小次郎・杏子編T




13:50 ―あまぎ探偵事務所


杏子「アハハハハハハ」

小次郎「………」

氷室「………」

水見「…………」

杏子「………」

水見「ったく、あなたの早とちりにも困ったものね」

杏子「だ、だって小次郎さんが氷室さんを押し倒してこれから始めると思ったんだもん」

氷室「なにを始めるのよ、何を!!」

杏子「え?……そんなこと私の口から言えるわけないじゃないですか」

小次郎「………」

水見「まっ、杏子の早とちりも困ったものよね……氷室先輩が白昼堂々そんなことしてるわけないじゃない」

氷室「………」(タラリ)

水見「ね、氷室先輩?」

氷室「え?そ、そうよ桐野さんったらもうそんな誤解しないでよ」

杏子「あれ、どうしてそんなに慌ててるんですか?」

氷室「あー……あ、慌ててなんかないわよ断じて!そう絶対慌ててなんかないから」

杏子「?」

氷室「あ、あ〜お茶でも煎れてくるわね。ついでにフリーダさんの分も煎れなくちゃならないし」

水見「フリーダ?」

小次郎「ああ、客だ!今度うちの依頼人になるかもしれないんだ」

杏子「また浮気調査ですか!?」

    (ガクッ)

小次郎「ってあのな〜……桐野、お前はうちがそんなことばっかりしてると思ってるのか?」

小次郎「(ま、まぁ〜もっとも他に迷子のペット探しぐらいしかしてないなんてこと言える訳ないし)」

杏子「えっと〜、後は ………あ、文書偽造なんてのもあったんでしたっけ!?」

小次郎「わっ、バカバカバカ!!」

杏子「え?」

小次郎「法条や氷室の前だったらまだしも、水見の前で言うんじゃない!」

杏子「あ!!」

小次郎「『あ!!』じゃない」

杏子「す、すいませ〜〜〜〜ん」

水見「聞いたわよ〜〜!!」

小次郎「いや〜…そ、そのなんだぁ〜………合法的なことばかりじゃやってけないっていうか」

水見「なに言ってるのよ!違法行為をしてたことを私達の前で告げるなんてたいした度胸ね!」

小次郎「そ、そりゃ〜まぁ俺様はそんじょそこらの輩とはランクが1つどころか5つぐらい抜きん出てるからな!」

杏子「わ〜〜、すっご〜い!!」

    (パチパチパチ)

水見「拍手なんかしなくていいの!第一誰も褒めてなんかいないんだから!!」

小次郎「ま、まぁ〜そのなんだ……ここは俺様の情報提供で水に流すってことで」

水見「ったく……ここは氷室先輩の顔に免じて見逃すけど」

小次郎「ああ、そのかわりに俺の話す情報には期待してくれてかまわないぜ」

水見「そう願うわ」

    (ジャーーーーーーーー……ゴボゴボッ)

水見「ん?何の音」

小次郎「ああ、そういやさっき言ってた客が今トイレ使ってるからな」

杏子「へ〜〜」

杏子「(ちゃんとお客さんって来てるのね)」

水見「あら、じゃあ私達はお邪魔だったのかしら?」

小次郎「いや、別にそんなことはな…」

    (ガチャリ)

フリーダ「ダンケシェーン!」

水見「!!」

杏子「アラ?(この人どこかで見たことあるような……)」

小次郎「ん、どうしたお前ら?」

フリーダ「あ、お客さんでしたか?」

小次郎「あ、ああ…こいつらも確かに客っていえば客だが…」

杏子「あなたの顔、確かどこかで………」

水見「………思い出したわ!!」


水見はそう叫ぶと突如立ち上がり脇に抱えていたハンドバックからハンドガンP226、正式名称SIG/ザウエルP226を抜き放つ


水見「動かないで!!」

小次郎「なっ!?」

フリーダ「!?」


その銃口はまっすぐにフリーダのほうに向けられていた

俺はあまりのことに思わず唖然としてしまった

それは水見の傍らに座っている桐野も同様だった


杏子「ちょ、ちょっと葵!いきなりどうし……」

水見「杏子、あなたも銃を出して!この女、“ブラッディ・ベル”よ!!」

小次郎「(ブラッディ・ベル?)」

杏子「それって……どこかで聞いたような〜……」

水見「……もうっ、例のネオ・ナチのスナイパーよ!!」

杏子「っあ!」

小次郎「(ネオ・ナチの ……スナイパーだと!?)」


俺は慌ててフリーダの方を見つめる

だがフリーダの方にも驚きの表情があった

だがそれは、正体がばれたとかそういう類の驚きでは多分ないだろう


水見「さぁ〜、両手を頭の上に乗せて!!」

フリーダ「………」

水見「早く!!」


水見の銃を持っている手は明らかに力が入りすぎている

このままだとなにかの拍子に引き金が引かれちまいそうだ……


次郎「(オイオイ、流れ弾なんかには当たりたくないぜ)」

小次郎「(相棒の桐野もいつのまにか銃を構えてはいるが、こっちは明らかに問題外だな……だいたい構えからして訓練を受けた捜査官とはおもえん。本当に法条の教え子なのか?)」

