小次郎編U




PM12:30 倉庫街


まりな「さっ、出かけるわよ」

小次郎「へっ!?」

まりな「『へっ!?』じゃないの。まずは杏子達と会わなくちゃ」

小次郎「……それになんで俺様まで同行するんだ?」

まりな「あんたね〜……まさか私一人にやらせる気じゃないでしょうね?」

小次郎「って、お前は怪我人の俺様を働かせる気かよ」

まりな「なに言ってるのよ、ちょっと刺されただけじゃない」

小次郎「ちょ…ちょっとってな法条お前……」

まりな「さっさとしないとまたぐりぐりするわよ」

小次郎「わぁ〜った、わかりました。行くよ、行けばいいんだろ?」

まりな「素直でよろしい。 じゃあ氷室さん、小次郎借りていくわね」

氷室「え、えぇ……大丈夫なの小次郎?」

小次郎「氷室、俺が死んだら立派な墓を建ててくれよ」

氷室「………大丈夫そうね」

小次郎「氷室〜〜〜〜」

氷室「………私、今月の給料まだなんだけど」

小次郎「さぁ法条行くぞ!事件解決のために俺様の灰色の脳細胞を発揮する時が来た!!」

氷室「………」

まりな「あんたも大変ね〜、コロコロ変わって」

小次郎「放っておいてくれ」








小次郎「で、まさか歩いて行くんじゃあるまいな?」

まりな「まさか。もちろん車で行くわよ」

小次郎「車? どこに停めてんだ?」

まりな「向こうのもうちょっと大きな通りのとこ。あんたの事務所の前だと潮風をまともに浴びて錆びちゃうから」

小次郎「ほほぉ〜……考えてるんだな」

まりな「これでも私は車には気を使ってるのよ。今の愛車エリーゼちゃん(ロータス・エリーゼ)には防犯対策のために最新のセキュリティも取り付けてるんだから」

まりな「それに以前アメリカ大使館の連中にやられてから一層エリーゼちゃんへの愛着が湧いたのよ」

小次郎「……」

小次郎「(そういやそんなことがあったな)」

小次郎「ん?」

まりな「だから私の防犯対策は万全!盗もうとするやつさえいないわ」

小次郎「ほぉ〜〜、防犯対策ね〜〜………」

まりな「なによ、その疑りぶかい言い方は」

小次郎「イヤな……あそこに停まってる赤いのがお前のそのエリーゼちゃんなんだろ?」

まりな「そうだけど……」

小次郎「じゃああそこでお前のエリーゼちゃんに細工をしているのは誰だ?」

まりな「ええ!?」


俺の指摘に法条は慌てて自分の愛車のほうへ視線を向ける

法条の赤のロータス・エリーゼの前後にはこれ以上よくもまぁこんな車間間隔で停められたと感心するほどに縦列駐車されている

そして法条の車の斜め前にグレイのワゴンが堂々と道の真ん中に停められていた

いくら車があまり来ないからとはいえ大胆過ぎるなと俺は半ば呆れかえる

そしてその法条の愛車側では一生懸命ジョッキで上げようとしている見るからに頭の悪そうなガキどもが3人ばかりいる

あたりには通行人もまばらにいるのだがそいつらの行いを咎めようとするやつもいない


まりな「ちょっと、まさか私のエリーゼちゃんを盗もうとしてるんじゃ!?」

小次郎「そのまさかのようだな」

まりな「ガーーーン」

まりな「………ヌッフフフフ。 私のエリーゼちゃんを盗もうとするなんていい度胸してるじゃないのアイツ等。小次郎、あなたは手を出さないでよ!」

小次郎「なにが哀しくてお前の愛車のために一肌脱がねばならん。さっさと片付けて来い」

まりな「ぬっふふふふふふ」


法条は危険な笑みと笑い声を発しながらその男達に近付いて行った

不幸にもその男達は車を盗もうとする作業に熱中しているため法条の存在に気付いていない

いや、愚かにも車の防犯装置にさえも気付いていないようだ。 全く不幸な連中だ……


男1「なかなかあがんねえな……ネットで載っていたやり方通りにやってるのにな」

男2「でも、上げてから……どうしたらいいんだこれ?」

男1「…………」

男3「そんなの図面の通りにやれば間違いねえよ」

男2「でもよ……なんかしらのセキュリティも付いてるかもしれないぜ……」

男1「かまわねえよ!」

    (ガチャガチャガチャ)

