杏子編U
今私の目の前にあるもの
それは過去二回ほど見たことのあるもの
一度は本人が内調のオフィスで身に着けている時、そして二度目…
その時はある人物がエルディアの砂漠の奥深くで大事そうに握り締めていた時
そして私の目の前の墓に供えるように置かれているもの、これは確かにあの見城先輩のもの!
っていうことはこれを置いていったあの女性は…
でも彼女とは違っていたわ…
あの時には何度も会ってるんだから忘れるはずがない
なんで彼女とは別の人が見城先輩の墓に先輩の遺品を供えるの?
確かめなくちゃ!
(ダッ)
雄二「あ、おい杏子!」
杏子「ごめん雄二君、私ちょっと確かめたいことがあるの!」
雄二「え、確かめたいことってなんだよ?……もう行っちまった……確かこの時計が見城先輩のだって…」
雄二「………」
杏子「(ハァー、ハァー)えっと確かこっちのほうに来たと思ったんだけど?」
(キョロキョロ)
杏子「う〜ん、いないな〜……」
住職「どうなされましたかな?」
杏子「え?」
住職「いや、なにやらひどく慌ててなさるようなので」
杏子「あ、はい今ちょっとこっちのほうに金髪の外人さんが来ませんでした?」
住職「金髪の外人?」
杏子「そうそう!」
住職「ああ、その御方なら…」
杏子「ど、どっちへ行きました!?」
(ガシッ)
住職「グッ……く、ぐるじい……て、手を離じなざい……」
杏子「あ!」
(パッ)
住職「はぁ、はぁ……ま、まったく死ぬとこでしたぞ」
杏子「(死んでもここなら手間が省けるでしょ)」(ボソッ)
住職「は!?」
杏子「い、いえいえ!こっちのことです。で、その人はどっちに行ったんですか?」
住職「ああ、ああ…その人なら今………ん?あんたどっかで見たことあるような顔だが…」
杏子「え?」
住職「はて、どこでだったかの?最近歳のせいかよく覚えてはおらんが、確かにどこかでみたことがあるような…」
杏子「あ、………あの〜…」
こ、この住職さん……私の質問なんかとっくに忘れちゃってるわね…
住職「……確かにあんたの顔はどこかで見たことが…」
杏子「あのね住職さん…私の質問にちゃんと〜……」
住職「はてどこでだったかの〜?」
杏子「(……もう放っておくしかないわね…でもこの住職さんしか彼女のことを見てなかったわけだし…)」
住職「…はて確かにどこかで〜……」
杏子「(ええ〜い、もう!)」
(ガシッ)
杏子「住職さん!そんなことより私の質問に答えてください!」
住職「はて?質問?」
杏子「(……)私の質問はあなたが見た金髪の外人はどっちへ言ったかと聞いてるんです!」
住職「あ、ああ…そのお人ならそこの角を曲がって…」
杏子「そこの角ですね!」
(ダッ)
住職「おお、やっと思い出したわい!」(ポンッ)
住職「彼女は確か…」
杏子「(ったく、あの住職さんのせいで時間とってしまったけど……彼女まだいるかしら?)」
私はとにかく彼女に追いつくべく急いだ
確かめたい、ただその一念からだった
杏子「ここの角ね!」
住職に言われた角を曲がると確かに前方に金髪の女性がいた
だがその女性はすでに車に乗りこんで墓地から出ようとしている
杏子「あ、待って!」
だが私が叫ぶのも虚しく車は勢いよくその墓地を後に飛び出していった
杏子「……」
私はその走り去って行く彼女の車を見送ることしかできなかった
雄二「どうしたんだよ杏子!いきなり走って行っちゃって!」
私が見城先輩の墓に戻ってくるとそこには一人待たされていた雄二君がいた
杏子「あ、ゴメンゴメン…たださっきの人に用があったんだけど…」
雄二「さっきのってあの金髪の?」
杏子「うん」
雄二「で、どうだったんだ?」
杏子「アウト、私が見つけた時には彼女はすでに車で走り去って行った後だったわ」
雄二「ふ〜ん、でもナンバーは覚えておいたんだろ?」
杏子「え?(ナ、ナンバー?)」
雄二「え?…って。まさかお前…」
杏子「テヘッ、そこまで考えられなかったわ」
雄二「………」
杏子「………」
雄二「は〜〜〜〜」
杏子「な、なによそのため息は!」
雄二「飽きれてんだけど」
杏子「わ、私だって失敗ぐらいするわよ!」
雄二「でも車のナンバー覚えるのなんて捜査官としちゃ基本だろ?」
杏子「う"っ」
雄二「お前先輩の教官になに習ってたんだよ」
杏子「ううーーー…」
雄二「………とにかくいない相手にあれこれ悩むよりさっさと墓参り済ませちゃおうぜ」
杏子「そ、そうね」
杏子「(そぉ、私の考えどおりなら彼女とはまた会う機会はあるはず…それも近いうちに)」
杏子「(それに今日この時間は見城先輩の墓参りのために時間をとったんだもん……他のことに気をとたられてちゃ先輩に失礼だしね)」
杏子「(そうとなったら!)」
杏子「さぁ雄二君!ちゃんとお参りしましょう!」
雄二「うわっ、急に元気になるなよ」
杏子「さっ、花を供えましょう」
雄二「はいはい…」
(ガサガサッ)
杏子「さっ、この花を………」
(バッ)
(ビスッ)
杏子「えっ!?」
雄二「!!」
私が花を出し、それを供えようとした瞬間、私の手にあった花は一瞬で散った
そして私の近くの地面になにかが突き刺さるような音が聞こえる
杏子「(これは、まさか狙撃!?)」
雄二「杏子!」
