小次郎編X
17:15 -バー-
………タッタッタッタッタッタッタ
小次郎「よし、約束の時間より………」
小次郎「15分の遅れで済んだな」
小次郎「断っておくが、俺様は情報屋の黄と約束があったのであって、決して健康のためにジョギングをしていたわけじゃないぞ」
小次郎「賢明な読者ならそれくらいわかるだろう…って俺は何を言ってるんだ…」
小次郎「しっかし情報屋とはいえ黄は女だ……女を待たせるとは……」
小次郎「……」
小次郎「フッ、真打は遅れて登場するものだ!」
小次郎「………」
小次郎「……言っていて自分が虚しいな……」
小次郎「……そういやよく弥生とのデートの時も待ち合わせに遅刻してたっけ」
小次郎「そのたびにアイツは怒った表情もしてたな。まぁそれを見たくて遅刻してたなんて今更言えんが」
小次郎「おっと、こんなところで無駄愚痴を叩いてるぐらいならさっさと黄に会うか」
小次郎「ん?」
小次郎「………」
小次郎「(チッ)………まぁ、入るか」
(カラーン)
小次郎「黄はっと … お、いたいた。 よっ、待たせたな」
黄「待ってたネ小次郎。 私を待たせるとはいい度胸ヨ」
小次郎「すまん」
黄「ん? やけにあっさりしているネ」
小次郎「まぁな。俺は情報を聞きに来たのであって、お前の皮肉を聞きに来たわけじゃない」
黄「……素直に謝れば許してやろうとおもてたが、今の態度で決まったネ。遅刻分も料金に加算するよ」
小次郎「わぁぁぁーーーっ!私がわるうございました、どうぞその怒りをお静めください」
黄「………す、すごい態度の変化あるな」
小次郎「フッ、臨機応変と言ってくれ」
黄「節操なし」
小次郎「(グサッ)」
黄「まぁそんなことはどうでもいいとして……」
黄「さっそく情報を伝えるヨ」
小次郎「おう、そのためにも来たんだからな」
小次郎「(さて、どんな情報を入手できるかで今後の俺の動きにも影響が出てくるな)」
黄「まずは私が今日仕入れた情報だけど、今朝ナイフによる殺しが一件あったあネ」
小次郎「ナイフだと? ってことは……」
黄「残念だけど、小次郎が期待してる答えじゃない……とだけ最初に言っておくネ」
小次郎「なんだよ、その遠まわしな言い方は?」
黄「まぁ黙って聞いているよろしい。殺されたのは氷川守。小次郎、最初にテラーと思われた殺人のこと覚えてるか?」
小次郎「あ、ああ」
小次郎「(もっともアレは桐野から聞いた情報だけどな」
黄「そう、最初に殺されたのはその氷川守の娘だたネ」
小次郎「!!」
黄「どうか、なにやらきな臭い匂い漂よてくるネ」
小次郎「ああ……最初の事件と今度の事件、どう考えても無関係じゃないだろう」
黄「そう、でも最初と今度で違うところがあるヨ」
小次郎「今度の事件はテラーの可能性が低いってことか?」
黄「っていうよりもテラーの可能性はないネ。何故なら殺し方が一見素人のようにガサツすぎるのネ」
小次郎「ガサツすぎる?」
黄「そう、今度の事件……まるで苦痛を味わって行くかのように滅多刺にして殺されているヨ」
黄「最初の事件は見事なまでにこう、スパッと殺していたのに」
小次郎「わざわざ"スパッ"の部分を身体で表現しながら強調しなくてもいい」
黄「それはサービスで……ま、まぁそんなことよりも今度の殺しには前みたいな鋭利な、まさにプロという殺しじゃなかたネ」
小次郎「その殺された相手がかなりの手錬れで、抵抗したって可能性は?」
黄「抵抗?素人がプロ相手にか!?」
小次郎「やっぱそんな可能性はねえよな ……ってことは今までとは違うプロの殺しってわけか」
黄「それが妥当な線ね。そこで誰が殺したかということでおもしろいことがわかったネ」
小次郎「おもしろいこと?」
黄「そう、ちょっとこの写真を見るね」
黄は俺の眼前に2枚の写真を並べる
