続・ARMS『白雪姫★』
一部ファンの声に応えあの迷作の続編をお届け♪
まだ読んだことのない方はARMS白雪姫から
容姿が掴むのは… 輝かしき楽園か、暗闇の地獄か… |
昔々白雪姫というそれはとても美しいお姫様がおりました
だけどそのお姫様は………
隼人「わがまま」
アル「自意識過剰!」
隼人「人使いが荒い!!」
アル「すぐに手が出る単細胞!」
と、それはそれは従者の間でも評判の悪いお姫様でした
おまけに地獄耳ときているのでそのインタビューの最中、嬉々として語る隼人とアルの背後で"ゴゴゴゴゴ"というオーラを纏い鬼のような形相で立っていた恵姫がいたのは言うまでもありません
なによりこのお姫様、魔女ユーゴーから贈られた魔法の鏡を見ては
恵「鏡よ鏡、この世で一番美しいお姫様はだ〜れ?」
と鏡に『自分』だと答えを"強制"させる始末……
ところがある時を境にそのお姫さまの巷の評判と来たら……
グリーン「姫? なんだか前より柔らかくなって…… その……可愛くなったよ」
ともうまさにべた褒め状態に!!(特に約一名)
恵「んん、今日も良いお天気。 庭のバラも喜んでるわ♪」
まさに絵に描いたような"清純派"お姫様!!
このあまりの変貌にお城の従者は目を白黒させるばかり
いったい何故にこのような変貌を遂げたのか!?
その応えは簡単!! 実はこのお姫様は恵姫とは瓜二つの容貌を持った街娘、カツミだったのです
ある時恵姫は自分と同じ容貌を持ち、なおかつ魔法の鏡に"自分より美しい"と言われたことに腹を立て魔女のユーゴーに密かに暗殺を依頼したのでした
そしてそのユーゴーもカツミのボーイフレンド涼に密かな想いを寄せていたため、両者の思惑は見事なまでに一致!!
そしてユーゴーはリンゴ売りの行商人に変装し、毒リンゴをカツミに手渡すのでした
そしてその毒リンゴを食べてしまったカツミは意識不明の危篤状態に!!
恵姫の願いは成就されたのでした……が!!
ところがその事態を見届けに来た恵姫はうっかりユーゴーの用意していた予備の毒リンゴを食べてしまいこちらも意識不明の危篤状態に…
そして意識不明のカツミは7人の小人キース達に! 恵姫はたまたま通りかかった涼+武士(馬)に連れられて行ったのです
幸いにも2人が食べてしまった毒リンゴは賞味期限が切れていたために大事には至らなかったのですが……
行方不明の恵姫を探しに来たお城の従者は……小人キース達に保護されていたカツミを恵姫だと間違えお城に連れ戻し
一方の恵姫はカツミと間違われたままで、眼が覚めた後性格が一変してしまったために精神病院へと送られてしまったのでした!!
そして物語は今に至るのです……
恵「ちょっと! この私をいつまでこんな貧乏くさいところに閉じ込めておくのよ!!」
恵「早く出さないとあなた達死刑よ死刑!! いや死ぬまで考えられる限りの拷問を繰り返してあげるわ!!」
その様子をマジックミラー越しに見舞いに来た涼とDrは眺めています
涼「……Drブルー、どうですかカツミの様子は?」
ブルー「一向に回復の前兆が見えない。今でも自分をこの国の姫だと思い込んでいる。重度の多重人格障害だ」
涼「そんな!! Dr、なんとかしてカツミを助けてやってください! カツミは本当はあんな乱暴な言葉を使う奴じゃないんです!!」
ブルー「ああ、努力はしてみよう」
涼「Dr、今日もカツミと話はできますか?」
ブルー「ああ、それなら問題はない」
涼「ありがとうございます」
涼はそう言うとカツミ(恵)との面会のためにガラス越しの部屋に移りました
そして恵姫は涼を見つけるなりガラス越しとはいえ今にも涼に飛び掛らんとするような勢いで駆け寄り、
恵「来たわね!! さぁ、私をここから出しなさい!! 今出しなさい!! さぁさぁさぁさぁ!!!!」
涼「……カツミ」
恵「だから私はそのカツミなんていう貧相で下町っくさい街娘なんかじゃないって言ってるじゃないの!! いいえ、あなたじゃ話にならないわ。城の者を呼べば分かるの。さぁ呼んで、今呼んで、さっさと呼んで!!」
涼「……カツミ〜」
恵「あんた人の話を聞いてるの!! 私はこの国のお姫様恵よ!!」
涼「ああ、なんだってこんなことに……前はそんな(ピーーー)や(ピーーー)な言葉を話すような奴じゃなかったのに……」
