第二話「その女、小悪魔なり」



.......一週間前

年が明け、1月も半ばに迫ったその日…


夜の町はネオンの灯りが彩り、道鮮やかにさせる。俺 永倉 水無月はこの時獲物を求めて街を徘徊していた


この時俺は仕事の関係上北の地、札幌へと来ていた

内容は行方不明者の捜索願。2年ほど前に依頼人の弟が家を飛び出していったきり行方知れずで、その弟を探して欲しいというものだった

俺は警察に任せるべきだとも言ったが、依頼人は警察の捜査では遅すぎるという理由から俺へと依頼してきた

そして俺のほうも最近仕事がなかっただけに断る理由もなかったのでこうして引き受けたわけだ

その捜索対象者である依頼人の弟自体も捜索から10日ほどで無事に発見し、後はその弟の居所を依頼人に告げれば依頼は完了

後はかかった経費なども含めて報酬をもらえばこの仕事は終わりである

しかしせっかく札幌まで仕事でとはいえやってきてただ帰るのではもったいない

ということで俺はせっかく来た札幌の街並みを歩いていた

もっともただの楽しみではなく、俺の死活問題にもかかわることも兼ねている

それは、血液補充のための獲物……もとい美女を求めて



前回も言っていたが俺は人間と吸血鬼の間に生まれた混血、ハーフ・バンパイアである

昼間は普通の人間となんら遜色はないのだが、夜になると吸血鬼の血が活性化して常人離れの能力を発揮することが可能となる

…だが、そんな俺でも昼間でも夜でも変わらない体質が存在する

それは俺にも何でだかわからないが、異性の血液を定期的に摂取していないと体に命に係わる症状が出てしまうのだ

まあ簡単に言ってしまえば女性の毎月に起こるアレみたいなものだ

幸いにも昼間は人間の血で押さえられているが、夜になると吸血鬼の血が通常の吸血鬼よりも活性化するため、その異変が促進されてしまう

以前血液摂取を怠ったときは体中の力が抜け、吐き気や高熱にうなされた。夜でも俺の吸血鬼としての能力がみるみる衰退していき、このまま死んでしまうのではないかと思ったほどである。

