杏子編V

PM 5:30−あまぎ探偵事務所−


杏子「(それにしても)」


  キョロキョロ


杏子「(うわ〜、なつかしい)」

杏子「(あの時まりな先輩とここへきたのがまるでつい昨日のよう)」

杏子「(でもあの時とちっとも変わっていないのね)」










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199* 06/04 あまぎ探偵事務所


まりな「ついたわ」

まりな「降りてお二人さん」


私と雄二くんが車から降りるとそこは海岸沿いにある倉庫街であった

えっ?まりな先輩、私たちをこんなところに連れてきてどうするつもりなの?

わたし、エルディアに行かなきゃ行けないのよ……

先輩も自分でそう言ってたのに、こんなところに連れてきてどうするつもりなの?


まりな「やっほー!」

小次郎「誰だ、うるさいな……うわっ!」

まりな「人の顔見るなり『うわっ』はないでしょ」


奥から現れたこの人…まりな先輩の知り合いかしら?


先輩の顔を見て驚いた様子で、それなりのつき合いだってのもわかるわ

まりな先輩って、地雷原をつっ走りながら生きてるみたいな人だから……

先輩の知り合いってことは、爆発に巻き込まれたことのある人ってことだもん

…いきなり顔をだされたら、驚くわよね…


まりな「ねぇちょっとお願いがあるんだけどさ」


    ぐりぐり


小次郎「うわっ…と…へ、へんなところをくすぐるなっ。なんだよ」

杏子「………」

小次郎「あぁっ!」


なにかしら急に私の顔をみるなり叫び出して…



まりな「なに、杏子たちのこと知ってるの?」

小次郎「いやさっきニュースで、このねーちゃんの写真が流れてたぜ。美人コンパニオン殺人の容疑者で、水族館を爆破した高校生と逃走中って」


がぁーん!


もうそんなところまでいっちゃってるのね…・トホホホ


小次郎「おいおい法条。なんでこんな面倒なやつら、うちの事務所に連れてくんだよ。うちがいま大変なのはわかってるだろ」

杏子「(…なによ、私だって無実の罪を着せられてこれからエルディア行って…)」

小次郎「浮気調査に迷子の文鳥探しに…」

小次郎「従業員の給料だって満足に支払えてないんだぜ」

まりな「従業員のって、あんたんとこ一人しかいないじゃないの」

小次郎「ま、そりゃそうだけど」

まりな「それに私知ってんのよぉ」

まりな「あんた、浮気調査だけじゃやってけないから、ちょっとやばいこともしてるでしょ」

小次郎「……はて。なんのことやら」

まりな「また、ぐりぐりするわよ」

小次郎「わっ、わかりましたやってるよ。はいはい、やってます」


アハハ…・そうとうまりな先輩が苦手みたいね……わかるはその気持ち…


まりな「もともと政府の仕事についてたやつが従業員なんだから、文書偽造なんて簡単よねー」


文書偽造?もともと政府の仕事についていた従業員?なんだかすごいところね…



小次郎「…おい法条。なにたのむつもりだよ」


確かにまりな先輩はこの人に何を頼もうとしてるのかしら?



小次郎「お、おいっ、まさか…・」

まりな「そのまさかよ」

杏子「???」

まりな「この子のパスポートを偽造してほしいの」

小次郎「パスポート!?」

杏子「(えっ……パスポート?そっか、指名手配になっちゃった私が国外に出るには……)」

杏子「(わたし名義じゃない…つまり偽造したパスポートが必要なのね)」

小次郎「……そいつは時間かかるぜ」

まりな「今夜中に」

小次郎「そりゃ無理だ」

まりな「………」

小次郎「………」

小次郎「……このお嬢ちゃん一人でどこに行くんだ?」

まりな「エルディアよ…」

小次郎「!?」


なにかしら?今の先輩の言葉で急に顔つきが変わったわ


この人もエルディアと何かかかわりがあるのかしら?


小次郎「……そうか、氷室を呼ぶよ」


あっ、電話をかけにいったわ


おそらく例の従業員を呼ぶのね…どんな人なのかしら?







氷室「お久しぶりね、法条さん」

まりな「元気そうね」


まりな先輩に「おひさしぶり」って言ってたわ


早っ! 電話をして10分もしないうちにやってきたわ


この人も先輩と知らない仲じゃないみたい

それにすごく奇麗な人だわ、こんなむさくるしい部屋には似合わないくらい…


小次郎「………」


従業員ってことは、ここで働いてるのよね、ウソみたい

もともと政府の仕事に就いてたって言ってたけど、何してたのかしら?


氷室「毎日浮気調査とペット探しでね。いやんなってるわ、まったく」

まりな「そういうわりに楽しそうじゃない。いまだって電話で呼ばれてすぐにすっ飛んできたし。空でも飛んできたの?」

氷室「あのね。たまたま近くにいただけよ」


う”、結構まりな先輩とはりあってるわ…



氷室「ねぇ、このお嬢さんなの?パスポートが必要なのは」

まりな「そう。チャッチャッとつくっちゃってよ」

氷室「簡単に言うけどねぇ」

まりな「あなたなら簡単でしょ」

氷室「……わかったわ」

まりな「さて、と…・」


先輩が今度はわたしの方に向きを変えたわ



まりな「杏子は今夜中に、エルディア行きの最終便に乗り込むこと」


今夜中……後何時間もないわ


間に合うのかしら?

あら?先輩今度は雄二君の方に向きを変えたわ

でも雄二君ここにきてから一言も話さないわね?


まりな「それから雄二君は…しばらく小次郎に預かってもらうわ。ここなら目立たないし、雑用も多いはずよ」

雄二「いや……」

まりな「ん?」

雄二「オレモ行くよ」


そうそうあなたはここで…!?…って、あれ?



