小次郎・杏子編U
フリーダ「でもこれだけは言えます、私も、そして ………姉のヘレンもネオ・ナチを憎んでいます」
小次郎「……」
杏子「……」
水見「……」
氷室「……」
水見「その、あなた…聞いていいかしら?」
フリーダ「え、あっ……はい」
水見「なんでそうだと断言できるの?」
フリーダ「それは ……すいません、言えないんです」
水見「言えない?」
フリーダ「……はい」
水見「それじゃあわからないわ。何しろ彼女は国際指名手配を受けているし、先日のドイツの事件では重要参考人なのよ」
フリーダ「知っています。でもだからこそ私は姉に会わなければならないんです」
フリーダ「それで姉を探すためにこうして茜からこちらを伺ったわけですから」
杏子「茜!?」
氷室「ああ、小次郎の知り合いのルポライターよ。トラブルメーカーではあるけどね」
杏子「トラブルメーカー……それって……」
氷室「ああ、大丈夫よ。彼女ほどじゃあないから」
杏子「ホッ、それなら安心ですね」
小次郎「誰とはハッキリ言ってないのにわかるところがすごいな」
水見「……」
杏子「今ごろ先輩、くしゃみしてたりして」
******************
まりな「う〜〜〜ん……だ、だめよオジさま。そんなでっかいエビフライなんて食べられないわ……」
まりな「ムニャムニャ……Zzzzzzzz……」
******************
小次郎「…わかった、とにかくアンタの姉貴を探し出せばいいんだろ?」
フリーダ「え、じゃあ?」
氷室「ちょ、ちょっと小次郎!」
(グイッ)
小次郎「うわ、なんだよ氷室!」
氷室「なんだじゃないでしょ!あなたこの依頼受けるつもりなの?」
小次郎「まぁな」
氷室「ちょっと本気?」
小次郎「なんだよ。どんな仕事でもいいから引き受けなきゃヤバイっていってたのはお前だぜ」
氷室「そ、そりゅあーそんなようなことは言ったかもしれないけど……相手はテロリストなのよ」
小次郎「そうだな。しかも水見の話からじゃあそれに超が付きそうなもんだがな」
氷室「そんなの相手になんかしてられないでしょ!」
氷室「それに、命あっての問題じゃない!」
小次郎「安心しろ、俺様だって超一流の探偵だ。十分に互角、いや俺様のほうが有利かもな」
氷室「何を根拠にそんなこと言ってるのよ」
小次郎「顔」
氷室「………」
小次郎「おい、なにか突っ込めよ………」
小次郎「………ま、まぁーそれはそれとして、俺としてはちょっとそのネオ・ナチっていうのにも引っかかるところがあるんだ。もちろん今回の件でな」
氷室「どういうこと?」
小次郎「わからん!」
氷室「……胸を張って言わないでよ」
小次郎「だがな、俺様の勘がこうひしひしと何かを言っているのさ」
小次郎「それにな、昨夜俺様の情報源からの耳寄りな情報によるとだな。ネオ・ナチのスナイパーが何を目的にかやはりこっちにきているそうだ」
氷室「情報源って……あなたまさかその情報源ってあのあからさまに怪しい黄って女からじゃないでしょうね?」
小次郎「(ギクッ)」
氷室「ちょっと小次郎!あんなぼったくりの情報屋なんかなんか使わないでよね!下手すりゃ受けた依頼の報酬以上の情報料を毎回請求してきてるじゃない!」
小次郎「た、確かに……」
小次郎「だけどな氷室。やつの情報は他のやつの情報よりも速くて正確なんだぜ。それに信用もできる」
氷室「それで毎回高額の請求されてりゃ世話ないわよ!」
小次郎「そ、それはまぁー…そうなんだけどな」
小次郎「と、ともかくだな!今は黄のことより、その黄がもたらしてくれた情報の人物は確かに今この日本にいるんだよ」
氷室「それって葵がさっき言っていたのと同一人物?」
小次郎「ああ」