それぞれ男と女が写っており、おまけに両方とも一見して日本人ではないとわかる
そしてもっと特徴的なのは……
小次郎「ん、なんだこりゃ両方とも。前科者か?」
2人の写真の背景は身長を示す数字、そして着ているのは囚人服だった
そのことからこの2人が刑務所で服役していた人物だったとわかる
もっともかなり昔の写真なのだろうが
黄「男の方の名はフリッツ。 ネオ・ナチのメンバーで人を切り裂くことに快感を覚えるサディストネ」
小次郎「サディスト? ってことはこの殺し方も」
黄「そう、おそらくそいつの仕業ね。おもしろいことに2人そろって5日前から日本に来ていたのが確認されてるヨ」
小次郎「ふむ……ってことは!?」
黄「十中八苦そいつの仕業と見て間違いないネ。そしてそいつの獲物はナイフ」
小次郎「つまり今テラーとこのフリッツっていうナイフ使いが日本にいるわけだな?」
小次郎「……で、こっちの女の方は?」
黄「ああ、そっちはマローナ ……爆発物に関するプロネ」
小次郎「爆発物? ってことは下手すりゃこいつが一番危ない存在になるな」
黄「小次郎のその勘は当たってるよ。 その女は根っからの自民族崇拝者ネ。 マローナはその対象がどこにいようと、例え自分の家族が目標のそばにいようとためらわずに起爆スイッチを押すと言われているネ」
小次郎「なんだってそんな厄介なヤツまで日本に来てるんだよ!!」
黄「それこそ連中に聞くしかないネ。 私は事実という情報を小次郎に伝えているだけネ。まぁ確かにこうゾロゾロと、今日本では重要な会議があるわけでもないし……連中の目的はまだまだ情報収集中ネ」
小次郎「ああ、頼むぜ」
黄「"ブラッディ・ベル"に、フリッツ、マローナ……そしてテラー……まさに豪華なアサシン(暗殺者)の顔ぶれね」
小次郎「あ、そうだ黄!! 俺様はその"ブラッディ・ベル"っていう女スナイパーの情報も聞きたかったんだ」
黄「へっ!? そもそも何でブラッディ・ベルが女だと知ってるか?」
小次郎「話せば長くなるが、俺様はテラーもどきのほかにその血の鐘っていうスナイパーも探さなきゃならないんだよ」
黄「ちょ、ちょい待つよろし!一体どういうことネ?」
小次郎「それは俺の仕事の関係上話せないんだよ。言えるのはその女スナイパー探しているってことぐらいだ」
黄「わかた、私も情報屋としてのプライドあるネ。知りたい情報は私が自分で調べるよ」
小次郎「そうしてくれ。んで、その女スナイパーの情報が欲しいんだが」
黄「わかた ……ブラッディ・ベルとは組織内での通り名。本名はヘレン・ファルクとあるがこれも偽名くさいね。当然国籍も不明……とあるがそこが少し妙ネ」
小次郎「妙!?」
黄「そう、そもそもネオ・ナチなんていう組織はフリッツやマローナを始めとして元々生粋のゲルマン民族、ドイツ人だけで固められているのよ」
小次郎「確かに、そんな所に国籍不詳なんていうメンバー、しかも組織内じゃかなりの知名度になっているやつが所属できているんだからな」
黄「そう、だけどこの件には納得できるかもしれないことが一つあるネ!」
小次郎「?」
黄「電話でも言たが、昨夜シャルケ商事という会社が襲撃されたヨ」
小次郎「!!」
俺は黄の口から出た"シャルケ商事"で再び昨夜のことが脳裏に浮かぶ
昨夜桐野達と一緒に踏みこんだあのネオ・ナチが日本の拠点にしていた会社だ
黄「もともと日本という国では外国人は目立つ存在ね。小次郎でもそれはわかるか?」
小次郎「まぁな。珍しくはないが道を歩いてて外人がいるとふと視線がそっちに行ってしまう……なんてこともあるしな」
黄「そう、そんなところに隠れ蓑のとはいえネオ・ナチの拠点が造られたヨ」
小次郎「ああ、確かに責任者はドイツ系だったみたいだけど……」
黄「そう、あそこで働く従業員や警備員などはドイツ人の他にも国際色に富んでいるね」