故にそれ以後はこうして定期的に摂取することを俺自身義務づけていた

そんなわけで俺は月に何度かは異変が生じる前にこうして街に出ては手ごろな、と言っても誰かれかまわずというわけではなく俺好みの女性の血液を頂かせてもらっている

もちろんその相手からは身体中の血を抜き取るなどのホラーフィクションのようなことはしない。まして貧血になるほどに摂取もしない

せいぜい献血、いや採血で抜き取るほどのわずかの量で十分なのだ

そうした理由から俺はこの日も俺好みの女から血液を頂かせてもらうために夜の街を徘徊していた

幸いにも街に出れば見渡す限り女はありふれており、どれにしようかと俺自身目移りしてしまうほどであった

あっと、ちなみに俺の守備範囲は19歳以上からで、それ以下のお子様には手を出してはいない

なんたって俺はロリコンじゃないし、相手は選ぶ。そんでもってうまい血がだいたい25歳以下の女性とこれまでの経験から限られてくる

で、どうやって釣るかというと……まさかいきなりかっさらって人気のないところでいきなり首筋に牙を立てるわけじゃない

まぁ、早い話がナンパだ……

かといっていきなりナンパするわけではない

俺の吸血鬼としての能力を活かしたナンパの方法ってのがこれまたあるんだな

俺はさっそくあたりを見渡してターゲットを探す






「……おらん」


俺はつぶやいた


ターゲットを探して1時間以上経つのだが、どうしたことかいないのである

なにがいないのかというと、無理矢理ナンパされて困っている女というやつである

はっきりいって相手が嫌がっているのだから、それを助けてあげて感謝されたあげく、新鮮な血液までいただけるのだからこれほど効率的なことはない

例え相手が空手の達人だろうがナイフを持っていようが夜の俺は無敵で、怖いものなどはっきり言ってない

そんな奴らはこれだけ大きな街だと普段はどこにでも溢れているのだが、どうしたことか今夜にかけては全然目にしないのである

今日明日ということはないだろうが、さっさと血液補給を済ませておかないと俺の身体に禁断症状が出始めてしまう


「ったく、こんな時に限って………!?」


俺は少しぼやき始める


ふと目の前のゲームセンターの中に視線を向けると、ゲーム機や男どものせいで顔は見えないが、ナンパされていてどうみてもいやがっているという女を見つけた


「……さて、顔は見えないが……う〜ん、あれは20を越えているのか?」


体型だけをパッと見たときどう見ても二十歳以下の体型で、ひょっとしたら18歳以下かもしれない

どうにか顔を見ようと様々にしてみたが、どうしてもゲーム機や男達の背中で顔の部分だけが隠されてしまっている


「……しょうがない、今日はあれしかみつからからな………」


俺はつぶやくと真っ直ぐそちらに向かって歩き出していった




「ちょっと、いいかげん放してって言ってるでしょ!」

「いいからついて来いって言ってるだろ!」


なにやらその女と男達は言い争っている


「しつこいわね!私は行かないって言ってるでしょ!」


男達はなんとか女を連れ出そうと躍起になっている

しかし女の方も強気にそれを拒否している

しかし女一人を野郎数人でナンパするとわな………


「っよ!悪いけどそいつは俺に用があるんだ」


俺は近づいてそいつらに話し掛ける

急に背後から話し掛けられたからか、男達は振り返って俺のことをジロジロと見始めた


「なんだよオメーは!」


一人が俺に凄みでも効かせているつもりなのだろう。俺に一歩近寄って虚勢を張っている

今までもこうして虚勢を張れば相手が逃げ出してきたのだろうが今日は相手が悪い


「だから、その女は俺に用があるんだよ」

「嘘ついてんじゃ……―」

「嘘じゃないわよ!さっきからそう言ってるでしょ!」


そいつが言い終える前に、いつのまに俺の背後に廻りこんだのか、女は俺の背後から叫ぶ

……おいおい、いつのまに回り込んだんだ?

