第四話 「eden」
And the LORD God commanded the man ,
saying , Of every tree of the garden thou
mayest
freely eat : But of tree of knowledge
of good and evil , thou shalt not eat of
it :
for in the day that thou eatest there of
thou shalt surely die .
「ヒャハハハ、もらった!」
優の前に現われたグリスと名乗る男
そのグリスの口から”エデン”という言葉が漏れた瞬間、優の表情に驚愕が走ると、優に一瞬の隙が生じた
その隙をグリスは見逃さずにナイフを片手に突っ込んできた
「チィッ!」
しかし優もその動きを視界に捉えるや、すぐさま構えてそのナイフを一撃を何とか横に飛んでかわす
が…
「グフッ」
鋭いグリスの蹴りが次の瞬間に優の腹を捉えていた
その一撃によってよろめいた優の背中に向けてグリスは止めとばかりに返す手でナイフを突き降しにかかる
だが優の方も負けじとグリスの足を払ってバランスを崩した拍子に距離をとる
グリスも足を払われ崩れた体勢を立て直すべく地面に倒れる前に片手で姿勢を保って素早く立ちあがり優との間合いを取る。そして手にしたナイフをマスクの前にかかげ弄ぶ
「さすがにやるな…ヘッジホッグやリッパーがやられて来たわけだ」
マスクで表情はわからないが声から楽しんでいるとわかるし、その動きからは優をこの後どのようにして狩ろうか、そんな仕草が見て取れる
そして2人の名をよく耳に入るように告げた。
その名を優は知っていた。かつてアーカムとの間で超古代文明の遺跡、または"力"を巡って争奪戦を繰り広げた相手組織のエージェントだ。
「まったく…お前米軍機械化小隊だな。アメリカがこんなアジアの砂漠にまでなんの用があるってゆうんだよ。おおかた大国のエゴでってところだろうけどよ」
優は軽く腕などを伸ばし、これからの戦闘に備えるための準備運動をしながら言い放つ
その様子を見て取ったグリスも相変わらずマスクで表情は見えないが、声からこの状況を楽しんでいるのがわかる
「フン、好きなような言うがいい。それにこっちも言ったはずだぞスプリガン。今回、このエデンだけは貴様等にくれてやるわけにはいかんとな」
再びグリスの口から漏れた“エデン”という言葉に優は眉をしかめる
「エデン!?」
優の呟きをグリスは聞き逃さない
……エデン
神が最初の人アダムのために設けた園で、生命の木と知恵の木があった。
神が人類に与えた豊かな土地としての象徴的な意味でもあり、そこでアダムと、その肋骨から創られた対になるイブは暮らしていた
だがそこに住む蛇にそそのかされて禁断の果実を食した二人は罪を犯したとされて神に追放された園
優の頭の中でエデンに関する記憶がフィードバックされていく
「なんだ…まさか貴様等はこの遺跡のことを知らなかったのか?」
グリスは一瞬呆れたという声を出すが、優の表情を見て自分の疑問が確信を突いていると気付き、すぐにその声は嘲笑の物へと変わった
「ハッハハハハ、こいつはお笑いだ! あのスプリガンがこの遺跡のことも知らずにこんな所までノコノコ殺されにご足労願うとわな」
グリスは腹を抱えて笑う
「こんなことだったら俺が出向くこともなかったようだ」
「お前一人じゃないんだろ、どうせ」
グリスのその言葉に優は眉をしかめ、あたりの様子に気を配る。どこに隠れた相手が潜んでいるのかわからないからだ
だがそれを感じ取ったグリスは、
「ハハハ、俺の部下達ならすでにもう中に突入しているよ…だが安心しろ、お前もすぐにここで横たわっている連中のように中のお前の仲間共々会えるさ…地獄でな!!」
そう言い放つとグリスは間合いを一気に詰めナイフを一閃二閃と振るう