小次郎「だがドイツ系以外……いやドイツ系だって知らないのかもしれないぜ。自分達の実態がその、なにか得体の知れないことをやっているなんてな」
黄「そう、それネ!ネオ・ナチの連中の目的。こればっかりは今の所謎ネ。わかているのは今この日本を舞台に動き出しているという事ネ」
小次郎「ああ、そしてそれに"テラー"の関わりがある……」
黄「それはまだ断定できないネ。 何しろテラーは3年前の事件で事実上消滅しているはずヨ。それにもし今更現れたとしてもその真意もわからないネ」
小次郎「黄、今回のこのネオ・ナチの騒動…….その、エルディアって国は絡んでいるのか?」
俺はもっとも聞きたかったこのことを尋ねる。そして俺の勘ではこの答えは"yes"、つまりエルディという国がどこかしらで絡んでいる
そう、ひしひしと俺の勘に訴えている
黄「これも確証はないよ。確かにネオ・ナチの支部がエルディアにあるという事実はあるし、ブラッディ・ベルが何度かエルディアという国に現れているという情報もあるネ」
小次郎「そうか、ならネオ・ナチとエルディアとの接点に関する情報も欲しい。その情報料は別途請求してくれてかまわない」
黄「了解ネ ……じゃあ今日私が伝えるべき情報はこれだけ。」
小次郎「ああ、ご苦労だったな」
小次郎「ああ、それとな。 もう一つ新たに調べて欲しいやつがいるんだ」
黄「誰か?」
小次郎「今は写真はないが、この人物だ」
黄「女か… これ何者?」
小次郎「それがわかっていればお前には頼まん。 それでその人物に関して調べて欲しいのは経歴と出入国管理の記録だ」
黄「へ? それだけか?」
小次郎「ああ簡単だろ、お前なら」
黄「それはもちろんよ……でもその程度のことなら小次郎の相棒にでもできる違うか?」
小次郎「こっちにも色々と事情があるんだよ」
黄「ふ〜ん……まぁ問題ないね…… それより小次郎?」
小次郎「ん?」
黄「小次郎も変わった友人を持ているみたいだな」
小次郎「…… 気付いてたのか?」
黄「そりゃー、小次郎が店に入ってきて遅れてあんな連中が入ってきたんじゃあ私でなくとも気付くね」
黄はそう言いながら持っていたグラスを俺の前にかざす。そのグラスが鏡のように俺の背後の光景を映し出している
そしてそこには見事なまでにこのバーにはミスマッチな輩が4人座っている
全員外人、いや日本人らしきヤツも一人いる。だがだからこそ余計にミスマッチな光景だ
そして全員懐の膨らみ具合から銃を持っているとも予測ができる
小次郎「念のために聞くが、お前の知り合いじゃあないんだな?」
黄「はっ、私のか? 何故、why!?」
小次郎「とぼけるなよ。お前のそのあくどさから色々と恨みをかっているんじゃないかとな」
黄「ああ、そういう意味か ……もちろんないといえば嘘になる思うけどそのへんは大丈夫ネ。私に危害を加えようとした連中はみんな鮫の餌にされてるヨ」
小次郎「………」
黄「おもしろくなかたか?」
小次郎「まぁな。 で、この状況をどうするんだ?」
黄「どうする…言われてもあれ全部小次郎のお客さんで私のお客ではないヨ」
小次郎「ああ、だからこそどうするかと聞いてるんだよ」
黄「?」
小次郎「つまりな、この後あの全員が俺だけに用がある可能性は低いってことだよ」
黄「ああ、そういうことネ。もちろん大丈夫よ」
小次郎「ほぉ〜、たいした自信だな」
黄「なに言うてるか、小次郎!アナタが私をガードする、これあちゃりまえ……当たり前ネ!」
小次郎「ちっ、ガード料を請求するぞ!」
黄「なに言うか!かよわい女性を無料で守る。これ男の役目ネ♪」
小次郎「楽しそうにいうな!それとさらりと無料でとも言うな!!」
俺はそう言い放つもこの時丸腰だったことを後悔した