恵「なっ!? ちょっとアンタ何言って―」
涼「カツミィィィィーーーーー!!」
恵「………」
涼「カツミ!お願いだからあの時のカツミに戻ってくれ」
恵「………」
涼「戻ろうカツミ! 一緒にいたあの頃に!!」
恵「(プチッ)」
人の話をちっとも聞かない涼に対し、恵の中で何か切れる音が聞こえてきました
そして次の瞬間……
恵「あんたねぇー……ちったぁー人の話を聞けぇーーーっ!!」
カツミの怒りに任せた鉄拳は隔てていたフェンスを破壊したのでした
その光景に唖然とたたずむ涼。そしてその涼を怒りのオーラを纏ったまま見下ろす恵
かくして涼は……恵に首輪で繋がれて連行されていくのでした
そして恵は見事に精神病棟からの脱出に成功しその向かった先は……
(コンコン)
ユーゴー「は〜い、どちらさまで―――!!」
玄関を開けた魔女のユーゴー。しかしそこには見てはいけないものを見てしまったのでした
そう相変わらず怒りのオーラを纏ったままの恵が、ユーゴー愛しの君(涼)を連れてきたにもかかわらずその怒りのオーラの前に涼のことなど視界にも入っていません
恵はここまでの道中で例の街娘カツミがあろうことか自分に成り代わってこの国の姫の座に収まっていることを知ったのでした
しかもその姫の評判と来たらまさに非の打ち所もなく、恵姫は自分に姿形が似ているだけに憎さ百倍!
ここまでの道中目に付くものにとにかく当り散らしていたから道中はまるで台風が過ぎ去ったかのような光景でした
それを目の当たりにしていた涼はもう放心状態
ユーゴーもまさに蛇に睨まれたカエルだったのです
恵「お久しぶりね、ユーゴー」
ユーゴー「え、ええ……お久しぶりですね姫」
恵はにっこりと笑顔で話し出すが、依然怒りのオーラを纏ったままなのでユーゴーは引きつり笑いでしか返事ができません
恵「今日はあなたにお願いがあってきたの♪」
ユーゴー「お、お願いですか? でも私はもう魔女稼業は……」
恵「まさか断るなんて言わないわよね。 前回"あんな"失敗を犯して私を"あんな"目に遭わせたんだもの★」
その迫力の前に毒リンゴを食べたのは姫自身で、「自業自得」だなどという言葉は思い浮かんでも喉の奥にグッと飲み込んでしまうのでした
ユーゴー「で…でも〜〜……」
恵「ただとは言わないわ! ホラッ!!」
涼「(ヌゴ〜…グゴゴゴ!!)」
ユーゴーの前に恵は猿轡を咬ませた涼を差し出したのです
どう恵姫はすでにユーゴーが涼に気があることを知っていたのでした
そしてその光景にユーゴーの100年の恋の熱も冷め……るはずもなく再燃しだしたのでした
そう、先ほどまで恵におびえていたユーゴーも涼を眼前にした途端その両の目は輝きだしたのでした
ユーゴー「け…恵姫がそうまでおっしゃるなら協力しないわけにはいきません!」
恵「契約成立ね!!」
ここに再び姫と魔女の共謀作戦の鐘が始まりの音を奏でるのでした
そしてそれに巻き込まれるもの約1名!!(涼)
恵「ユーゴー、今回は前回のような失敗は許されないわよ」
ユーゴー「はい、今度は抜かりのないようにこの反物質砲を直接城に…」
恵「ちょ、ちょっと!! そんなの撃ち込んだら私のお城ごと吹き飛んじゃうじゃないの!」
ユーゴー「ちぇっ…これなら確実だったのに…」
恵「………」
ユーゴー「それならこの荷電粒子砲"ブリューナクの槍"で!」
恵「却下!却下!! だいたいそんなのどこから引っ張り出してきたのよ!!」
ユーゴー「これも"愛"ゆえの結果です!」
恵「……あなたの愛って……ちょっと歪んでるのね……」
恵姫はユーゴーに聞こえないようボソッと呟くのでした
そして恵姫は今この瞬間この共謀作戦にユーゴーを加えたのは間違いだったのではないかという不安が頭を掠めるのでした
だがいまさら後戻りもできるはずもありません
恵「と、とにかく……私はあのカツミって娘だけを抹殺したいのよ!考えうる限りの残酷な方法でね」
ユーゴー「そうすると煮えたぎる湯につけるとか?」
恵「いえいえ、死なない程度にナイフを次々に刺していくのも良いわね」
ユーゴー「指の爪を剥がしていくというのはどうでしょう?」
恵「いいわねそれ! 手と足で計20本分楽しめるわね♪」
結局は(危なさにおいて)似た者同士な2人なのでした★
そんな2人に狙われたカツミは!?