だが優は巧みステップしてそれを紙一重でかわし。そしてその一閃が優の髪の毛をかすめ、パラパラと斬られた優の黒髪が宙を舞う
「てめぇー」
優の顔には怒りが浮かびあがっていた。髪を斬られたことではなく、グリスの言い放った言葉に対してだ
グリスの言葉は優の任務の目的であった調査隊の救出。それを妨害するとグリスは言い放っている
「フフフ、そんなに睨むなよ。まだ俺はお前に教えてあげなきゃならんこともあるのでな。いいかよく聞けよ!俺達アメリカはこのあたりに旧約聖書に出てくる“エデン”の存在があると睨んでいたのさ」
「なんでこんなアジアの砂漠地帯にそんなもんがあるんだよ…あれはペルシャ湾頭の地域が有力って説じゃねーか」
「フン、貴様とてそんな話が真実であるとは思っていまい。あんなものはここの情報を知られないためのいわゆるプロパガンダさ」
「……じゃあ何でその“エデン”をお前等が狙うんだよ」
「力ある遺跡は我らアメリカが握ってこそ力あるものになる。貴様等民間企業や第三国などが持っていてもそれは宝の持ち腐れとなるだけだろう」
グリスは愉快気に語る。相変わらずマスクで見えない表情が優にはもどかしく感じられた
「よーするにお前等は更なる力を手にしたいってわけかよ」
先ほど述べた大国のエゴ、やはり今回もそんな目的かとおもうと正直優は不快だった
そしてそんな大国のエゴで古代文明の“力”を求める連中の手に、その強大な“力”を渡さないために自分達のような存在がいるのだとも同時に思い至る
「フン、貴様等から見ればそのように見えるのだろうな。だがな、大国のエゴに振りまわされているのがお前らだけだと思うなよ!!」
グリスはどこか意味深な言葉を優に投げ掛ける。だが逆上し、なかば冷静さを失い掛けている優にはその言葉を受けとめることはできない
「うっせー!」
優はグリスの嘲笑のもとの発言が癪に触わったのか、グリスに向かって今度は優の方から攻撃を仕掛ける
ラッシュのような連打を繰り出し、グリスの意識がその連打に移った瞬間に蹴りを放つ。それは真っ直ぐにグリスの腹部を狙うがグリスの方はそれを読んでいたのか素早くガードし再び間合いを取ろうと後退する
が、今度は優も逃すまいとかまわずにそのままの勢いで間合いを詰めていく
「なっ!?」
「遅ぇーっ!」
その優のスピードがあまりに速かったのか、グリスにしてみれば間合いを取って前方を見た瞬間にはすでに優は眼前に迫っていた
そして優はそのまま左フックをグリスの顔面に叩き込む
「グゲッ!!」
その一撃でグリスは一瞬宙に浮きあがりそのまま優は軽くジャンプしてグリスの頭上に出るとそのまま右足でグリスに蹴りをお見舞いする
これにはグリスもたまらずに地面に叩き付けられ、かつそのままバウンドし5,6メートルは吹っ飛ばされる
「へ、どうだっ!」
優は静かに地面に着地すると勝ち誇ったように言い放つ
「……すごい……これがスプリガンNo.1と言われる彼の実力…」
優の戦闘を話に聞いていただけで初めて目の当たりにした李梨は唖然とつぶやく
だが隣で観ていた芳乃には別段驚くようなことではないため手を叩きながら
「さっすがー!優ちゃんてばまた強くなったんじゃない?」
と、優のその圧倒的強さに歓喜の声をあげる
「まぁな…さてあいつを起こしてこの遺跡に関する情報でも……!?」
優が芳乃の方を向いて親指を立てて応え、再びグリスの方を向いたときその場にグリスはいなかった
「なっ!?」
慌てて廻りを見渡す
「ハッハハハハ今の攻撃はよかったぞスプリガン!」
その声の方、ピラミッドの中腹あたりを見るといつのまにそこに移動したのかすでにグリスはそこまで移動していた
「ケッ、タフな奴だな。でもまぁよく今ので意識が飛ばなかったな」
「フン、あいにくあの程度の攻撃で意識が飛ぶほどヤワな身体はしていないのでな」
