杏子編T




AM9:55


    ピンポーン

杏子「…………」

    ピンポーン

杏子「…………んん〜…」

    ピンポーン ピンポーン

杏子「……ん〜〜…」

杏子「(もぉ〜なによ。せっかく人が気持ち良く寝てるっていうのに……どうせ新聞の勧誘かなんかだろうからまだ寝てよっと)」

    ガンッガンッガンッ

杏子「(うっわ〜、なんて勧誘かしら。ひとん家の玄関をガンガン叩いちゃって……これは絶対に出てやらないんだから)」

    ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン

杏子「(無視無視)」

    ガンッガンッガンッ

雄二「おい杏子いるんだろ!!さっさと起きろよ!!」

杏子「(え?この声は!?)」

雄二「ったく〜、人に迎えになんて来させやがって…」

杏子「(え、ホントに?今何時!?……10時前!!)」

雄二「……ホントにいないのか〜?」

杏子「キャー、ちょ、ちょっと待って!」

    (ガバッ)

杏子「い、今出て、キャッ」

    ドンガラ ガッシャーーーッン

杏子「きゃぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー」

杏子「いったーい………」

杏子「あ、ああ〜!!私のお気に入りのイタリア製のコーヒーカップが〜……」

杏子「ひっどーい、これってまだ3回しか使ったことないのに!それにこれでシャワー浴びながらカプチーノっていう私の楽しみが〜」

雄二「……お〜い杏子いるんだろ?中からすっげー音が聞こえてきたぜ」

杏子「ハッ、いっけない!待ってて今開けるから!」

    ドタバタ ガチャッ

杏子「おっはようー雄二君!」

雄二「………」

杏子「!?」

雄二「…………」

杏子「…どうしたの雄二君?」

雄二「プッ」

杏子「プッ!?(なにかしら一体)」

雄二「アッハハハハハハ!なんだよ杏子その頭は!!」

杏子「え?」


雄二君のその言葉で私は慌てて自分の髪の毛を触ってみる

すると本来髪の毛が触れるはずのない場所で指が当たる


杏子「(……まさか)」


私は自分の中に浮かんだ考えを確かめるべく急いで寝室に駆け込み、そして鏡の前に立つ

するとそこには…


杏子「きゃぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


私の絶叫があたり一帯に木霊した




この後私はうるさいと怒鳴りこまれた付近の住民に平謝りした後であった


雄二「ふ〜、なんで俺まで杏子と一緒に謝らなきゃいけないんだよ」

杏子「シクシク……今日は厄日だわ」

雄二「だいたい杏子が俺が来た時にサッサと出ないから悪いんだぞ」

杏子「だって、昨夜の捜査なんかで私疲れてたんだもん」

雄二「あのな〜、内調の捜査官ともあろうものがなんでそんなことぐらいで疲れるんだよ」

杏子「うっ」

雄二「それに今日は10時に出掛けるって言っただろ!もう20分も過ぎちゃってるじゃん」

杏子「ううっ」

雄二「それにこの部屋の有様…まるで地震の後みたいだぜ」

杏子「雄二く〜〜〜ん」

雄二「なんだよその『そんなに言わないでよ』って訴えるような目は」

杏子「その通りなんだけど」

雄二「あのな〜……も〜とにかくとっとと出掛けようぜ!俺今日の午後は玲奈と約束があるんだよ」

杏子「玲奈ちゃんと?」

雄二「ああ、なんだかわかんねーけど重要な話があるって」

杏子「(玲奈ちゃんが雄二君に重要な話?一体なにかしら、気になるわ)」

杏子「(ハッ、まさか告白とか!?ううん、玲奈ちゃんと雄二君の年齢ならありえるわね、いいえむしろ遅いぐらい)」

杏子「(これはちょっと気になる話ね)」

雄二「………」

杏子「(う〜〜ん)」

雄二「杏子?」

杏子「(雄二君と玲奈ちゃん…この二人って幼馴染だって聞いてたけど、やっとこういう展開になってきたのね)」

雄二「おい、杏子ってば!」

杏子「え?ゴメン聞いてなかったわ」

雄二「………」

杏子「(どうしたのかしら?なんだか複雑な顔つきをしてるわ)」

雄二「…いいのかそれで?」

杏子「え?なにが?」

雄二「……別に、とにかくさっさと行こうぜ」

杏子「あ、その前に雄二君!」

雄二「…なんだよ?」

杏子「えっと〜その〜…」

雄二「なんだよその指を絡ませながらおねだりするみたいな目は?」

杏子「そのね……行く前にシャワー浴びてきてもいいかしら?」

雄二「………」

杏子「(あ、やっぱし呆れたって顔になったわ…でも朝のシャワー浴びないと私って気が済まないのよね〜)」