しかし俺に近寄ってきた男には効果てきめんだったのか、仲間の方を振りかえって、特にそいつらのリーダーと思われるやつの方を見ている

なるほど、確かに喧嘩慣れしていそうな面構えだ


「おい、お前がその女に用があるのはわかったけど、俺たちの方が声かけるのは早かったんだ」

「声をかけるのが早くたって、私はイ・ヤ・な・の!あんたたちみたいのはお断り!!」

「なんだと、この女(あま)!!」

「……」

「どうやら口で言ってもわからないらしいな」

「どっちがよ!」

「こいつ!」


男が俺の脇を抜けて女を捕まえようと腕を伸ばす


「よっと!」


俺はタイミング良く足を出すと男は見事にその足に引っかかり前のめりに倒れる

それを見た他の仲間たちは女から一斉に俺のほうを睨み、その目はすでに怒りに燃えている

リーダー格の男だけは依然余裕のある表情で俺のほうを向き、やがてニヤリと笑うとゆっくりと俺の元に近付いてくる


「おい、今からお前にいいものを見せてやる」

「いいもの? いっとくがお前のみっともないトランクスなんか見たくもないぜ」


オレは相手を挑発するように軽口を言う


「へっ、見てろよ…」


そいつはそういうと真っ直ぐに近くのパンチングマシーンのもとへと近づく

そして投入口に金を入れて、そのままゲーム機が作動するとそいつは渾身の右ストレートを放った

バスンッ!という音と共にそのマシーンの数値は130を示している。なかなかのパンチ力である


「へへっ、どうだ」


男は勝ち誇ったように俺に不敵な笑みを浮かべる

が……

俺もニヤリと笑うとそのままそいつを押しのけて投入口に金を入れる

男は俺がその男のパンチにびびったばかりでなく、予想外の行動に出たために戸惑いの表情を浮かべる

そしてそのままゲーム機が作動すると俺は利き腕でない左腕でストレートを軽く放つ

ボゴンッ!と、さっきの男よりもものすごい音を響かせた

その音に回りでゲームに夢中になっていた客や、店員までもが何事かと一斉にこちらを振り返る

数値はさっきのやつの倍以上の270を指している

まぁ手加減してやったからこんなものだろうなとは思いながら振り替えるとそこにはすでにニヤケた顔などはすでに見られない顔ぶれが並んでいた


「……すご…」


女の方も呆然とつぶやく


「さてと、これでオレの方がそっちの女には用があることがわかったかな?」


俺の問いかけにそいつらはただコクコクと頷くことしかできなかった





「さっきはすごかったね。あなたどう見ても強そうには見えないのに」


ゲームセンターを出るなり俺が助けた女は興味津々に俺を見つめながら話し掛けてくる

しかし………どうみても18歳以下だよな………

目の前の女は体型もそうだったがどう見たって高校生であった

せっかく獲物を見つけたと喜んだが……どうやら俺は今日はとことんについてないらしかった


「ねえねえ、でもさあなたなにか格闘技でもやってたの?」


俺の気分などお構い無しに女は話し掛けてくる


「………………」

「ねぇー……なんで何も話さないの? せっかくアナタのナンパに付き合ってあげてるのに」

「…あのなー……俺はお前が絡まれてると思ったから助けてやっただけだろ?助かったんだからさっさと家にでも帰った方がいいぞ、親が心配してるだろう」

「………ふんっ、私の親なんて私がなにやってても仕事仕事で無関心よ」

「……悪かったな…嫌なことを聞いちまって」


俺は少しすまなそうに言う。が…


「あ〜いいっていいって。そんなん嘘だから♪」


その女はあっけらかんと嘘だと水無月に告げる


(……こ、こいつ……)