まりな「どこに」

雄二「エルディア」

杏子「えっ?(ええぇーーーー!)どうして?」

雄二「杏子が無事に帰ってこないと、オレもずーっとここにいなきゃいけないってことだろ?あまりにも心配だよ」


う”っ……私っていったい……


雄二「CDとCD-Rの区別もつかない人間に自分の運命を託すなんて、恐くて」

杏子「アのねぇ。人をそういう些細なことで判断するのよくないわよ(今だって区別なんかつかないわよ)」

杏子「人間の価値が、たかがコンピュータの用語を知ってるかどうかで決まるわけじゃないんだから」

雄二「おれ、さっきのおねえさんにいってきていい?オレのもついでに作ってくれって」

杏子「ちょっと、人の話を聞きなさいよ!先輩からも言ってあげて下さい」

まりな「いいわよ」

杏子「そうそう“いいわよ”……!?って、まりな先輩ー……あ、こら待ちなさい」


わたしの制止もきかずに雄二君は氷室さんのところに行ってしまった


杏子「まりな先輩……」


わたしはジロッと見つめる


まりな「ああいう軽い言いかたしたけど、あのこ、良く考えたんだとおもうわよ」

杏子「………」

まりな「口の悪い男ってのは、たいがい照れ屋なのよ。覚えときなさい」

杏子「は、はあ……(そういうものかしら)」


そりゃまぁ、一人で行くより心強いのは確かだけど…

でも…・


氷室「できたわ」


考え事をしていると、不意に横から氷室さんがもう完成させたのかパスポートをもって現れる



杏子「(え?もうできたの?)」

まりな「ずいぶん早かったのね」

氷室「ちょうど元が会ったから……写真を張り替えて、ちょっと細工してあとははんこを押せばおしまいよ」

杏子「(もと?)もとって…なんですか?」

氷室「盗品か遺失物かはわからないわ、追求したいともおもわないし……とにかくブラックマーケットで流通してる本物のパスポート」

杏子「…そんなものが売られてるなんて……」

氷室「あなたたちみたいに、自分の顔と名前じゃ旅行もできない人には必要でしょ?」

杏子「…(た、確かに)」

氷室「それから、すみの方にここの電話番号をメモっておいたから、何かあったら電話して。安心して手は抜いてないわ」

まりな「お代は?」

小次郎「いらないよ」

まりな「そうはいかないわ」

小次郎「いや、そのかわり頼みがあるんだ」

まりな「たのみ?」


頼みってなにかしら?



小次郎「向こうに着いたらプリン…いや、プリシア女王によろしく伝えてくれ」

まりな「…わかったわ、杏子向こうに着いたらね、小次郎の知り合いだって言えばプリシア女王に会えるはずよ」

杏子「?」

まりな「小次郎はね、女王の初恋の相手なのよ。あったら、小次郎は元気で相変わらず探偵屋をやってて、女出入りが激しいみたいだって伝えておいて」


え?この人がエルディア女王の?…いったいプリシア女王って…


小次郎「最後のは余計だ!」

まりな「じゃあ、そろそろ行くわ」

小次郎「あぁ、おまえら……」


なにかしら?天城さんがわたし達を引き止めた


小次郎「気を付けてな」

杏子「はい!」


わたしは元気よく返事して天城さんの事務所を出た


…エルディアへと出発するために…



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杏子「(ホントにここにきたのがまるで昨日のことのようだわ…)」

杏子「(でもあれからは9ヶ月も経っているけど、ここはまるで時間が止まっているようね)」

杏子「(氷室さんも苦労しているんだろうな〜)」


私は額に汗を浮かべながら思った


そういや葵は?

そう思って葵の方に視線を向けると、彼女も事務所の中を物珍しそうに眺めている

ハハ…尊敬していた先輩がこんな事務所で働いているなんて知ったらね〜


     ピリリリリリリリリ

     ピリリリリリリリリ


その時突然携帯の着信音が鳴り響いた

もちろん私のではない

視線を葵に向けると、案の定葵がバッグから携帯を取り出して、話し始める


水見「はい、水見です。…あっ本部長!?」


え!?本部長から…・いったいどうしたのかしら



水見「…え!?それは本当ですか!!…はい…はい……」


どうしたのかしら?なにやら深刻な話みたいだけど



水見「ええ、彼女、桐野さんも一緒です。はい…それで場所は?」


私の名前が出たけど……それになにやら場所も聞いているみたいだし、なにかとんでもないことでも起こったみたいね



水見「…はい、それではこれより現場に急行しますので!…はい、ではそこで」


     ピッ


葵は携帯を鞄にしまうと私の方に顔を向けて、


水見「桐野さん、奴が現われたわ」

杏子「奴? …(まさか!?)例のネオ=ナチの方ですか?」

水見「いいえ、ナイフ使いの方よ!」

杏子「!?」





to be continued


ふ〜やっと杏子編もVまで進むことができました
しかも今回は小次郎編Wとの同時UPということもあって疲労度倍増です
これもひとえに私の努力の賜物!?(笑)
嘘です、読んで下さっている方々のおかげです

さて今回はLost One での会話が大半を占めるというちょっと手抜きかもしれませんが、
なかには「あ〜こんなこと言ってた!なつかし〜」などと思われているかたもいるのではないでしょうか?
これもやっとWin版ロストワンが無事に友人より返却されたためであります!
まあ少し私が手を加えて変えているところもありますけどね!

杏子と小次郎はセカンドと早くも対決か!?
そしてネオ=ナチの目的とは!?
次回怒涛の最終回『月はいつもそこにある…』お楽しみに!(大嘘)

では次回は小次郎・杏子編Uで!


感想メール待って魔〜す

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