小次郎「俺はフリーダの言っていた姉が、そのスナイパーだとみていいと判断できるぜ」
氷室「勘で……でしょ?」
小次郎「まぁな」
氷室「はぁ〜………わかったわ。あなたには何を言っても駄目だもんね」
小次郎「お、やっとわかってくれたか」
氷室「もう4年近くこうして一緒に仕事してれば、あなたがこうと決めたら私の言うことなんてなにも聞かないのはわかってることだもの」
小次郎「さすがは俺様のパートナーだ。こう抱きしめてやりたくなってくるな」
氷室「バカ、なに言ってるのよ」
小次郎「……顔赤いぜ」
氷室「うるさい!」
杏子「あの〜〜〜〜〜?」
小次郎「わっ!」
氷室「キャッ!!」
杏子「二人だけの世界に浸ってないで、できれば早くこっちの話も続けたいんですけど」
氷室「あ、ああ…そうだったわね」
小次郎「ってわけでフリーダさんよ。とりあえず俺はあんたの依頼を受けることにしたぜ」
フリーダ「あ、ありがとうございます」
小次郎「そこでだ。報酬のことなど細かいことを話し合ってもらうためにも、向こうで氷室と打ち合わせてくれ」
フリーダ「はい」
小次郎「じゃあ氷室頼んだぜ」
氷室「はいはい、じゃああなたは予定通り葵と桐野さんの用件を済ませちゃいなさいよ」
小次郎「ああ、そうする」
杏子「(やっとこっちの話に移れるのね)」
水見「………」
小次郎「やれやれ……じゃあさっそくお前らが聞きたいことには答えてやるよ。もっとも俺が実際に見聞きした情報じゃないのもあるけどな。」
杏子「え?」
小次郎「話の半分は当時法条と情報交換して知ったんだよ」
水見「法条教官と?」
小次郎「そうだよ。もっとも俺はあいつから聞いた情報を誰にも漏らしていないぜ」
小次郎「……氷室にだってな」
水見「わかったわ……私も教官の当時の守秘義務違反について今更とやかく言うつもりはないわ」
水見「私が知りたいのはそのあなたが法条教官と共有したっていう情報の中身から、今度の事件に参考になるはずの情報よ」
小次郎「わかったよ、何でも聞いてくれ」
水見「ええ、じゃあまずは………」
杏子「………」
杏子「(なんだか私ってば場違いみたい)」
杏子「(シクシク、私ってば本当にこの事件の担当なのかしら)」
水見「ん?ちょっと杏子、聞いてるの!!」
杏子「はいぃぃーーーーっ!!」
小次郎「………ってわけだな」
水見「なるほどね。杏子、あなたもわかった?」
杏子「ええ、もちろんわかってるわよ」
水見「じゃあテラーとは一体何者?」
杏子「えっと、発覚当時までは年齢・性別・国籍・顔、全てが不明な謎の殺し屋」
杏子「わかっていたのはナイフを暗殺に用い、そのナイフを必ず現場に置き去ってゆく」
杏子「そして当時まりな先輩が担当していた件にもそのテラーの名前が浮かび上がってきた」
杏子「だけどトリスタン号事件の際にその正体も判明。その正体は、テラーなどという殺し屋は存在せず、それはエルディア旧情報部が組織した暗殺集団」
杏子「……だったかしら?」
小次郎「おおぉーーー!」
水見「すごい、あなたちゃんと聞いてたのね!!」
杏子「……二人とも、一体今まで私を何だと思ってたんですか?」
杏子「…そんな拍手までして……」
小次郎「水見の付き人!」
水見「ただ座ってただけ!」
杏子「シクシク………ひどい、ひどいわ」
小次郎「まぁーそれが俺の知っているテラーに関する情報だ」
水見「嘘」
小次郎「何!?」
水見「そんな情報なら私は全て内調のデータベースで調べられたわ」
水見「でもあなたはなにか別の、おそらくまりな先輩が報告していない情報も知っているはず!」
小次郎「な、なんでそんなふうに断言できるんだよ」
水見「あなた、話している最中に微動だけど手が震えたり、たまにどこか遠くを見るように話してたわ」