「ねっ、どこか遊びにいこうよ?」

「あのな〜…悪いがさっき助けたのはお前がその…なんだ。 つまりガキじゃないと思ったからでな」

「……なによそれ?」

「なに、俺は自分のちょっとした理由からお前をターゲットにしようと決めていただけだ」

「ターゲット? なに、私に援交でも迫ってるの?」

「バカ、お前みたいなガキに誰がそんなもん迫るか!」

「ガキー?失礼ね、私はこれでも今年の6月で19よ!」

「嘘!?」


俺はその言葉に一瞬耳を疑った


「ん? だがちょっと待て? …まだお前18だろ?」


この時俺にこの女をどうにかする一計が浮かんだ


「……そうだけど?」

「悪いが俺は18歳以下には興味はないんだ」

「ちょっとそれどういう…」


俺は彼女が全てを語る前に手で遮る


「確かにお前は今年で19になり、奇麗でかわいくて…とても魅力的だ」


俺のこの言葉に彼女は一瞬面食らったが、すぐに納得したのかコクコクと頷く


「これは俺達にとって運命的な出会いなのかもしれない」

「…だがな」


俺は一瞬のためを作り


「俺はやっぱし18歳以下には手を出さないポリシーなんだよっと」


俺は言い終えると彼女に背を向ける

そしてそのままロケットダッシュで逃げ出した

逃げるが勝ち!というやつである

振り返ると慌てて彼女も追いかけてくるのが見えたが、夜の俺のスピードに追いつけるはずもない

そのうえ俺は細い路地に入っていったり、何度も角を曲がったりしたので俺は楽々と振り切ることができた

立ち止まって振り返ると当然ながら女の姿は影も形もなかった


「ったく、あれが今年で19とはほとんど犯罪だよな…しかし血を摂取してから逃げればよかったかな…」


この時俺はなぜかふと後悔している自分に気付いた

そして慌てて雑念を振り払った

そしてきっと血液を補充していない禁断症状の前触れだと勝手に決め付けて再び獲物を求めて夜の街をさまようことに決めたのだった






一週間後……


俺はすでに札幌から帰っており、依頼の調査報告も済ませており、成功報酬としてたんまりと謝礼も受取ったので懐具合ももちろんいい

この日も別段仕事を済ませたわけでもなく、単に外出から帰宅した。だが懐具合がいいだけに気分も上々だ

だが俺のその気分は玄関を開け、そこに見慣れない女物の靴が脱ぎ捨てられていたことで一変する

俺は一瞬疑問に思った

俺は女物の靴など購入した覚えもなく、別に女装癖等は断じて無い

盗んできたわけでも、酔っ払って持って帰ってきたはずもない………と、思う

最近俺の家に泊まりに来た女(ひと)が忘れていったなども考えられない

なにしろこんな靴は俺が今朝の出掛けの際にはなかったし、合鍵を渡すような特別な女性も残念ながらいない

俺はどうゆうことかといぶかしみながら部屋に入ると、ソファの上で横になっているものが視界に入る

そしてよーく見てみるとそこには女が気持ち良さそうに眠っている


「なんで俺の部屋で女が寝てるんだ……ん? …この女どこかで…」


そう、俺はこの女をどこかで見かけたことがあった

それもごく最近…

俺は記憶の糸を手繰ってみるが思い当たる人物が該当しない。だが脳裏では常に警鐘が鳴らされているような気分になる


「んっ、ふぁーーーぁーーーーあ!」


俺が疑問に思って女を見つめていると、都合よく女は起き上がってきた


「あ〜……良く寝た」


言いながら女は俺の存在には気付いた風もなく目をごしごしと擦り、まるで自分の家にいるかのような振る舞いだ

俺は唖然としばらくそれを見つめていると、女は寝ぼけ眼のままあたりを見渡しやっと俺と目が合った。それを契機に俺は口を開く


「おい…ここでなにをしてる。 そもそもお前は誰だ、どうやって入ったんだ?」


しかし女はボーッと俺のことを見つめ、俺の問いに応えようという気配がない


「おい、ここでなにをしてるんだ!」


俺は苛立ちながら同じ質問を繰り返す


「オヤスミ〜」


女は俺の苛立ちなど意にも介さずボーっとした表情で再びソファの上に横になった

俺は慌てて近づいて


「おい、お前は誰なんだ。 起きろ!」


俺は女を揺り動かしながら起こそうとするが


「んん、うるさーい!」


と言いながらいきなり俺に抱き着いてきた


「お、おい。 なにをやって……―」


俺がそう言いかけたとき女はいきなり俺の首に噛み付いた


「島凵※買ミχδーーーーっ!!」


俺は突然の出来事に言葉にならない叫び声をあげる


「な…なにすんだいきなり!」


俺は慌てて女を引き剥がしてかまれた首に手を当てる

近くの鏡で噛まれた場所を見てみると、噛まれた痕がくっきりと残されている

いくら俺が吸血鬼とはいえ、噛むのは俺達の専売特許であり、噛まれるのなど初めての経験だ

俺は最初はこの小娘の不法侵入に対しては穏便に済ませようと思ったが、ここにきてはもう怒りしか湧いて来ない

どうしてくれようと睨みつけるが、小娘の方は相変わらず俺の怒りの視線など意にも介さないと言わんばかりの態度を取りつづける


「なにってー…あなたの真似をしただけだけど。 吸血鬼さん♪」

「!?」


その女は不意にだが、確かに俺のことを「吸血鬼」と呼んだ

だが…


「なななな……なに言ってやがる。 お、俺のどこが吸血鬼なんだ………」


俺は多少(?)うろたえながら話を誤魔化そうとするが


「へっへー……実はわたし見ちゃったのよね〜」


女はいつのまにか目が覚めていたのか、さっきまでとは打って変って勝ち誇った表情で俺に嬉々と告げる


「あなた1週間前札幌で女の人から血を吸い取ったでしょ!」

「!?」


うっ…確かに俺は先週一人目が外れだったがそのすぐ後に運良くか俺好みの女をナンパして血液摂取に成功していた

ん?一人目が外れ!? ……そういやこの女〜………


「!!!  あー! お前はあの時のハズレ女!」


俺はやっと思い出したのか、女に指差しながら叫び声をあげる


「なによーハズレ女って…それになに〜? 今頃思い出したの?」


今ごろもなにも、俺はズーーーーーーーっと忘れていた。正確には最初こいつから血液を奪えなかった後の次のターゲットを見つけた瞬間にはすでに俺の記憶からは削除されていた

しかしなぜこの女がここに?


「お、お前…あの後も俺のこと探して…たのか?」

「うん、もっちろん♪」


俺の質問に女は嬉々として即答する


「実はあの後振り切られて後も私ってば健気にもアナタのこと探していたのよね〜〜」


「どこが健気だ、どこが」と俺は心の中で叫びながら次の言葉を黙って待つ


「それで近くの公園を通りかかったらあんたが別の女と一緒に歩いてるじゃない。私をナンパした後にまた別の女の人をナンパするなんてなんてやつかしらって……それでわたし頭に来てちょっと後ろから蹴りでも入れてやろうと近づいていったらびっくりしちゃったわ」


ここまで言って女は俺の顔を見ながら妖しい笑みを浮かべる。正直俺はこの瞬間この世のものでない者に笑いかけられた気分がしておもわず背筋がソクッとする


「いきなり人気の無い路地に誘い込むんだもん」


う゛っ、確かにその通りだった…


「それでそこで二人がキスでもするかと思ったら……いきなりあなたが口を近づけたと思ったらあなたが牙をたててその一緒にいた女の人の首筋に噛み付くから驚いちゃったわ ……で、これがその時の写真」


