杏子編W




17:30 -セントラルアベニュー-


杏子「ふ〜、それにしてもすんごい情報だったわね」

水見「…ええ」

杏子「まさかテラーという名前にあんなに様々な秘密があったなんて」

水見「……ええ」

杏子「でもこれからの捜査もまた難しくなるわね」

水見「………ええ」

杏子「…………」

水見「………」

杏子「私って天才よね♪」

水見「……ええ、天災よ」

杏子「ちょっと、さっきから何考えているのよ!」

水見「……」

杏子「なによ、人のことジッと見て」

水見「杏子、あなたは疑問に思わないの?」

杏子「疑問?」

水見「桂木源三郎という人物よ」

杏子「ああ、元々テラーだっていう旧エルディア情報部の人間よね?」

水見「そう、彼(小次郎)の話ではエルディアにおいてもかなり重要な人物だった。だけど彼はそこを抜け出した」

杏子「……」

水見「その人物って一体どんな人だったのかしら?」

杏子「それは〜〜……やっぱしその人と直接に会った人物じゃなきゃ」

水見「直接に会った人物!?」

杏子「!?」

水見「そうか……それも手ね ……っていうか行ってみる価値はあるわね」

杏子「行くって ……どこへ?」

水見「その人物が創った桂木探偵事務所よ。 幸いにもここからそう遠くもないわ」

杏子「ちょっと、行ってどうするの?」

水見「別に。 ただこのまま何もしないよりはなにか手がかりを得られるかもしれない行動をするほうがいいでしょ」

杏子「た、確かに……」

水見「それに彼が元々勤めていた事務所でもあるのよ」

杏子「え、それって天城さんが!?」

水見「ええ、昨夜彼の資料をちょっとね。 彼ってああ見えてあの業界じゃ異端視されているけどそれなりに有能らしいわ」

杏子「へ〜、氷室さんならともかく天城さんが ……そういえばまりな先輩や本部長も一目置いてたっけ」

水見「さぁ、そうと決まったら行くわよ」




17:45 -桂木探偵事務所-


杏子「ここがその……?」

水見「ええ、その桂木探偵事務所よ」

杏子「へぇ〜〜〜〜」

水見「………」

杏子「なんかあの天城さんが勤めてたっていうからもっと奇抜な事務所を想像してたんだけど……」

水見「………同感ね」




******************


小次郎「へっくしょん」

黄「……風邪か小次郎?」

小次郎「ああ、そうかも……なにしろ俺様の事務所の当たりは夜冷えるからな」

黄「でも確かこんな諺があたな」

小次郎「!?」

黄「貧乏は風邪をひく!」

小次郎「…………」


※正しくは『馬鹿は風邪をひかない』です


*****************




    (コンコン)