杏子「……天城さん、なんですかその目は」

小次郎「い、いやなんでも」

小次郎「(考えてることが表情に出てしまったようだな)」

氷室「ちょ、ちょっと何事なのよ!!」

杏子「あ、氷室さん!下がってください!!」

氷室「ちょ、ちょっと小次郎!どういうことなのこれ?」

小次郎「さぁな、俺に聞かれても俺もさっぱりわからん」

氷室「ちょっと!!じゃあなんでそんなに落ちついてられるのよ!」

小次郎「理由ならそこの水見が知ってるみたいだぜ」

水見「……氷室先輩!この女は通称“ブラッディ・ベル”と呼ばれるネオ・ナチのスナイパーです!!」

氷室「ネオ・ナチ!?」

小次郎「第二次大戦後のナチスの残党とでもいうやつだ。まぁ日本じゃあ馴染みも薄いが欧米じゃビッグネームだそうだ」

氷室「知ってるわよそれぐらい!」

小次郎「じゃあ聞くなよ」

氷室「私が聞きたいのはなんでそのネオ・ナチのメンバーがここにいるのかってことよ」

小次郎「それこそ俺はわからん ……そこのフリーダ、彼女に直接聞くのが早いだろう」

フリーダ「………私は …ネオ・ナチのメンバーじゃありません」

小次郎「だ、そうだ」

水見「信じられるわけないでしょう!あなたにはドイツで起ったイスラエル大使の暗殺容疑で手配がすでに回っているのよ!!」

フリーダ「それは ……知っています」

水見「そしてこの日本への入国が確認されたと思ってたら、まさかこんな所にいたなんて」

フリーダ「!!?」

杏子「(何かしら!?今の葵の言葉になにか衝撃を受けたようだけど…)」

フリーダ「今の話は本当ですか!?」

水見「!?」

フリーダ「その人が日本に入国したという情報は本当ですか!?」

水見「…ええ、こうして今私の目の前にいるわ!」

フリーダ「……入国した正確な日付は!?」

杏子「え?!」

フリーダ「その人はいつ入国してきたのです!!」

水見「な、何を言って……」

フリーダ「いいから答えて!!」

水見「……み…3日前よ…」


水見のその言葉を聞くとフリーダは突如その瞳から涙を流し、そして自分で自分を抱きしめ始めた


フリーダ「ああ、姉さん」

氷室「えっ!?」

小次郎「(やっぱりな…)」

杏子「!?」

水見「…………」

小次郎「水見、どうやら人違いだったようだな。その人の名前はフリーダ・ファルク」

水見「フリーダ……ファルク ………ファルク!?」

小次郎「おそらくおまえらが捜しているのはそっちのほうだろ?」


俺はさっきフリーダから見せてもらった姉の写真とやらを水見に見せる

それを見た水見は写真とフリーダを見比べて驚愕の表情を浮かべた

まぁ、無理もないがな。この2人はおそらく双子だろうから似ていて当然だ


小次郎「わかったらさっさとそのブッそうなものをしまえよ」

水見「……」

杏子「葵、小次郎さんの言う通りよ…銃を降ろしましょう」

水見「え、ええ……」

氷室「フリーダさん、念のためにボディチェックと……それとパスポートを拝見させてもらえるかしら?」

フリーダ「ええ、かまいません」


    …………


氷室「……どこにも武器らしきものは所持していないし、パスポートも偽造じゃなくちゃんとドイツ政府が発行したものよ」

小次郎「氷室がそう言うなら本当らしいな」

杏子「で、でも……そのネオ・ナチの殺し屋の妹さんがなんでこんな所に」

小次郎「彼女は人捜しを俺に依頼しようとしていた ……そしてさっきの反応からおそらくその相手とは」

フリーダ「ええ、私が探して欲しいのはその双子の姉です」

氷室「ちょ、ちょっといまいち話が見えないんだけど」


氷室は大分混乱しているらしいな

まぁ俺も冷静さを装ってはいるが、突然の美人の依頼者が実は今噂のネオ・ナチのスナイパーの妹だった

そして彼女の依頼はネオ・ナチメンバーである姉を捜してくれ……

ここまではわかった


小次郎「まぁかいつまんで言えば、フリーダは姉の捜索の為にうちの事務所にきたわけだ」

杏子「あ、天城さん……それってかいつまみ過ぎじゃ…?」

小次郎「気にするな」

氷室「で、でも一体なにがどうなってるのよ!?」

小次郎「彼女の捜している姉っていうのがつまりネオ・ナチのメンバーなんだよ」

水見「あなたは ……違うのね?」

フリーダ「ええ ……そして…」

フリーダ「姉のヘレンも心の底からネオ・ナチに属しているのではないのです」

小次郎「どういうことだ?」

フリーダ「姉もネオ・ナチの主義を信奉しているわけではないのです」

小次郎「そういやそもそもネオ・ナチの主義、イデオロギーはなんなんだ?」

杏子「えっと〜、確か………」

水見「私達の調べではドイツ人、つまりゲルマン民族が他民族より優れているという選民思想からくる他民族の支配よ」

小次郎「他民族の支配?」

水見「ええ、第二次大戦中、ドイツの総統であったアドルフ・ヒトラーはドイツ国民の生贄としてユダヤ人を虐殺することでゲルマン民族が優れたものだと信じこませようとしてたのよ」

