杏子編T

−PM 2:45−


小次郎「こ、これは!?」


小次郎の目は一枚の写真にくぎ付けになった。



氷室「どうしたの小次郎?その写真がなにか………!?」


気になって写真に視線を向けた氷室の目もくぎ付けとなった



小次郎「……桐野……たびたび悪いんだが聞いていいか?」

杏子「もちろんです。もっとも聞きたいのは私の方ですが」

小次郎「…・いや、この写真に関してはお前の方が詳しいだろう」

杏子「?」


へ?どういうことかしら??


杏子「どういう意味ですか?」

氷室「あなたの目で確認した方が早いわよ」

杏子「は、はあ…・」


いったい…私のほうが詳しいって…


杏子「!?」


…………


小次郎「さて氷室。お礼も言ったし話しも聞いてコーヒーも飲んだことだしそろそろ帰るか。事務所に今度こそ依頼が入るかもしれないからな」

氷室「そうね」


言って2人とも立ち上がろうとする


一体この写真には何が写っていたのか?

なんとその写真に写っていたのは居酒屋で杏子が雄二に絡んでいるところを撮った単なる記念写真(?)であった。

杏子はかなり酔っ払っており、未成年である雄二はただ額に汗をかきながら烏龍茶で必死に杏子に付き合ってるそんな写真であった。


杏子「アアアアアアアアア!!!こ、こ、これじゃあありません(ああ、もう!なんでこんな写真が入ってたのよ)。失礼しました、え〜と、えっと……これ!この写真です」


我に返った杏子は慌ててバッグから今度は間違えないよう中身を確認してから渡した。


杏子「(そうそう、コレ!この写真よ!!)」


やれやれといった表情で受け取る小次郎


小次郎「!?」


しかし次の瞬間には顔つきが変わった


小次郎「酷いなこいつは」


言って裏返しに写真をテーブルの上にのせる


氷室「ちょっとごめんなさい」

氷室「……酷い……・」

杏子「…はい、私もそう思います。この事件は3日前、死亡推定時刻は午後2時から4時の間です。死因は頚動脈切断によるショック死で3人とも即死の状態でした」

小次郎「ああ、見れば大体予想はつく」

氷室「犯人はよっぽど残酷なやつね。この被害者達も可哀相に……まだ若いのに」


氷室さんは心底から憐れんでいた


小次郎「だが……こいつはプロだな。3人とも頚動脈を正確に切断されているし、この女の方は首がもげかかっている」

氷室「そうね。そこらのチンピラや、やくざには少なくともこんな真似はできないわ」

小次郎「殺し方にも迷いがないしな」

杏子「迷い…ですか?」

氷室「ええ、たいてい普通の人が殺しをする場合どこかに殺害に対する迷いみたいなのが見られるのよ」

小次郎「殺人を犯した時点でそいつの人生はある意味終わったも同然だ。桐野、お前だって殺しなんかやりたくないだろ?」

杏子「そ、それはもちろん当たり前じゃないですか!」

小次郎「だがこれにはそれは見られない」


杏子「…………」



杏子は黙って2人の会話を聞いている。


小次郎「で、桐野?」

杏子「は、はい!」

小次郎「内調では今どういった捜査をしてるんだ?」

杏子「それが……その……」


杏子は歯切れの悪い言葉を続かせ、


杏子「実はその事件は昨夜公安から内調ににまわってきたらしくて、今朝私が担当するよう本部長に言われたんです」

小次郎「つまりまだ何の目星もたっていないと?」

杏子「…・はい」

小次郎「……………」

小次郎「それがなんで俺や法条の方が詳しいんだ?」

杏子「あ、それはこの写真を見せれば分かると本部長が」


慌ててもう一枚の写真を手渡す


杏子「それは犯行現場に残されていた凶器の写真なんです」

小次郎「どれどれ……・(これは)・!?」


その写真を目にしたとき微かに小次郎の手が震えた


杏子「?(どうしたのかしら天城さん?凶器の写真を見たとたん動かなくなったけど。…あら?微かに手が震えてるわ。その凶器がいったいなんだっていうのかしら?)」

小次郎「………」

杏子「………・」

氷室「…………」


小次郎の様子からただ事でないということを肌で感じたのか、誰一人、氷室も口を閉ざして小次郎を見つめている。


小次郎「……桐野」

杏子「はい」

小次郎「悪いことは言わん。お前は手をひいて他のやつにこの件を任せるんだ」

杏子「それは私ではこの事件は私には荷が重いということでしょうか?」

小次郎「……酷なようだがそうだ」

杏子「!?」

氷室「ちょっと小次郎、その凶器がいったいなんだって言うのよ」


氷室もたまらず口を挟む。


小次郎「悪いが調べたいことができた。氷室俺は先に出るから後は頼む」

氷室「ちょ、ちょっと、小次郎!」


氷室は急に立ち上がって店を出ようとする小次郎を慌てて追いかけた。







杏子はまだ何も言えず押し黙ってテーブルを見つめている。


杏子「(私には荷が重い……確かに私はまだ捜査官としての経験は1年にも満たない。……けれど私にだってプライドがあるわ……・でも天城さんて確か……・)」

杏子「……………」


杏子は再び被害者が写っている写真に目を向け、


杏子「(それにしても確かにこの犯人は氷室さん達が言うようにプロの仕業の可能性が高い……でも……なんでかしら?もしプロならこんなどこにでもいそうな子供たちをターゲットにする理由なんか…・憂さ晴らし?いいえ、憂さ晴らしだったらこんな即死に近い状態で殺さずもっとじわじわと拷問に近いような殺し方を選ぶはずだし……)」

