小次郎・杏子編T



−PM2:12喫茶店−


  カラーン、コローン


来客を伝える鐘が鳴り響く


店員「いらっしゃいませ。お2人様でいらっしゃいますか?」


氷室「いえ、待ち合わせで…・もう先に来ていると思うんですけど」

店員「そうですか、それではどうぞ」

氷室「ありがとう」


氷室はあたりを暫く見渡すと、一番奥の席で手を振っている女性が1人いる。

氷室と小次郎はその席へと向かい、そのまま同席し、


小次郎「よっ、元気そうだな」

氷室「お久しぶり、桐野さん」

杏子「本当にお久しぶりです。たしかあの事件以来ですよね?」

小次郎「ああ、だがお前もあの事件以降大変だっただろ、向こうでもこっちでもマスコミの取材攻勢やなんかで?」

小次郎「なにせロストワンのワクチンを精製しただけでなく、プリン…・いや、プリシア女王も保護していたんだからな」

杏子「ええ、ああゆうのは自分とは無縁の世界だと思っていたもので」

氷室「まあ私はあなたのおかげで助かったんだから文句はないけどね。………・桐野さん」

杏子「はい、なんですか?」


氷室が改まってまじめな顔つきになったため、杏子もそれに見合った態度をとった。


氷室「改めてお礼を言わせてもらうわ。あの時は本当にどうもありがとう。」

子「いえ、そんな。……それに私だって向こうにいるとき氷室さんが雄二くんにメールであのLost One の情報を送ってくれなければワクチンもはっきりいって作れませんでした。氷室さんのサポートがあってこその解決だったのに私こそそのお礼を言うのが遅れちゃってすいません」

小次郎「ところで今日はどんな用事なんだ?氷室だけでなく俺も呼び出すということはただ単にお礼を言うためだけじゃあないだろう。つまり電話では話せないこと、と受け取ったが?」

杏子「あの実は電話で言えないことではないんです。お礼ももちろんありますけど……実は」


小次郎も氷室もその後に後に出てくる言葉に予想がつかないため、押し黙って次に出てくる杏子の言葉を待った。


杏子「…実は……探偵事務所の場所、忘れちゃったんです(テヘッ)」


ガクッ!ズルッ!


氷室はバランスを崩し、小次郎は椅子からずり落ちそうになった。

当の杏子は苦笑いを浮かべながら2人の行動を見詰めている


小次郎「(さ、さすがは法条の後輩だな)」

氷室「(さ、さすがに法条さんの教え子なだけはあるわね)」


なんとか回復した小次郎・氷室、2人ともじろりと杏子を睨む


杏子「アハハハ、だってだって、氷室さんのところの事務所に行ったのってエルディアに行くための偽造パスポートを造りに行ったあの時だけなんですよ。しかもあの時私は先輩の車で送ってもらったし、その前にも見城先輩に拳銃で撃たれたり、インポートタワーを出ればまりな先輩から3年前のことを聞かされ、そしてエルディアへ行く決心をしたらいつのまにか寂れた倉庫……(ゴホッ)いえ氷室さんのところの事務所についていて、とても場所までは覚えていなかったんですよ」

小次郎「なあ一つ聞いていいか?」

杏子「はい」

小次郎「ならどうしてうちの事務所の番号は知っていたんだ?」

杏子「あ、それは雄二くんに教えてもらったんです。番号さえわかれば後はかけるだけですから」

小次郎「……………………(堂々と言いやがったなコイツ)」

氷室「ねえ桐野さん、私も一つ聞いていいかしら?」

杏子「あ、はい どうぞ」

氷室「電話番号から住所を割り出すってことは思い付かなかったの?」

杏子「(アッ!)え、ええもちろん思い付きましたよ。で、で、でも電話で氷室さん達がいるかどうかを確かめてからのほうがと……それでどうせならお茶でも飲みながらの方がいいかと思って(ホッ、うまくごまかせたわね。でも全然思いつかなかったわ)」

小次郎「そ、そうなのか(ごまかしたなコイツ)」

氷室「そ、それならしょうがないわよねー(ごまかしたわね)」

小次郎氷室杏子「アハハハハハハハ」


店内に乾いた笑い声がこだまする…・・


小次郎氷室杏子「……………………………………」


小次郎「(こいつこんなんで本当に捜査官なんか務まるのか?)」

氷室「(ハァー、今私が生きているのって本当に奇跡なのね。よくあの時はこの子に命を預けられたものだわ)」


小次郎「で、でだ本題に入ろう。で、俺達を呼んだのは何の目的があってだ?」

杏子「ええ、それにはまずあの事件から2ヶ月後の出来事から話さなければならないので聞いてくれますか?」

小次郎「ああいいぜ、話してくれ。おっとその前に、お〜い!


タッタタタタ


店員「…・お待たせしました。なんでしょうか?」

小次郎「俺はコーヒーを頼む」

氷室「あ、私はレモンティーを」

杏子「私はコーヒーのお代わりをお願いします」

店員「かしこまりました」


タッタタタタ


小次郎「さてはじめてくれ」

杏子「あ、はい……………・」















………8ヶ月前、つまり「Lost One」 事件より1ヶ月後

−内調本部−
ツカ ツカ ツカ ツカ ツカ ツカ ツカ ツカ ツカツカ

遠くからの足音がだんだんと近づき、


   バタンッ


甲野「ウワッ!?…・なんだい杏子くんかい、脅かさないでよ。それに扉を叩くときにはノックぐらいしてくれなくちゃ。仮にも私は上・・」


    ガン ガン ガン ガン


本部長が言いおわる前にドアをノック(?)した


杏子「失礼しました。これでよろしいでしょうか」


杏子の声は明らかに不機嫌、不快の感情をあらわにしていた


甲野「杏子くん、それはノックじゃなくてドアへの八つ当たりだよ」

杏子「八つ当たりもしたくなります!何なんですかこの辞令書は!!」


    
バンッ!