小次郎「そ、それがなんだってんだ?」
水見「あなたは頭の中で何かを省きながらを私達に喋っていた!………でしょ?」
杏子「へ〜、葵ってばそんなことまで観察してたのね」
水見「当たり前よ。職業柄相手の観察は常だからね。あんただってそうでしょ?」
杏子「え? も、も、もちろんよ。や〜ね〜葵ってば」
水見「はぁ〜……こんなのと組まされるなんて。私ってなんて運がないのかしら……」
杏子「どんまいどんまい♪」
水見「あなたが言わないでよ!」
杏子「ご……ごめんなさい」
水見「あ〜、私のキャリアが〜〜〜〜」
小次郎「……マジに泣いてるな」
水見「と、とにかく!あなたが知っているテラーに関する情報を教えてもらうわ」
小次郎「………」
小次郎「(さて、どうしたものか……こいつらに全てを話すことは……)」
俺はチラッと氷室の方に目を向ける
氷室は奥でフリーダとなにやら依頼に関する契約を色々としているみたいだ
小次郎「(ちっ ……法条もこんな役を俺に押し付けやがって)」
小次郎「わぁ〜ったよ。話せばいいんだろ、話せば!」
小次郎「だが知らないぜ、後戻りできなくなっても」
水見「私はこの事件を担当してからそのつもりよ」
杏子「(……私はできれば後戻りできる道は残しておきたいんだけど…)」
小次郎「確かにテラーというのは旧エルディア情報部が組織した暗殺部隊だ」
小次郎「けどな、元々は確かにテラーというコードネームを持つ殺し屋はいたんだ」
水見「まさか!!」
小次郎「いや、これは本当だ。もっとも俺も法条から聞いただけだが ……それでも信じられる内容だった」
水見「誰なのそれは?ひょっとして今回の事件の犯人も!?」
小次郎「いや、それはない。その人物は4年前にすでに死んでいる」
水見「4年前!?」
小次郎「ああ、お前らもこの件に絡んだなら当然トリスタン号のことは調べたんだろ?その人物もそこで死んでいる」
水見「じゃあその人物って一体誰なのよ!」
小次郎「……桂木源三郎」
杏子「桂木?その名前ってどこかで……」
水見「ちょっと、その人物って確かあなたが前にいた桂木探偵事務所の所長でしょ!」
小次郎「(やっぱり俺のことも調べてたか。まぁ当然といえば当然だな)」
小次郎「ああ、俺の恩人でもある人物だ」
水見「その人物はトリスタン号でなく、収監先の刑務所の火事で死亡しているはずよ」
小次郎「ああ、俺もそう思ってたさ。けどな、それは死んだと見せかける偽装だったのさ」
水見「偽装って……なんでそんなことを」
小次郎「おやっさん、 ……ああ、桂木源三郎は旧エルディア情報部の人間だったのさ。だがそこを抜けたために古巣の人間が殺しにかかった ……ってところさ」
杏子「(な、なんだかすごい会話になってきたわね)」
小次郎「そしてその桂木源三郎はテラーの名で暗躍した殺し屋だった。だが抜けた後は情報部の暗殺実行部隊のコードネームになったってわけさ」
小次郎「……俺が知っているのはここまでだ」
小次郎「つまり今度現れたテラーに関しては俺も全然知らないわけさ」
水見「ええ、そうでしょうね。でも……」
水見「そうなるとますます情報が欲しいわね。今度現れたテラーとは何者なのか……」
小次郎「まぁそっちはそっちでがんばるんだな」
氷室「小次郎、こっちは終わったわ」
小次郎「おお、こっちも丁度終わったところだ」
小次郎「!?」
小次郎「おい、水見と桐野!」
杏子「なんです、急に小声で?」
小次郎「いいから耳を貸せ」
水見「なんなのよもう」
小次郎「……いいか、今話したことは決して氷室には話すなよ」
杏子「えっ?」
水見「あれ、先輩は知ってるんじゃないの?」