そして相も変わらず猿轡を咬まされたままでその2人の会話を側で聞いていた涼は恐怖から白目をむいて気絶していたのでした
そして!!
ユーゴー「恵姫! 姫が…いえ、カツミさんがショッピングのために街へ従者と共に繰り出すそうです!」
恵「チャンスね!」
ユーゴー「ええ、どう料理しようかと思うともう心が躍って躍ってしまって」
恵「そ……そう…」
ユーゴの怪しい笑顔に恵はもうタジタジ
でもカツミに復讐し姫の座に返り付くためにはユーゴーの助けがどうしても必要なのでした
そしてまさにそのチャンスが到来したのです!
恵「ユーゴー、先回りよ!!」
ユーゴー「はい!」
こうして魔性の女2人+約1名は前に立ち塞がる壁もなんのその、次々に粉砕しながらただ直進するのみでした
アル「……ブツブツ……まったくなんでこの超天才の僕が姫の買い物になんか付き合わなくちゃならないんだ」
隼人「…文句言ったってしょうがねーんだ。さっさと終わらせてさっさと帰ろうぜ」
アル「本来ならこれはお前の仕事なんだぞ」
隼人「あん? なんだそりゃ??」
アル「超天才の僕は本来頭脳派! 体力馬鹿の君は肉体労働派。つまり荷物持ち等を含めた仕事は当然お前がするに決まってるだろう」
(ゴンッ)
隼人「誰が体力馬鹿だこのガキ!」
アル「いっ………そうやってすぐに殴るのが体力馬鹿の証拠じゃないか!」
隼人「ほほぉー。 もう一発食らいたいらしいな」
アル「や、やめろ!僕の頭脳は精密機械なんだ!!」
隼人「それなら叩けば今よりもっとマシになるだろう」
アル「そ、そんな安物の荷電製品みたいなのと一緒にするな!!」
カツミ「もう、また喧嘩して! もう少し静かに待ってられないの2人とも!!」
隼人「うっ」
アル「……」
まさに鶴の一声、カツミの一言に2人ともすぐにおとなしくなるのでした
カツミ「さぁ、次はあそこのお店に入るわよ!!」
アル「ま……まだ行くのか!?」
隼人「おいおい、かれこれ4時間は回ってるんだぜ……」
カツミ「当然! ショッピングは女の子にとっては時間のかかるものなのよ」
その一言に2人は何も言い返すことはできず肩を落としたままカツミの後を歩くのでした
そして3人が向かったお店は……
恵「や……やっと来たわね。私を待たすなんていい度胸してるじゃない」
そう先回りして待ち構えていた恵姫とユーゴーがいたのです!!