本部長の机に一枚の辞令書を叩き付ける



杏子「今朝出勤したらロッカーにこの辞令書が貼られていました」

甲野「まーまー落ち着きたまえ。ええ〜何々?『内閣調査室 捜査官 桐野 杏子。本日より半年間の内部勤務を命ずる』……これがどうかしたのかね?」

杏子「『どうかしたのかね?』じゃないですよ」


    ガックン  ガックン


甲野「グ、グキャグフフ    ゴ、ゴキィクケガガガ   (く、苦しい    お、落ち着きたまえ)」





………3分後…………・


甲野「フー、まったく死ぬかと思ったよ(なんだかますます彼女に似てきたねぇー)」

杏子「(ジロリ)」

甲野「(ギクッ)な、なにかね?」

杏子「理由を教えて下さい。あの事件以降私はこれといったミスを犯した覚えはありません。なのになんでいきなり現場を外され内部勤務に移されなくちゃならないんですか」

甲野「そんなに聞きたいかい?」

杏子「はい、どうしても」

甲野「それじゃあ説明しないわけにはいかないね〜」


本部長はため息を一つ吐いてから


甲野「率直に言えば君が有名すぎるためだ」

杏子「はい?…・わたしが…・ですか?」

甲野「おいおい、わからないなんて言わせないよ。思い出してもみたまえ。君はLost One ウィルスのワクチンの精製、プリシア女王の保護。当時エルディアは注目されていただけに君の知名度は世界中に知れ渡ってしまった。もちろん君の内閣調査室捜査官という身分までね」

杏子「…………………」

甲野「わかったかい?つまり君が捜査に行けば相手はもう君の素性を知っているために真実を隠すか、己を隠すかで捜査に支障が出る、だから上は君に半年間の内部勤務を命じた。ま、そういうわけだから半年間はおとなしくデスクワークに励むんだね。いいよ〜内勤は、外勤と違って定時に帰宅できるんだから」


杏子「で、でも……・」

甲野「いいかい杏子くん、これは命令なんだ。組織に属する以上上の命令は絶対だ。命令違反ばっかりしてるとまりなくんみたいになっちゃうよ(もう遅いかもしれないけどね〜)」



************


−アメリカ・ロサンゼルス−


…「はい、つ…つ…ハ、ハックション!」

外人A「Bless you 」

…「oh , thank you 」

…「まったく誰かしら私の噂をしているのは。渋いおじさまだったら大歓迎だけど…・・どうせ本部長ってところかしらね」

…「ほらそこ!しっかり前を見る!!そんなことじゃ立派な捜査官なんて夢の夢、途中で命を落すわよ」



****************








……


杏子「………………と、いうわけで現場復帰で先月からでやっとこれで2件目の事件を担当することになったんです」

小次郎「2件目?2件も掛け持ちするのか?」

氷室「ボソボソ(ちょっと小次郎、そんなストレートに言っちゃあ)」

子「?」

小次郎「ボソボソ(だって桐野だぜ)」

氷室「ボソボソ(わかってるわよ。私が言いたいのはストレートすぎるといいたいの。もっと遠まわしというか婉曲というか、とにかく)」

杏子「あの〜最初の方はすでに解決してますけど」

氷室「ウソ?」
小次郎「ウソだろ?」

杏子「…………・・お2人ともいったいどういう目で私を見てたんですか?」

小次郎「この目だ」

杏子「……・前髪で隠れてて見えません」

氷室「……・と、とにかく本当に最初の事件はすでに解決しているの?」

杏子「ええ」

氷室「ホントに?」

杏子「………・ホントです」

氷室「ご、ごめんなさい。さぞかし大変だったんでしょうね」

杏子「え?…は、はい。(い、言えないわ。捜査に行き詰まって立ち食い蕎麦屋で蕎麦を食べていたらひょっこり犯人のほうが現われてくれてそのまま逮捕できたなんて)」

小次郎「なんだその…の間は?」

杏子「え、え〜とその事件を解決するのに費やした私の努力を思い出していたんです(こ、この真相だけは話せないわ。なにせ知っているのはその時一緒にいた雄二くんだけだし、しかも私は蕎麦に夢中できづかなかったなんて…・)」

杏子「(あの後雄二くんにも呆れられたんだから)」

小次郎「ま、まあ、それで今回の事件と俺達とどう関係があるんだ?」

杏子「え?ええ実は今度の事件は、天城さん、あなたの方が詳しいだろうと思ってお話を聞きにきたんです」

小次郎「俺が良く知っている事件ということだな」

杏子「ええ…・多分」

小次郎「多分?」

杏子「本部長がまりな先輩の他に詳しいのはあなたしかいないって言って」

小次郎「俺と法条しか?………・(まさか!?)」

杏子「この写真を見て下さい(顔つきが変わった、やっぱり思い当たることがあるのね)」


1枚の写真が小次郎の目の前に置かれる。

それを暫く見つめ、そしてその写真には


小次郎「こ、これは!?」


to be continued


ふい〜杏子編TUPしました〜
次回はあの青年が再登場です

…「フフフやっと私も出演できたわ、って、なんで…なのよ!」

…「え?何?…・フムフム……これから大活躍の予定だから真打は遅れて登場…!!」

…「フフフそれなら許してあげるわ」

…「あんの〜私の出番わ〜何時なんでしょうか〜?」

…「おい、私もだ。さっきから全然呼ばれないんだが」

二階堂「やはりここは元桂木探偵事務所、現霊界の若手期待のホープこの」

「東海道は黙ってろ〜」

…「チャンチャン ♪」

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