男1「ちっ、うまくいかねーな……これならナンパも巧く行くってのによ」

男3「だよな……売ってもいい金になりそうだしよ」

男2「じゃあいっそのことガラスぶち破って持ってくか?」


そんなことを話しているうちにまりなは連中の背後まで近寄って立ち止まる


まりな「ちょっと、あんた達!」

男1「!!」

男3「おい、誰の知りあいだこのおばさん?」

まりな「お、おばさ……!!」


法条の額に怒りの血管が浮かび上がるのが見える

法条はなんとか怒りを抑えながら男達に向き直る


まりな「あいにくと、あんた達みたいな知り合いはこのお姉様は持っていないのよ」

男2「じゃあなんの用だよ」

男1「もしかして俺達と遊んで欲しかったりして」

まりな「おことわり!」

男3「な、なんてイヤなおばんだ……即座に断りやがった。だいたいそんなの俺達の方がお断りなのによ〜〜」

まりな「(……ピクピク)」

まりな「あんた達そんな昔の窃盗団が使ってたようなやり方で今時盗めるなんて思ってるの?」

男1「なに!?」

まりな「大方ジャッキアップしてオイルドレンプラグを緩めてフィルターを外せばドアロックが外れるみたいな知識を読みかじったんだろうけど………」

男2「!!」

まりな「今時の車はそんな方法じゃ盗めないの。それにその車はリモコンキーだから例え開けられてもエンジンがかかるわけないじゃない」

男3「だ…だったらどうすればいいってんだよ」

まりな「簡単よ」

    (ジャラ)

まりな「こうするのよ」

    (ピッ)

    (ピッピッ……ガチャ)

男2「!?」

まりな「どう?」

男1「そうか……お前がこの車の持ち主か」

まりな「今頃気付いたの? 案外鈍いのね」

男1「うるせー、素直にそれを渡しやがれ!!」

まりな「ふざけないでよね!」


法条はそう言うと静かに身構える


まりな「まりなパーーンチ!!」

    (バキッ)

男1「ぐはぁっ」

男2「ああ! てめぇーーー!!」

まりな「まりなキィーーーック!!」

    (ドガッ)

男2「ぐがぁつ」

男3「な、なんなんだテメェーは………」

まりな「単なる通りすがりよ」

男3「ふ、ふざけんな!なんでただの通りすがりが俺達に危害を加えんだよ」

まりな「……あのね〜、いくらやばくなったからって急に被害者面しないでよね。あなたたちが私のエリーゼちゃんを盗もうとしてたんだからこれはれっきとした自衛措置よ!」

男3「か、過剰防衛だ!!」

まりな「やかましい!」

    (ボカッ)

男3「ぐぎゃーーーーっ」

まりな「フンッ」

    (パンパンパン)


その見事なまでの鮮やかさに近くを通りかかっていた通行人たちはおもわずその足を止めている

その(通行人にとっては)圧倒的なまでの強さを誇った法条と、道路にうずくまって苦悶の表情を浮かべている哀れなガキ共とを見比べてだ


まりな「さ、片付いたわよ小次郎」

小次郎「…………」

まりな「ったく、余計な時間をくっちゃたわ……サッサと行きましょう」

まりな「………」

まりな「……その前に」

小次郎「!?」


法条はそうつぶやくと運転席のドアを開けてハンドルのところに備えてあるクラクションを2回勢いよく押した

それを聞いたまわりの野次馬たちは一斉に駆け出し法条の前後に停まっていた車だけでなく、そこら一帯に路駐していた車が一斉に走り去って行った

そのためそれまで回りに停まっていた車は見当たらず、法条の赤のロータス・エリーゼのみだった

それを見つめている法条はしばし唖然としている


まりな「………ねぇ、小次郎」

小次郎「ん?」

まりな「あの人達、私を一体なんだとおもったのかしら?」


俺は法条のこの問には苦笑した

そして一言だけ応える


小次郎「怖〜い通りすがりのおばさん………だろ?」


法条はその言葉に俺を睨みつける

しかしすぐに苦笑すると「そうかもね」と返す


まりな「さぁ、道も走りやすくなったところで行きましょう。お・じ・さ・ん」

小次郎「グッ………アイツ等はいいのか?」



俺は地面で未だうずくまっているガキ共を軽く指差す


まりな「いいのよ別に。こういうことにはリスクが伴うっていう教訓になったでしょ連中には」

小次郎「違いないな」



俺は法条の意見に納得する

それを聞いた法条も車のエンジンをかけると勢いよく発進しその場を後にした





………… to be continued



「…疲れた」

(機会があれば次回までに…)



小次郎はまりなと共に行動を起こす
一方モニカに命を救われた杏子はそこで新たな事実を知るのであった
果たしてその事実とは!?
次回 杏子編U!

次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪




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EVE Endless Rhapsody