杏子「(本当にプロの仕業なのかしら?ああ〜考えれば考えるほど混乱してくるわ)」

氷室「……・野さん?………桐野さん!」

杏子「え?」


前方に視線を移すといつのまにか氷室が帰ってきて席に座っていた。


氷室「ごめんなさいね桐野さん。まったく小次郎もほかに言いようがあったはずなのに」

杏子「いいんです(どうしたのかしら氷室さん?少し不機嫌なようだけど)。確かに少し傷つきましたが、よくよく考えたら天城さんがあんなふうにいうなんてよっぽとのことだってあの時のことを思い出すとよく分かりますから」

氷室「そう………え?あの時のことって?」


氷室は少し疑惑の視線を杏子に向けた


杏子「え?ええ、私と雄二くんがエルディアでLost One の対策を考えていて、氷室さんのところに電話したとき天城さんが電話にでたんです」

氷室「小次郎が?」

杏子「その時あの人は口ではいいかげんなことを言ってましたが、本心では氷室さんのことを相当心配しているというのが電話を通してでもよく分かりましたから」

氷室「そ、そう………小次郎が……」

杏子「だから天城さんがあんな事を言うなんてよっぽどのことだと思ったんです。それに氷室さんのことを愛してるというも伝わってきましたよ」

氷室「!?な、何を言い出すのよいきなり!」


私の言葉を聞いたとたん氷室の顔が言いながら赤くなった



杏子「(あら?あんなに赤くなっちゃって。氷室さんてもっとクールで近寄りがたいと思ってたけどああゆう表情もするのね)」

杏子「とにかくそういうわけであまり気にしていませんから」

氷室「そ、そう。でも確かに小次郎はこの凶器の写真を見たとたんに目付きが変わったわ」


言いながら再び写真に目を移す


杏子「ええ、しかも微かに手が震えていました」

氷室「え、ちょっと待って。小次郎が?それホント?」

杏子「ええ。確かに震えていました……微かにですけど(どうしたのかしら?)」

氷室「………・」


氷室さんはしばし考えている


氷室「………桐野さん」

杏子「はい?」

氷室「私からも忠告するわ。この事件は誰か他の人に担当してもらいなさい。これは勘だけど、小次郎がああいったのは決してあなたが駄目とかそういうことじゃなくて……おそらく相手が悪すぎるのよ」

杏子「(相手が悪い?)氷室さんは相手がわかるんですか?」

氷室「そうじゃなくて、小次郎はああ見えても自分の心を表にはださない人なの。いつだったか拳銃を突き付けたれていたときも心の動揺は表にはださずに切り抜けたりしてきたわ」

氷室「それが今回は写真を見ただけで微かにでも手が震えた、なんてことはよっぽどのことだと思うの。これはあくまで私の勘だけどね」

杏子「勘………ですか?(氷室さんが勘で物事を言うなんて)」


杏子は怪訝な目を向ける


氷室「フッ、信じられないって顔ね。でも勘ていうのは経験に裏づけたれた立派な才能なのよ……まあこれはある人の言葉を借りてるんだけどね」

杏子「でも私の今日の目的は小次郎さんから詳しいことを聞く、ということだったんですけどそれはどうすればいいんでしょうか?」

氷室「…そうね、じゃあこれから事務所のほうに来る?少したてば小次郎も帰ってくるかもしれないし」

杏子「いいんですか?」

氷室「大丈夫よ。それにあなたともう少し喋りたいこともあるしね」

杏子「わかりました。あ、でもその前に一旦本部長に報告に戻りたいんですけど」

氷室「わかったわ。じゃあ事務所で……ってあなたは場所知らなかったわね。じゃあ私も付き合うわ」


to be continued



早くも杏子編UがUPしまいました
まあ短い文章だからあたり前か…・
なにはともあれ杏子編Uいかがでしたでしょうか?
最初の杏子のボケはお約束ということで
では次回は小次郎編Uです!
それにしても未だにタイトル決まれね〜な〜

杏子「あ〜つかれた〜」
雄二「お疲れ」
杏子「雄二くん、私喉が渇いちゃった」
雄二「それは俺に買ってこいということなのか?」
杏子「だって私これで二回目なのよ!なのに雄二くんはまだ出番なくて暇なんだからいいじゃない」
雄二「お前少し性格悪いぞ」
小次郎「うむそれは言えてるな」
氷室「やっぱりあの性格はあの人のせいなんでしょうね」
小次郎「それ以外は考えられんな」
…「そうかの杏子?(グリグリ)」
杏子「い、いえ。そんなわけないじゃないですか〜。私は…先輩を尊敬してるんですよ」
小次郎氷室「………・(心にもないことを)」
…「じゃあその先輩に飲み物の1つでも買ってきてね☆」
杏子「…………はい(;;)(結局自分で行くことになるのね……)」
雄二「(クッククククク)」

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