話を終えると共にその女は一枚の写真を俺の目の前に付きつける

そこには確かに俺が女の首筋に噛み付いて血液を摂取している現場が撮られている

そういやあの時なにかが光ったような気もしたが、まさか写真に撮られていたとわ…


「もちろんネガはないからね☆」


女はしれっとした顔で言う


「お、お前なにが目的だ……金か?」

「ううん、まっさか〜……」


女は静かに首を振り、その後で不適な笑みを浮かべる


「へっへー実はさわたし、吸血鬼とかの類って昔から興味あったんだよねー……」


女はこれから言おうとしていることをもったいぶりながら俺に告げる


「でも、まさか本当に存在してるなんて思わなかったわ。それでわたしあなたに興味持っちゃったのよ。だからここに住んであなたのことを色々と観察させてもらうわ♪」


女は暗に“断れないでしょ”といった含みも入れて語る

しかし俺にとっては冗談じゃない

なにが哀しくてこんな名前も知らないガキと一緒に暮らさねばならないのか


「観察させてもらうわって、じょ、冗談じゃない!俺は夏休みのアサガオじゃないんだぞ!! それにお前の親だって心配するだろうが」

「ご心配なく。わたしはこの4月からT女子大学への進学が決まってて、こっちで友達と一緒に暮らすことになってるから」

「だ、だからってなんで俺んところで……」


俺はなにかと理由をつけてこいつを帰らせようと必死に考えるが、敵もさるもの

俺の考えがまとまる前に口を開いた


「それに秘密を知っているわたしを返しちゃってもいいの〜? わたしがこのまま帰っちゃたらあなたマスコミに追われる日々が続くのよー」

「うぐっ…」

「『驚愕、吸血鬼は存在していた!』とか、『夜の帝王吸血鬼出現!』ってもう大騒ぎでしょうね〜〜♪」


う゛っ……確かにそんなことになったらこっちは偉い迷惑だ

今までもそのような事態を避けるために吸血鬼であることは隠し通してきたわけだし、注意も払ってきた

だが………


「おお、お前は俺を脅すきか!」

「脅すなんてとんでもない。わたしはただあなたに興味があるから、『あなたの秘密を知っているわたしと一緒に暮らしましょ』って言ってるだけじゃない」

「それを世間では脅すと言うんだが……」

「細かいことは気にしない気にしない。 で、どうするの〜?」


もちろん俺には断れるはずもなく、涙を飲んで了解するしかなかった


「あ、そうそう。わたしの名前は葉月、櫻 葉月」

俺は心の中で『なにが葉月だ、お前なんか小悪魔で充分だ』と、叫んではみたが結局は虚しいだけなのであった


「ヨロシクね」

「……はい」


この時俺の中で何かが確実に壊れた音がしたのは気のせいだったのだろうか…

こうして俺、永倉 水無月と櫻 葉月の奇妙な同居生活は始まったのであった




to be continued


後書きは

え〜「Midnight Bloody Symphony」、略してMBS第二話はいかがだったでしょうか?
今年度から急遽月一で連載を決めて、ここまでは無難に書けたと思うのですが…。ハーフバンパイアの水無月と新しく加わった小悪魔の櫻 葉月。実はこの葉月の方は設定は前からできていたのですが、迷ったのがなにを隠そう名前なんです(笑)。主人公が永倉 水無月とどちらが名字だか分からない名前なので、その相棒というかヒロインというか、女の方もどちらが名字だか分からない名前の方がいいと思って櫻 葉月という名前に決定いたしました。で、今さらですが主人公の永倉というのはご存知の方も多いと思いますが、幕末の京都で活躍した新選組2番隊組長の永倉 新八から頂きました。沖田 、近藤、土方、斎藤など他にも候補は挙がったんですが、結局は永倉を指名させて頂いたんですね〜これが。
そんなわけで次回は本編最初の事件&依頼人の登場です!が…次回は作者の都合等もございまして4月の公開とさせて頂きます、ご了承ください。
それでは次回も新コンビの水無月と葉月のストーリーをおたのしみに!

作成 2000年2月
改定 2002年8月22日


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