恵「さぁ、ユーゴー! 準備して……―」
恵姫が振り返ったとき、待ちくたびれてしまったユーゴーは同じく猿轡をいまだ噛まされたままの涼と肩を寄せ合いながら幸せそうな寝息で眠っていました
それを見た恵姫は「フッ」と苦笑してしまいます
恵「やれやれ、ユーゴーも幸せそうだこと。そりゃー愛しの君と肩を寄せ合って眠れるなんてこれ以上ないシチュエーションよね。
でもね……時と場所を考えなさいよねーーーっ!!!」
恵姫は幸せそうなユーゴーの耳元で怒鳴ると、ユーゴーは悲鳴を挙げながら耳を抑えるのでした
そして後はひたすらに謝るばかり
恵「さぁ、連中が来たのよ! サッサと準備して!」
ユーゴー「は、はい」
カツミ「ごめんくださーい」
アル「な…なんだこの店は!?」
隼人「なんか怪しげなものばかり置いてあるな。ってか誰もいねーんじゃねぇーの?」
ユーゴー「はいはい、いらっしゃいませー」
隼人「お、いた」
ユーゴー「ようこそいらっしゃいました。当店ではありきたりのものから奇想天外のものまでなんでも揃っております。遠慮なくお申し付けください」
カツミ「そうね〜……なにかお薦めはないかしら?」
ユーゴー「それならこちらの魔法の(毒)リンゴなどいかがでしょうか?」
アル「ま―」
隼人「魔法のリンゴ!!?」
ユーゴー「はい、これを食べればあらビックリ!たちまちお肌がつやつやに♪」
カツミ「なんか…どこかで聞いたことがあるような〜……」
ユーゴー「(ギクッ)き…気のせいですよ気のせい!」
カツミ「……あら、アナタどこかで会ったことありません?」
ユーゴー「(ギクッ)い…いいえ。 しょ…初対面ですよ、いやですね〜」
カツミ「なんかとんでもないところで会ったような〜……」
アル「そう言われてみると僕もどこかでー……」
隼人「アルもか? 実は俺もどこかで会ったような〜」
ユーゴー「(ギクッx3)た…他人の空似ですよきっと!!」
カツミ、アル、隼人に正体がばれてしまっては恵姫との計画も水の泡
そのためにユーゴーは誤魔化すことに必死です
ユーゴー「それならば、こちらの魔法の服はいかがでしょうか?」
カツミ「魔法の服!?」
ユーゴー「はい、かの有名なシンデレラもお召しになられたという一品です」
もちろん嘘なのは言うまでもありません
だがシンデレラは全ての女性の憧れ、カツミもその例外ではありません
カツミ「シ…シンデレラ!?」
カツミは胸の前で手を組みその目は輝きに満ち出しました
ユーゴー「はい」
カツミ「本当にシンデレラが着た服なんですか?」
ユーゴー「はい」
カツミ「本当に本当ですか!?」
ユーゴー「本当に本当です」
カツミ「本当に本当に本当ですか!?」
ユーゴー「…本当に本当に本当です」
カツミ「本当に本当に本当に本当!?」
ユーゴー「………本当に本当に本当に本当……です」
カツミ「本当に本当に本当に―」
アル「ストーーップ!もうキリがないぞ姫! さっさとその服を拝見して帰ろう!!」
カツミ「そ…そうね」
ユーゴー「ホッ。 ではこちらへどうぞ」
店の奥へと導かれるカツミ
そこで待ちぼうけになってしまった従者2人組み
恵姫もそれを確認してから店の奥へと向かおうとしたそのとき、従者の声が耳に入ってきました
隼人「それにしても姫って本当に以前とは変わったよな」
アル「ああ、まるで別人になったみたいだ」
隼人「案外本当に別人だったりしてな」
2人にとってはたわいのない歓談なのだが、それを聞いていた恵姫にとってはそうではありません
カツミと恵姫が別人だということをわかってくれたのが従者だったのです
恵姫はもう嬉しいことこの上もありません
恵「そう! アレは別人、私こそが本物よ!! やっぱし私の従者だけあって―」
隼人「でもアレだな!もしそうだとしても今度の方が断然良いよな!」
恵「!?」
アル「アハハハ!それは言えてるな!!」
隼人「何しろ以前の姫ときたらわがままのし放題、言いたい放題!」
アル「おまけにすぐに手が出る乱暴者」
隼人「もっと早く今みたいになってくれてばな」
アル「まったくだ」
隼人・アル「あっはははははははははは」
恵「………………………………」
思いもかけない言葉が従者の口から飛び出し恵姫の怒りはまさにMAXゲージに達しました
だがここで飛び出して騒動を起こし計画を台無しにするわけにもいかなかったのです
そこで苦渋の選択に迫られた恵姫は…
恵「ていっ!!」
(ゴ〜〜〜ッンx2)
隼人「がぁっ」
アル「グギャッ」
突然降ってきたたらいの直撃に2人ともその場に白目をむいたままのびてしまうのでありました
恵「フンッ。 あんた達の罰は後でたっぷりとしてあげるわ! その前にまずはあの娘から!!」
2人の後を追う恵姫!果たしてカツミの運命は如何に!?