優の攻撃をあの程度呼ばわりするグリス
優の額に一筋の汗が流れ落ちる…なぜなら優は今の攻撃は多少手加減したといってもあんなにすばやく動けるはずはないと踏んでいたから
いかに機械化小隊とはいえ効いていないはずはなかった
考えられる可能性は、グリスがオリハルコンと人工筋肉で精製されたAM(アーマードマッスル)スーツを着用している可能性だが
…だがそんな感触は殴ったときも蹴りを入れたときも感じはしなかった
AMスーツはその耐久性もあってか独特の感触がある。優自らもかつては着用していたし、同じようなものを装備した相手と戦ったこともある
だがグリスにはAMスーツのようなものを着用している感触がなかった
「そうかよ…だったら次ぎはちょっとは本気で行ってやるよ」
その焦りを微塵も見せないで優は言い放つ。このあたりの駆け引きは今までの戦闘からの経験というものがものをいっている
「そうこなくてわな。ヘッジホッグやリッパーがやられた噂のスプリガン御神苗 優の実力はこの後の楽しみに取っておくぞ。もっともまだまだ本気を出していないがな」
「だろうな」
グリスはすぐにその笑いを止めると優の目を見据え
「…フン、貴様が考えてることを当ててやろうか?」
「?」
「俺は機械化小隊の割にはどこもサイボーグのようではない…それどころか貴様が俺に攻撃したときのそれは生身の人間と対して変わっていなかった……どうだ、違うか?……スプリガン!!」
「ヘッ、確かにそうかもな…だが俺にとってはそんなことはどうだっていいんだよ」
「ほぉ〜…」
「要はマッドなお前を倒してこの遺跡をお前らの手に渡さなければいい…違うか?」
「…確かにな…だが貴様にそれができるかな?」
グリスは不敵な声を優に投げ掛ける。表情は相変わらずマスクで覆われ見えないが、声からそれが感じとれる
「次に会うときは俺は戦闘モードで全力で行く…全力でな!! 中で待っているぞ、スプリガン!!」
言い終えるとグリスはそのまま笑いながらピラミッド頂上まで駆け上がりそのまま入口と思われる穴からピラミッドの中へと消えていった
「あ〜あ、何であんな気持ち悪い奴逃がしちゃったのよ」
芳乃は口を尖らせて優に向かって不平を言う
「しょうがねーだろ…あのまま突っ込んでいってみすみすあいつの罠にでもはまれっていうのか?」
優は頭を掻き芳乃の相手をしながら現状の把握に努める
「まったくこれから私達もあの遺跡に入るっていうのにあんな奴がいつ出てくるかわからないなんて気味が悪いわよ!」
「だったらここに残ってりゃいいだろ…別に俺はお前に付いてきてくれなんて言わないぜ」
「フン、この遺跡に眠るお宝を目の前にしてのんびり待ってられるわけないじゃない」
言葉と共に芳乃は不敵な笑みを浮かべる。その表情に優はトラブルメーカーの芳乃と米軍の両方を相手にせねばならないことから、『前門の虎 後門の狼』という言葉が脳裏に浮かぶ
「ハァー……知らねーぞどうなったって」
「何いってんのよ… あいつが出てきたときは…」
「出てきたときは?」
「当然優ちゃんがあいつの相手をするに決まってるじゃない」
「へっ?」
一瞬優の目が点になる
「だって優ちゃんがあいつを逃がしちゃったんだから優ちゃんがあいつをかたずけるのは当然じゃない」
「かたずけるって…人を殺し屋みたいに言うなよな。 でもいざとなったらお前が相手をしなけりゃならないかもしれないんだぜ」
「その点は心配無用よ」
芳乃は車に戻って自分の荷物の中から手榴弾にライフル、拳銃と次々と取り出す
「なっ…お前、そりゃ LR 300 SR Light Rifle か!?」
「まぁね」
「まったく…いつもどんなルート使って手にいてれるんだよそんなもん」
「ま、蛇の道は蛇ってやつでね☆」
取り出した銃を抱きしめながら芳乃は笑顔で語る
笑顔だけ見ていればそんじょそこいらの女子大生と変わらないのにと優は密かに思案する