だが、とりあえずこの窮地を脱しなければならない
余計なものも引きつれて……だ
20:20 -???-
小次郎「よし、とりあえず後ろの連中をまくぞ」
黄「まく!? それよりも1人でも捕まえて情報を聞き出すというのはどうネ?」
小次郎「ああ、それも考えたが相手は4人。しかも銃まで持っていやがる。それに比べて……俺様は今日丸腰だ」
黄「それなら心配なく。私が持ってるね」
そう言うと黄はガサゴソとバッグの中から携帯電話を取り出した
当然なにかのギャグだと俺は思わずガクッとなる
小次郎「あのなぁ〜……携帯電話の電波でヤツラを倒すってでもいうのか?」
黄「まさか。それに私は銃を持っているといったネ」
俺は頭が痛くなるのを堪えながら「だから、それのどこが銃だ!」と言おうとした瞬間、俺の目の前で黄の携帯電話の一部が割れ、そこから銃弾が覗かせている
黄「なっ、いうた通りだたネ」
小次郎「お、おま!!」
黄「オマ(ピィィィィーーーーー)!?」
小次郎「そうだ見せろ……って、違う!お前それ改造銃だろ!?」
黄「そう、最近のはよくできているネ」
俺も噂では何度か改造銃のことを聞いたことがある。
ボールペンやカメラ、ポケベル。最近では黄の持っているような携帯電話さえも改造して一見して銃だなどとは気付かない代物だ
ただ改造銃には欠点がある……
小次郎「チッ、おい黄。それは何発まで撃てるんだ?」
黄「2発が限度よ」
小次郎「2発か………ってことは運良くそれでヤツラを行動不能にさせても、残りの2人はそれ以外でやらなけりゃならんな」
黄「頼りにしてるね、小・次・郎♪」
小次郎「……頭が痛い」
................ to be continued
小次郎「おお、作者! 前話からここまで書くのが早いぞ」
ぱら「ふふふ、"愛"だよ"愛"」
杏子「"I" ?」
ぱら「……それはギャグにもなってないぞ……」
杏子「シクシク」
小次郎「まぁー桐野は放っておくとしても、なかなかに早い展開だな」
ぱら「うむ、ちょっと時間的余裕ができたことがまず第一の要因だな」
小次郎「第一の……というからには他にもあるんだな?」
ぱら「ああ、挙げればザッと69万7千24個あるぞ」
小次郎「よし、全て言え!!」
ぱら「すんません、私が悪かったです ……要因は10個もないです」
小次郎「フッ、普段から弥生や氷室をからかっているこの俺様をからかうなんて」
まりな「そっ、10年早いのよ♪」
小次郎「どわわわわっ」
ぱら「あ、法条さん!!」
まりな「はろはろ〜♪」
小次郎「な、なんでお前がここにいるんだよ。 お前はこの連載じゃあチョイ役じゃないか」
まりな「誰がチョイ役よ誰が! 私にだってもうじき出番があるはずなのよ。真打は遅れて登場するって言うのが永遠のパターンじゃない」
小次郎「そうなのか?」
ぱら「え、そんな予定は……」
まりな「そうよね?」
(チャキッ)
ぱら「あ〜、そういえばまりなさんを出す予定があったな〜〜〜〜」
小次郎「………おい法条……それってれっきとした脅迫という行為だぜ」
まりな「私に限っては超法規的処置よ ……ねっ」
(チャキッ)
ぱら「あー、そうですそうです! なんでもいいから、だから銃口をこっちに向けないで!! っていうか撃たないいでーー!」
まりな「え?」
(パンッ)
まりな「あ、やっだー。安全装置Offにしたままだったわ。」
ぱら「あが ………あががかかかっ……」
小次郎「(今日ばかりは作者に同情するな)」
まりな「ちゃんちゃん♪」
小次郎達に迫る者の正体とは
一方小次郎と別れた杏子は葵と共に
桂木探偵事務所へと向う
そこで2人のもとに更なる事実が!!
次回 杏子編W!
次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