女所員「は〜い」

水見「失礼、私達は警視庁の者です」

女所員「警察の方 ……ですか?」

水見「心配しないでも結構です。我々は所長の身辺を窺っているのではなく、彼女から2、3伺いたいことがあるんです」

女所員「は、はぁーーー」

杏子「(どうしたのかしら? なんだか落ちつかないみたいだけど)」

水見「失礼ですがこちらの所長はおられますか?」

女所員「そ、それが ……所長は昼前から外出して行ったきりまだ戻ってないんです」

水見「戻ってない?」

女所員「はい、それどころか未だに連絡さえないんです。 今までこんなことはなかったのに」

水見「どこかに行くとおっしゃられましたか?」

女所員「それが午前中にお客さまが見えられて ……それで少し出掛けるといってそのお客様と一緒に……」

水見「客?」

女所員「ええ、外国の方で。 ああ、でも日系人だと」

杏子「(日系の外国人!?)」

水見「その方は所長のお知り合いなのですか?」

女所員「いえ、少なくとも新規のお客様でした。 名刺をお預かりしていますので ……ご覧になられますか?」

水見「拝見させてもらってよろしいですか?」

女所員「あ、はい。 少々お待ちください」

杏子「で、アナタ(男所員)は何してるの?」

男所員「みればわかるでしょ! コピーですよコピー!!」

杏子「そんなに?」

男所員「所長が帰ってくるまでコピーしてろと ……だから所長が帰ってくるまで僕はここを動けないんですよ」

杏子「た、大変ですね……」

杏子「(…それでも程度というものがあると思うけど)」


女所員「お待たせしました。 これがその方の名刺です」

水見「拝見します ……アギヴ・川口。確かに日系人の方のようですね 勤め先は……… !! 」

杏子「(葵の表情が変わった!? しかも険しくなってるわ)」

杏子「葵、どうしたの?」

水見「ここを見て」

杏子「えっと〜、勤務先ね。 え〜とシャルケ商事 ……シャルケ? どこかで聞いたような〜〜」

杏子「………」

杏子「あああぁぁぁーーーーーーーーーっっ!!」

女所員「な、なんですか!?」

男所員「急に大きな声出さないでください! コピーする手元が狂うじゃないですか」

水見「ご、ごめんなさい。 ちょっと、なに騒いでるのよ」

杏子「ご、ごめーん。 だってこの会社って」

水見「わかってるわよ。 さ、それを返して」

杏子「あ、うん…」

水見「どうもありがとうございます。 それでは後日また伺いますので戻られましたら来訪の件だけご報告お願いします」

女所員「は、はぁ……」




水見「さって……話がややこしくなってきたわね」

杏子「シャルケ商事って昨夜のところよね? そこの関係者がこの事務所を訪れた」

水見「ネオ・ナチとエルディアの暗部との間になにかしらの関わりがあるとは思ってたけど……」

水見「確か彼の話では今のここの所長の父親が旧エルディアの情報員だったわね」

杏子「ええ」

水見「そしてその娘のもとにネオ・ナチの男が現れた」

杏子「でも待って。来たのは日系人だったって……ネオ・ナチなら純粋なドイツ系になるんじゃないの?」

水見「それも…あるわね。 あなた珍しく頭が回るじゃない」

杏子「ちょっとそれどういう意味よ」

水見「そうなるとアギブって男はネオ・ナチとは関係ない普通の職員 ……それともシャルケ商事自体にすでにエルディアも関わっていた」

杏子「あ、それなら後者の方が納得できるわね」

水見「そうね。 とりあえず本部長の所へ報告に戻りましょう」

杏子「ええ」




18:50  内閣調査室本部


杏子「ただいま帰りました〜」

水見「……」

甲野「おう、お帰りー。どうだったね? 彼から聞き出すことは聞き出せたかい?」

水見「ええ、まだなにか隠していそうな感じでしたけど」

甲野「そいつはご苦労さん。 さて、こっちは昼間の杏子君の狙撃事件について報告しておこう」

杏子「あ、わかったんですか?」

甲野「そりゃね〜、もう例え事件の発生は防げなくても、後始末はしっかりするんだよ我々の組織というものは」

杏子「うっ……なんか嫌な表現ですねそれ」

甲野「そうかーい? まぁ杏子君は狙われた張本人だから無理もないしね〜」

水見「で、本部長。狙撃に使われたという銃は?」

甲野「ああ、それはモーゼルSR93。ドイツ軍に正式採用銃にはされてなくてもその精度は現地でも折り紙付きの一品だよ」

水見「ええっと、確か300m射程なら確実に標的を捉えるとか」

甲野「その通り。だがその狙撃場所はどうやら杏子君達の位置から500m近く離れていた!」

水見「つまりよっぽどの腕を持った相手による狙撃 ……例のネオ・ナチ女の可能性がありますか?」

甲野「こればっかりはまだなんとも言えん。第一なんでネオ・ナチがこの日本に来て、しかも杏子君を狙うかだ」

水見「………あんた、なんか連中の恨みかうようなことしたんじゃないの?」

杏子「え、まさか!」

甲野「君、どこかでその女スナイパーの恋人でも誘惑したんじゃないだろうね〜」

杏子「ほっ、本部長!何を言い出すんですか!!」

水見「慌てて否定する所が怪しいわ」

杏子「ちょ。 葵まで〜〜」

甲野「まぁ冗談はそれぐらいにしてだ ……君達2人にはこれからの捜査に当たりボディーアーマーを着用してもらう」

杏子「(ボディーアーマー!? ……あ、防弾チョッキね)」

水見「杏子の場合はわかりますけど、なんで私まで?」

甲野「杏子君が狙われる以上コンビを組んでいる葵君。君も狙われる可能性があるからだ」

水見「つまり。もしもの時には私に杏子の弾除けになれ ……というわけですか」

杏子「え!?」

甲野「それは君の判断に任せる。だが私はその質問に対してyesともnoとも言わないでおこう」

水見「………わかりました、これからの捜査に当たっては防弾チョッキ着用で当たります」

甲野「うむ。もし二人の手に余るようならいつでも言ってくれたまえ。護衛を手配させよう」

杏子「そ、そんなことまでしてくれるんですか?」

甲野「上からの命令だよ。杏子君、君はもう少し自分の立場を理解したまえ」

杏子「私の立場?」

甲野「そう、君はエルディアでの活躍により世界を救った人間だ。そしてその件からまだ1年も経っていない。そんな君を現場復帰早々に殉職でもされてみたまえ……どんな事態が想像できるかね?」