雄二「……さっさと行けよ」

杏子「う、うん(なんかもうどうでもいいって顔になってる…やっばー)」

杏子「じゃ、じゃあちょっと待っててね!」




AM11:10 -墓地-


雄二「ったく結局こんな時間になっちゃったじゃんかよ!」

杏子「しょうがないでしょ!お墓参りするのに手ぶらで来れるわけないじゃない!ちゃんと花だって買わなくちゃならないんだし!」

雄二「お前の場合は選ぶのも時間かかってるんだよ!」

杏子「ああ〜、女の買物の時間計ってるなんて雄二君最低ね」

雄二「あのな〜……だいいちこの墓参り、俺はお前に付き合うだけなんだからな」

杏子「えっ?」

雄二「俺あの見城って人に今でもあんまり良い印象持ってないんだよな。だってあのFAX画像を俺に書き換えたり、インポートタワーじゃ拳銃ぶっ放されたり、さらに指名手配の濡れ衣まで着せられたんだぜ」

杏子「そりゃ〜(そういやそんなことやられたっけ)」

雄二「そんなこともあってか俺って未だにあの人の墓参ろうなんて気が起きないんだよな〜」

杏子「も〜ここまで来てそんなこと言ってないでよ!雄二君がどう思おうと私の先輩だったんですから」

雄二「わかってるよ。でもお前以外に参る人なんているの?」

杏子「そりゃ〜……(誰がいるかしら?まりな先輩は今アメリカだし、本部長はこうゆうことするのかわからないし、他の同僚達はあまり見城先輩と付き合いがなかったし……葵は会った事もないはずだしね)」

雄二「アレ?」

杏子「どうしたの?」

雄二「いや、アソコにいるの…」

杏子「え?」


私は雄二君が指差した方向に視線を動かす

そこには一人の女性が立っていた

その女性の髪は透き通るような金髪で、背は高くまるでモデルのようにスラリとしている


雄二「アソコにいる金髪の外人…どこかで見たことあるな〜って」

杏子「え?(そういえばどこかで…でもどこでだったかしら?)」

杏子「(それにしても奇麗な人ね……でもなんだか寂しそうな顔つきをしているわ)」

杏子「(そうか、きっと死んだ恋人かなにかのお参りなのね…確かにここは墓地だから明るい雰囲気になんてなれないわね)」


私が彼女の方を見つめていると、私達の視線にでも気付いたのか、彼女もこちらを向いた


杏子「え!?(私を見ている?)」

雄二「おい、なんかこっち見てるぜ」

杏子「え、ええ(何故かしら?初めて会ったはずなのにどこかであったことがあるような…)」

雄二「あ、離れて行くぞ」


彼女は暫く私達の方を見ていたが、そのまま背中を向けると反対方向へと歩き去っていった


雄二「いったいなんだったんだ?」

杏子「さぁ?…ま、さっさと見城先輩の墓にお参り済ませましょ」

雄二「ああ……で場所どこなんだ?」

杏子「えっと〜……たしか…、あ、さっきの女の人がいたあたりよ」

雄二「え?まさか…」


その雄二君が考えていたことは見事に命中した

彼女がさっきまで立っていたところ

そこの墓石には“見城家之墓”と刻まれていた


雄二「さっきの女(ひと)も見城さんの知り合だったのか?」

杏子「さぁ〜私は知らなかったわ……あら?」


見城先輩の墓石をしばらく眺めていると、私の目に光るものが映った

なにかと手を取るとそれは腕時計であった


雄二「なにそれ?…時計?」

杏子「これって確か見城先輩の!」

雄二「え!?」


私はこの時計を二回見たことがある

一回目は内調のオフィスで見城先輩がつけているのを

そして二回目はEVE、御堂真弥子を求めて砂漠の奥深くの場所である女性が大事そうに握っていたのを

そう、ある女性が…


杏子「(じゃああの人って?でも彼女とは…)」



to be continued


後書き

はい、杏子編Tが再開の勢いにのってUPされました!
まだ杏子は雄二のことをそんなには意識していないという設定ですので御了承ください
そして見城の墓を訪れる彼女!え、でも杏子が見たことないって…ええ〜!?
彼女は一体何者なのか!?しかし謎を残したまま次回は小次郎編へと…

※キャラ毎の色分けは後日にちゃんと行ないますので御了承下さい

2000年11月15日


見城の墓を訪れた杏子と雄二

しかしそこに現れる一人の美女
果たして彼女は何者なのか?
そして一方の小次郎は…
次回小次郎編T
次回も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪


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