そして賞品(捕らわれ)の涼はどこに!?
ユーゴー「これがかのシンデレラがお召しになったという魔法の服です」
カツミ「こ…これが!?」
ユーゴに見せてもらった服はなんとも不気味なまでの黒さが際立ち、これといった優雅さも見受けられません
それもそのはず、そんな服などをユーゴーが持っているはずもなく、カツミに示したのはユーゴーが魔女学校で着ていた制服だったのです
魔女が着る服のため魔法の服……100%の嘘でないところがなんともはや……
そしてその服に気を取られているといつのまにか恵姫がこっそりと後ろに忍び寄り……
(ゴーーーーーン)
たらいで一撃、カツミはそのまま床に倒れ意識を失ってしまいました
それを見てほくそ笑む恵姫とユーゴー
ユーゴー「やりましたね。これで後はアナタが姫の座に復帰するだけ」
恵「ええ、その前にこの娘には私が受けた仕打ち以上の目に遭わせてあげるわ」
ユーゴー「では私の仕事は終わりですね♪ じゃあゆっくりと高槻君と……―!?」
ユーゴーが涼を隠していたはずの扉を開けるとそこはもぬけの空
おまけに床にはポッカリと大きな穴が
ユーゴー「ひ、姫!! た…高槻君が!!」
恵「あららら……やけにおとなしいと思ってたら逃げちゃったのね。おまけに彼は私の正体を知っている……残念だけど生かしてはおけないわ」
ユーゴー「え!?」
恵「彼を生かしておいたら私の華麗なまでの豪遊生活の計画が無に帰す可能性があるんだもの」
ユーゴー「で…でもそれじゃあ約束が……」
恵「約束? ああ、この際だから諦めてね☆ 代わりの男をお城から私が選んであげるわ」
ユーゴー「そ…そんな!! 高槻君以外の人なんて―」
恵「ごちゃごちゃ言わないの!私はこの国のお姫様なのよ。だから私の言葉は絶対なの」
その言葉にユーゴーの中である決意が浮かんだのでした
そしてその視線はカツミの側に置かれているたらいに!!
恵「さぁ、ユーゴー!! さっさとこのカツミを運ん………―」
(ゴーーーン)
ユーゴー「はぁはぁはぁ……や、やっちゃった。 と、とにかくこの隙に高槻君を探さないと!!」
ユーゴーはその場に残された恵姫とカツミをそのままに涼を救うべく(?)店を飛び出すのでした
そして依然2人は昏倒したまま
隼人「ん…んん〜 イテテテテ、なんだって俺はこんな所で…おいアル!起きろ!!」
(ゴンッ)
アル「ック〜〜〜 おい!もうちょっとマシな起こし方はできないのか!!」
隼人「それよりもなんで俺達はこんな所で寝てたんだ?」
アル「そういえば……だけど状況から察するにこのたらいの直撃で僕等は気絶してしまったわけだ」
隼人「なんでたらいが……」
アル「僕に聞くな!!」
(バンッ)
言い争う2人を尻目に、突如店に人影が飛び込んできました
ブルー「ここだ!! ここから患者の反応が!! 近い、近いぞ〜」
隼人「お…おい」
ブルー「フフフ、やはり私は天才だ。こんなこともあろうかと彼女の髪の毛に極薄の発信機を取り付けておいたのだから」
隼人「おい!」
ブルー「さぁ、あとはサクサク捕獲して病院に連れ戻さねば!!」
隼人「………」
(ゲシッ)
ブルー「グワッ ……い、いきなりなにをする!!」
隼人「それはこっちの台詞だ。いきなり現れて何言ってんだテメーは」
ブルー「う、うむ。 話すと長いので手短に話させてもらおう。僕はブルーメン精神病院の医者だ!」
アル「医者!?」
ブルー「そう、おもに多重人格障害の研究を筆頭にしている」
アル「多重人格障害!? 過度のストレス等から逃げ出すために別の人格を作り出すというあの症状か!」