「まったく、オレらアーカムでさえまだ入荷してない奴なんだぜそいつは」
芳乃は「ウフフ」と返事の変わりに微笑を浮かべる
「優、私はどうすれば?」
一人会話から残されていた李梨が優に問かける
「…李梨にはここに残っていろって言いたいとこだけどよ …ここも安全とは言えねーからな」
言うと優も車に戻って自分の荷物の中から装備一式を取り出し、中身をあさりながら
「李梨、銃のを撃ったことは!?」
「え…? ええ、一応訓練で何度か…」
その李梨の答えで優は中から選びぬいた銃を一丁李梨に放り投げる
「ゆ、優」
手渡された銃、GLOCK Model 27/33と優を交互に見つめながら少し驚きの声をあげる
「いざとなったら自分の身は自分で守ってもらうことになるかもしれねーからな…あん中はさっきのクレイジー野郎の他にも米軍兵や遺跡の罠なんかもあるかもしれねーからな」
言いながら優は自分の装備品STRIKERの弾装に弾が入っていることを確認する
「ま、李梨はこの俺、御神苗 優がスプリガンとして調査隊ともども守ってみせるさ」
優は言いながら自分でもちょっと臭いかと思い照れながら言う
「くっさー」
案の定その優の発言に芳乃は鼻をつまみながら言う
「う、うるせー!俺だってできればこんなセリフ言いたくなかったんだよ!!」
芳乃のその言葉に顔を赤くしてそっぽをむきながら言い放つと同時に優と芳乃の言い合いが始まる
優と芳乃のその言い合いの光景を見ながら李梨はクスッと微笑む
「ええ、期待してるわ優」
その言葉に芳乃はちょっとムッとした表情を見せるが2人は気付かず目の前のピラミッドを見つめ
「さあ行こうぜ!奴らが言う”エデン”の園にな!」
「ええ」
「わかってるわよ」
3人は遺跡”エデン”の中へと踏み込んでいった
to be continued
後書き
うぉぉぉぉーーー!!
早い!早すぎる!!構想2日、執筆1日で書き上げてしまった!!!
自分でもなんでこんなに早く書けたんだろうと驚いております……
まあ要因は、今回の話に限っては結構資料等があったせいかな?
まず冒頭の英文ですが読めない、または読めても意味が分からないと言った方がいたのではとおもいます
正直に言います…私もわかりませんでした(爆)
なにしろ聖書の一説の文で、これが聖書の一文でないとしたらまったくわけの分からない単語等で意味の分からない訳ができてしまうわけです
なんでこんな文を引っ張り出してきたかと言うと…・実は大学の課題で聖書の一文の諺を調べていたとき、このエデンに関する一文があったので、こりゃいいや!さっそく使わせてもらおうと思ったわけです(笑)
次に銃器に関してですが…これはアメリカに旅行で行った時、銃器の雑誌を2冊ほど購入いたしましてその中から気に入ったのを使わせて頂きました。だが私ははっきり言って軍事マニアでもないので全然わかりません(笑)私の銃器に関する知識などは…拳銃、警官やマフィアが所持するもの。ライフル、殺し屋が所持するもの。マシンガン、マフィアや軍隊が所持するもの。ショットガン、アメリカでは一軒一軒が自衛のためにこれを所持(嘘)。ってなところなのです。ですから私に銃に関する抗議や質問のメールを送ってもなんにもわからないのであしからず。
ちなみに余談ですが、私はショットガンやマシンガンは見たことがあります!前者はアメリカのパトカーの中にはこれが鍵をかけてあるが車内に常備されているのです。そして後者はオランダ、ベルギーの国境地帯で高速道路の休憩所でオランダ軍が移動をしているときに見ました。はっきり言って後者の方は怖かったです(汗)何しろ奴等ガタイがでかくて威圧感ある上に軍服とマシンガンなんだもん(笑)…・彼等が突如テロリストにでもなったらどないするんだろう?
以上長い後書きでありました
PS 英文の訳はちゃんと次回で掲載します
改訂 2002年4月27日