであった

ジャンの登場、それこそはまさに羊の群れに放たれた野生の飢えた狼の登場そのもの

さらに筆舌に尽くしがたいことにジャンはすでに酔っており、しかも手にはアルコール度の高いウォッカを数本抱えていたのでした

それを再認した3人は再び表情を引き攣らせ、汗が頬を伝わる

その光景に我を失ったか達樹が開口する


「ジャンさん、ジャンさん ……どうしてそんなに酔ってるんすか?」

「ああ〜ん、俺が酔ってるだと!?」

「は、はい」

「てめぇー、達樹の分際で俺が酔ってるっていうのか!!」

「ひぃぃーー、もう充分に酔ってるぅーーーっ!!」


木霊する達樹の恐怖の叫び

今度は御神苗が開口する


「ジャン、ジャン どうしてお前の口はそんなに大きくなってんだよ」

「そんなの酒を数本まとめて飲めるようにに決まってるじゃねーか」


ジャンは言いながら3本のウォッカの瓶をまとめて飲み出す

ますに有言実行!!

そして今度は芳乃が


「ジャンさん、ジャンさん ……どうしてジャンさんの目はそんなに大きいの?」

「それはな、お前らガキ共を逃がさないようにするためだよ」


ジャンは口元を歪めながら言い放つ

もはや獲物を逃すつもりがないことをその目が物語っています


「で、でも私はもちろん無関係よね?」

「あ、ズル」

「てめぇー芳乃!なに一人だけ逃げようとしてんだよ」

「うっさいわね!私は元々関係無いでしょ!!」

「そういやこの人誰です?御神苗先輩の彼女っすか?」

「ば、ばかコイツはそんなんじゃ………」

「おらぁーーー、なにごちゃごちゃ言ってんだ!今日は朝までおめぇーらをにがさねーぞ!!」

「キャーーーッ、嘘ーーーー!!」

「おらおら飲め達樹ぃぃーーーっ」

「なんで俺ーーーー!!」


こうして3人の絶叫が夜空に木霊するのであった


そして…………どこが『赤頭巾』!?



作者「チャンチャン♪」


(End)



はい、今年も恒例の"バカ話"でありました
最後まで付き合っていただいた方、どうもありがとうございました
ちなみに執筆時間 ………1時間半!(爆)



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