小次郎「ちょっとこっちにも色々事情があるんだよ!いいから黙ってろよ」
水見「わ、わかったわよ」
杏子「はぁ〜……」
氷室「なに3人でコソコソ内緒話してるのよ?」
小次郎「い、いやな ……今ので情報料は貰えないかと相談してたんだよ」
杏子「情報料?」
(ギュウゥゥゥ〜〜〜ッ)
杏子「イッターーーーーーーーーーーーッ!」
水見「え、ええそうなんです先輩。結構ふっかけられたからビックリしちゃいましたよもう」
杏子「ちょ、ちょっと葵!何するのよ!!」
水見「いいからあなたは黙ってなさい」
氷室「なんか怪しいけどまぁいいわ。じゃあフリーダさん、依頼内容は承りました」
フリーダ「それじゃあよろしくお願いします」
水見「あ、私たちもそろそろ次の捜査に行かないと!ホラッ、杏子も立って!」
杏子「きゃ〜、ちょっとちょっと!押さないでよ」
水見「それじゃあ氷室先輩、どうもお邪魔さまでした」
杏子「でしたっ!」
(バタンッ)
氷室「……な、なんか逃げるように帰って行ったわね」
小次郎「そ、そうか? きっとアイツらも忙しいんだろ……」
氷室「でももう16時半なんて時間の経つのも早いわね」
小次郎「そうだな ……って、もうそんな時間か?」
氷室「ええ、そうだけど」
小次郎「悪い氷室!俺もちょっくら出掛けてくる。ついでにこの捜索人の写真ももらって行くぞ」
(バタンッ)
氷室「……いってらっしゃい」
............................. to be continued
ぱら「ふはははは、やっと更新したぞこの野郎!」
杏子「……な、なにをそんなに荒れてるの!?」
小次郎「どうせ財布を道端に落としたとかそんなんだろう?」
杏子「そ、そうなんですか?」
ぱら「んなわけなかろうが!だいたい貧乏は小次郎、お前のことだろうが!!」
小次郎「なに、いつから俺が貧乏だと決まってるんだ!!」
ぱら「知らないのか?"貧乏"と書いて"こじろう"と読むんだぜ」
杏子「へぇ〜〜〜」
小次郎「読むかそんなの!それに桐野、お前も納得するな!!」
杏子「す…すみませぇ〜〜ん」
小次郎「わっ、こら!なにも泣くな!!」
ぱら「女を泣かせるなんて最低だな小次郎」(ポンッ)
小次郎「ば、これは違う!」
ぱら「よっ、女泣かせ♪」
小次郎「ぐっ」
ぱら「そのうちお前のことをロイ○ンタール元帥と呼んでやろう!」
小次郎「だ、誰だそれ?」
ぱら「ふふふ、秘密だ☆」
杏子「それって確か銀………(モガガガガガガガ)」
水見「はいはい、あんたは余計なことまでペラペラと喋らないの」
ぱら「まったく、水見は杏子のよき監視者だな」
水見「ちょ、ちょっと!冗談は止めてよ!!」
ぱら「っていうかお前のキャラは杏子がいて初めて活かされるからな〜〜」
水見「じょっ、冗談でしょ!?」
ぱら「でも読者様方もお前の有名な台詞がお気に入りみたいで、それでおまえの人気度も急上昇らしいぞ」
水見「有名な台詞??」
ぱら「まぁそれは後に語られるとしても……果たしてこれからのこの続きはどう展開されて行くのか!!」
小次郎「ああ、それは大いに疑問だな」
ぱら「次回の展開を期待せよ!!」
杏子「ほほぉ〜〜〜」
水見「ちょっと、その台詞ってなんなのよ!!」
ぱら「………秘密です☆」
水見「………」
(ドガッ バキッ ドゴゴゴッ)
(ドサッ)
杏子「あ、あわわわわわ……」
全てを2人に告げた小次郎
だがその心中には複雑なものがあった
だがそのことに思いを馳せる間もなく小次郎は知らぬ間にこの事件の闇へと迫る!
そして襲い来る影!!
次回 小次郎編X!
次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