杏子「えっと〜〜〜……」

甲野「マスコミの格好のネタにされてしまうんだよ。ただでさえおいそれと公にできない我々の立場が明るみに出てしまうと、体面が悪くなることこのうえないんだよ」

杏子「そ、そんな!じゃあ私の身が心配なんじゃなくて、内調の体面を心配してるんですか!!?」

甲野「そうなるね〜」

杏子「そんな、ひどっ」

水見「まったく、なんのために半年以上もあなたに内勤の辞令がくだったかわからないの?」

杏子「うう〜〜〜」

甲野「ああ、誤解してくれないでくれたまえ。僕は君の上司としてもちろん君の身は心配しているよ。できることなら君には今回の件を外れてもらいたいと思っているんだ」

杏子「えっ!?」

甲野「当たり前でしょう。君の捜査官としての能力は上がっているかもしれないけど、こと格闘や射撃……危機回避に関しては君は、その言いにくいけど……」

水見「まっ、ボーダーラインすれすれというところでしょうね」

杏子「ちょっと葵! いくらなんでも私はそこまで低くは」

甲野「いや、葵くんの言うとおりなんだけどね〜」

杏子「ほ、本部長〜〜〜〜」

甲野「おや、そんなに泣くほど哀しかったかい?僕はてっきり杏子君はすでに自覚していると思ったけどね〜」

杏子「面と向って言われれば私だって傷つきます!」

水見「そんなあなたと組まされている私もね」

杏子「っぐ」

甲野「まぁ、そんなわけで君達の身の守るためのバックアップ体制を僕のほうでも整えつつあると言うわけだ」

水見「了解です。それと杏子と一緒にいた少年には?」

甲野「ああ〜、なんていったけ彼? えっと〜江比(エコロ)くんだっけ?」

杏子「江国です、エ・ク・ニ!! そんな環境に優しいみたいな名前じゃありません!!」

甲野「ああ〜、そうだったね。一応彼にも護衛の手配をしておいたよ。彼が狙われたという可能性もあるわけだからね〜。 何しろ君ほどではないが、彼もあの事件解決への功労者だったわけだから一応の有名人だしね」

杏子「(そうか、私じゃなく雄二くんが狙われた可能性もあるのね)」

甲野「まぁー極力彼の生活を守るわけにも彼には通達せずに極秘に行なっているけどね」

杏子「そこまでしてもらって感謝します」

甲野「いいっていいって。僕の部下の恩人でもあるわけだしね、彼は」

甲野「……ってわけで明日からの捜査には2人とも十分に注意して当たってくれたまえ」

杏子「わかりました」

杏子「(明日からまた忙しくなりそうね)」




................ to be continued




水見「………」

杏子「………」

水見「………」

杏子「………」

水見「………」

杏子「………」

水見「………」

杏子「………」

水見「………」

杏子「………」

水見「……早いわね…」

杏子「早い…わね…」

水見「いったい作者(ぱら)の身になにが起こったのかしら?」

杏子「う〜〜ん、ちょっとわからないわね」

杏子「それより葵!あなたすごいじゃない!!」

水見「はっ!? ……なにが?」

杏子「キャラクター投票でなんと現在(3/16現在)1位よ1位!!」

水見「うぞっ!?」

杏子「私なんて主役なのに4位なのよ……」(泣)

水見「う、なんでそんな結果になってるのかしら」

杏子「なんでも読者には"影の"主役と思われているようね」

水見「なんか嫌ねそれ。 悪役みたいで」

杏子「読者のみなさーん! 私にも清き一票をお願いします〜〜」

水見「こら、同情さそって組織票を得ようとするんじゃないの!」

杏子「あ、ばれる? ……やっぱ」

水見「こんな見え見えの手段を取るやつが主役だなんて……」

杏子「『あ〜、私のキャリアが!!』でしょ?」

水見「私のセリフまでとらないでよ!」

杏子「ちゃんちゃん♪」




忍び寄る影
杏子は果たしてどう対処するのか!?
そしてすでに謎の刺客を迎え撃つ小次郎に果たして勝機はあるのか!!
次回 小次郎編Y!

次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪


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