ブルー「おお、知っていたのか」
アル「知らないも何も僕は今世紀最高の知能を持つアル・ボーエンだぞ。知らないわけがないだろう」
ブルー「おお、それなら話しが合いそうだ。今度私の病院に―」
(ゴンッx2)
ブルー「うおおぉぉぉぉ」
アル「ク〜〜〜」
隼人「2人とも人間語を喋りやがれ! っていうか今はそんなこと話してる場合じゃないだろ」
ブルー「そ、そうだった。うちの病院に入院している重度の精神病患者が先日脱走したんだ。発信機を頼るいに追跡したところこの奥の部屋から反応がある」
隼人「重度の精神病患者!? おい、今奥には姫が!!」
アル「そ、そうだった」
ブルー「とにかく奥へ!」
3人が奥の部屋に入ると、そこには倒れているカツミと恵姫、そしてたらいが……
アル「こ、これは一体!!」
隼人「恵姫が2人!?」
ブルー「私の患者が2人!!」
隼人「ん?」
ブルー「んん?」
隼人「おい…お前んとこの患者だと?」
ブルー「姫…だと?」
アル「つまりこの2人のうちどちらかが……本物の恵姫なのか…」
3人が恵姫とカツミを見つめ唖然としていると昏倒していた当人達はやっと目を覚ますのでした
カツミ「ん……んん〜〜…あれ?」
恵「アイタタタ…一体なにがって…あれ?」
お互いに見つめあう2人
カツミが右手を挙げると恵姫は左手を
恵姫が首を右に傾げるとカツミは左に
カツミ・恵『…なんだ……鏡かー』
アル「そんなわけあるか!!」
2人のボケにアルは思わず突っ込んでしまうのでした
隼人「い…一体どっちが本当の恵姫なんだ!?」
カツミ・恵『私よ!!』
ブルー「どっちが私の患者なのか……」
カツミ・恵『アナタよ!!』
アル「駄目だ!! 天才の僕にもどちらが本物なのかわからない!!」
恵「ちょっとアル! 長年私の従者をやってきてご主人様がわからないって言うの!!」
アル「!!」
恵「隼人、あなたもよ!! 何年私の従者をやってきたのよ!! っていうかなんでこの娘が今まで姫様やってて信じられるのよ!!」
隼人「!!」
その言葉にアルと隼人はやっとあるときを境に恵姫の性格が一変した理由がわかったのでした
つまり精神病院に収容されてたのが恵姫で、今まで仕えてたのが街娘のカツミだったと分かったのです
アルと隼人はおもむろに両者の視線を合わせお互いに頷くとビッと一方を指差し
アル・隼人『こっちが本物の姫だ!!』
カツミ「え!?」
恵「なっ!?」
ブルー「そうだったのか! さあ病院に帰ろうカツミくん!!」
恵「ちょっとちょっと!私じゃなくてあの娘でしょー!!」
ブルー「やはりまだ完治していない。大丈夫、私に任せれば完治なんてすぐさ」
恵「だから私は本物の……アル、隼人!! 裏切ったわねーーーー!!」
そう、アルと隼人は恵姫でなくカツミの方を指差したのでした
2人とも瞬時に両者を天秤にかけ、もし恵姫が再び姫の座に着いたらと思うと正直うんざりだったのです
それに比べてカツミのほうは買い物以外を覗けば自分達に害はなく、平穏に過ごせることがわかりました
そのために2人はカツミを姫だと断定したのでした
恵「覚えてなさいよーーーーーっ!!」
遠く恵姫の絶叫が響く中、アルと隼人はどうか末永い病院生活を送り二度と戻ってこないことを密かに胸の奥で願うのでした
こうして恵姫は再び精神病院に入院してしまい…
アルと隼人はカツミの従者として平穏な毎日を過ごし…
涼は……女性恐怖症に陥り人里離れた山奥へと移り住み
ユーゴーはその涼を求め…
カツミは無事に姫としてこの国に居座り続ける事ができたのでした
カツミ「ちゃんちゃん♪」
THE END