杏子「……世に言うアウシュヴィッツの虐殺っていうやつですね」

小次郎「(ん、アウシュヴィッツ?どこかで聞いた名前だな……)」

水見「ええ、今のネオ・ナチはその考え、思想を再び起こそうとしている組織……その思想に基づいて再び第3帝国を復活させ、過去の栄光を取り戻そうというのよ」

小次郎「まるで小説や映画の世界の話だな」

氷室「本当、私達には理解のしがたい話よね」

フリーダ「いえ、今のネオ・ナチではその思想は表面上のカバー、カモフラージュです」

水見「え?」

フリーダ「私も確たることはまだわかっていないのです。確かに第3帝国の復活を目論んでいるのは確かですが、それを完成させるためのファクターが足りないはずなのです」

小次郎「なるほど、だが言ってしまえばそのファクターが揃えば第三帝国の復活は可能、少なくとも連中はそう思い込んでいるわけだな?」

フリーダ「その通りです」

小次郎「……だがあんたはどうやってそんなところまで調べ上げたんだ?単なるジャーナリストじゃあそこまで調べ上げるのは不可能だぜ」

杏子「………」

小次郎「確かに第3帝国……もう俺達にとっちゃ過去の遺物、歴史上で存在してたってだけの代物だが、連中にはそうじゃないんだろう」

小次郎「だが組織が存在している以上そこまでの予測は成り立つだろうが、ファクターが欠けているなんてそんな細部までの情報、いったいどうやって入手したんだ?」

フリーダ「……それは ……すいません、今はまだ言えないんです。ただ私もジャーナリストの端くれ……とだけ応えておきます」

フリーダ「でもこれだけは言えます、私も、そして ………姉のヘレンもネオ・ナチを憎んでいます」



………to be continued




小次郎「あ〜あ〜……只今マイクのテスト中」

氷室「こら、遊んでないで早く続けなさいよ!」

まりな「そうよ、あんただけじゃないんだからね!!」

小次郎「どわわっ、ほ、法条!!」

氷室「法条さん!?」

まりな「はろはろ〜♪」

小次郎「な、なんでお前がここに!?」

まりな「なんでってそりゃ〜、そろそろ私にも出番が回ってくるからよ」

小次郎「なにぃー!なんだよそれ、聞いてねぇーぞ!」

まりな「今言った」

小次郎「却下!」

まりな「ちょっと〜、なに一方的に、しかも勝手に却下してんのよ〜」

小次郎「この『EVE-Endless Rhapsody-』はな〜、この俺天城小次郎さまが……」

まりな「バナナの皮で滑って豆腐の角に頭ぶつけて死んじゃうお話よね♪」

小次郎「おい、全然違うだろー!」

小次郎「そもそもお前が出てくると俺の調子も狂うし、活躍の場が減るんだよ!」

まりな「あら、とうとう本音が出たわね!」

小次郎「う”っ………と、とにかくだな、桐野っていうボケっぷりのキャラがいてこそもう片方の主役の俺様が大活躍できるんだ!そこんところをお前には考えてもらいたいわけでな」

まりな「却下!」

小次郎「おい〜、そりゃあないだろ法条!」

まりな「却下!」

小次郎「おい待て!まだなにも言ってないだろ!!」

まりな「却下、却下、却下、却下.......................................................却下!!」


小次郎「あ〜だこ〜だ!!」

まりな「い〜え、あ〜してこうよ!!」

  (以降2人の主役談義が続いたのは言うまでもない…)



氷室「はい、そんなわけで今後の展開もわからないこのお話、皆さんはどんな結末を予想してますか?」

セカンド「みんな血の海に沈む!」

プリシア「私と小次郎様のラブラブストーリー!……きゃっ☆」

茜「僕の書いた記事が世に出て、それがもう大反響!」

弥生「お前(氷室)のいなくて、私と小次郎だけの世界!!」

氷室「な、なんですってぇーーーっ!!」


小次郎「ちゃんちゃん♪」


氷室・弥生「あなた(お前)がオチをつけるなぁーーーっ!!」

    (バカッx2)

小次郎「グハァーーーッ!!」

小次郎の事務所にやってきたフリーダとは
なんとネオ・ナチ スナイパーの妹だった!
そして(やっと)語られるネオ・ナチの目的!!

どうなる次回の展開!!
次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪


Next Back

Endless Rhapsody