杏子「(ハッ、いけない!!)雄二君伏せて!」
雄二「え?」
杏子「いいから早く!」
私は雄二君が行動を起こすよりも早く彼の頭を掴んで共に地面に伏せる
雄二「な、なんだよ杏子いきなり」
杏子「静かに、これは狙撃よ」
雄二「狙撃!?」
杏子「ええ、あそこの地面に着弾した痕があるでしょ?」
私は先ほどの着弾痕を指差す
それを見て雄二君もどうやら納得してくれたようだ
杏子「私の位置関係と着弾痕から…狙撃地点は向こうの方からね…」
雄二「…なるほどね…で、どうするの?」
杏子「雄二君…落ち着いてるわね」
雄二「そりゃ、前にあんなことがあったばかりだからさ…案外恐怖に関する感覚が麻痺してるのかも。杏子こそなんからしくないじゃん」
杏子「………(ちょっとショックかも…)」
杏子「(でも今はとりあえず…)雄二君、携帯電話持ってる?」
雄二「携帯?」
杏子「そ、本部に連絡して応援呼ばなきゃ」
雄二「…杏子、お前持ってないの?」
杏子「……で……………たの(ボソッ)」
雄二「え?」
杏子「だからこないだお風呂で使ってて湯船の中に落として壊しちゃったの!」
雄二「………」
杏子「さぁ、わかったでしょ!さっさと雄二君の持ってたら貸してよ」
雄二「今度から防水加工したのを支給して貰えよ」
杏子「わ、わかったわよ!」
雄二「ホラッ」
男「………アレがLost Oneでの英雄、日本のエージェント桐野杏子か」
ヘレン「そうだよ…殺さなかっただろうね?」
男「ヘレン、君も腕が鈍ったのじゃないか?あんな小娘をうちもらすとは」
ヘレン「………」
男「ふ、その無言がなによりも恐ろしい…どうだい、そこらでお茶でも飲んでリラックスするというのは?」
ヘレン「あなたといる限りリラックスはできそうもないね」
男「ハハッ、これは嫌われたものだね僕も」
ヘレン「これだけは言っておく。組織から桐野杏子暗殺の命令を受けたのはこの私だ。余計な横槍は入れるな」
男「ああ分かってるさ。今のは挨拶がわりだよ……僕の目的も彼女じゃないからね」
ヘレン「目的!?そう言えば何故お前が日本に?」
男「僕だけじゃない…フリッツ君、彼だって来ている」
ヘレン「フリッツが!?あの人を切り裂くことのみに喜びを感じているようなサディストがか?」
男「確かに…フフ、けど彼はすでに仕事をこなしたよ…ブラッディ・ベル、あなたと違ってね」
ヘレン「(チッ)」
男「もっともやって来るのは僕と彼だけじゃない……今晩の便であの方もやってくるよ」
ヘレン「あの御方?まさか!?」
男「そういえばあなたはまだ会ったことがなかったな……カオス・エンジェル、あの人が今晩日本に来る」
ヘレン「(奴が日本に!?)」
男「フフ、桐野杏子暗殺に失敗し、セカンドにも遅れをとったあなたの立場は悪い…気をつけないと僕が君への刺客になるかもよ………なにしろ君は組織の中では極めて異端な存在でもあるからその立場は脆い」
ヘレン「フンッ、奴(セカンド)同様造られたお前に言われるとは心外だな」
男「…………」
ヘレン「ハハッ、こいつはお笑いだな。お前も奴同様この話題に触れると顔つきが多少変わるな…」
男「あんなできそこないとは一緒にしないでもらおう。所詮奴はシリーズには加えられなかった欠陥品だ」
男「僕等は選ばれた存在なんだ」
男「“テラー”としてね」
...................to be continued
後書
杏子「ひっさびさの更新ですね〜」
パラ「うむ、おかげでお前がちょっとお間抜けでもありかっこよくもあるキャラになってしまったな」
杏子「………」
パラ「お前はお間抜けで読者に笑いさえ届けてくれればそれでいいのだ!」
杏子「そ、それじゃあ私がまるでコメディアンみたいじゃないですか!!」
パラ「え、違ったっけ?君お笑い芸人でしょ?」
杏子「(うるうる)ち、違いますよ〜〜」
パラ「じゃあ杏子って………(資料調査)」
……………………
パラ「な、なんと!」
杏子「!?」
パラ「杏子、お前はお笑い芸人に最も近い公務員だったのだな」
杏子「公務員はわかるけどなんですか、その“お笑い芸人に近い”ってのは!」
パラ「いやいや、全てをいわなくてもわかってるぞ!お前は近々吉本の門を叩こうとしているのが」
杏子「な、何を証拠に……」
パラ「ふ、お前の部屋でこの入団希望書の書類を見つけたぞーー!!」
杏子「ああ〜〜〜、い、いつのまにーーーーー!!…………って私そんなの書いた記憶ありませんよ?」
パラ「(ギクッ)」
杏子「それにこれ私の字じゃな〜〜〜い!!………(ギロッ)」
パラ「いや〜それにしても暑かったり寒い日が続くね〜〜」
(チャキッ)
パラ「うわ、なんてもの出してんだ!は、早くそれ(銃)をしまえ!」
杏子「死ね」
(ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ … カチッ カチッ カチッ)
杏子「任務完了♪」
2001年3月4日
ネオ・ナチの襲来
そしてさらなる敵の出現!?
スコープに狙われた杏子の運命は?
次回「EVE -Endless Rhapsody-」
小次郎編V!
次回も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