小次郎編Z




小次郎「そらよ!」


俺は着ていたジャケットを素早く脱ぐと、それをフリッツに向けて投げ放つ


フリッツ「くだらん! こんなものが目晦ましになるかっ!」

小次郎「そいつはどうかな」

フリッツ「なっ!?」


投げられたジャケットを一刀両断にした後にフリッツが目にしたのは改造銃を構えた俺の姿だった


小次郎「食らいな」


    (パンッ)


フリッツ「ぐわぁぁーーーっ…」

小次郎「(やったか!?)」


俺の銃撃を食らったはずのフリッツに目を向ける


フリッツ「クッ……」

小次郎「!!」

小次郎「(おいおい、たのむからせめて寝ていてくれよな……)」


俺はそう願いながら怒りの形相で俺のほうを向いているフリッツを観る

フリッツは咄嗟に身体を捻って急所に当たるのを避けたようだ

もっとも俺のほうも殺すことを目的としたわけではなく、相手の動きを封じるべく急所は外れるように狙ってはいた

フリッツも致命傷は避けたとはいえ、俺の左腕に受けており、腕から流れ出た血がすでに足元にまで滴り血溜りを作っている


フリッツ「フフフ、やってくれたじゃないか」

フリッツ「まさかそんな玩具(改造銃)を持っているとは思わなかった。 ………今のはさすがに危なかった」

小次郎「(……やせ我慢しやがって……)」

小次郎「ちっ……さすがに一組織の殺し屋だけはあるな」

フリッツ「………黙れ…」

小次郎「!?」

フリッツ「もう少し楽しんでから殺そうと思ったが、それももう………止めだっ!!」

小次郎「ぐぁっ!」


フリッツの突然の一撃は俺の胸元を掠めた

さっきまでは弄ぶような攻撃だったが今は明かに殺すことだけを目的としている

そのために攻撃の鋭さがさっきまでと違う

俺にとって幸いだったのは、フリッツが左腕を使えないことで若干スピードが落ちることだった


小次郎「(……それにどうやら今のでさっきまで澄ましていたような態度を取るだけの余裕はなくなったようだな だが……)」


俺は斬りつけられた右腕に視線を落とす

右腕からは依然出血が続き、さっきは気にならなかったが今は激痛が襲ってくる


小次郎「(このまま倒れることができればいいんだがな〜……)」

小次郎「(しかし俺の方の出血も依然止まりそうもないな これだけ血が出れば身体が軽く感じられてもいいのに……やけに重たく感じられやがる)」

小次郎「(とりあえず銃に残された弾は後一発 ………これでやつを仕留められなければ俺に勝機はない)」

小次郎「(かといってさっきのような奇策はもう通用しそうにないし、相手も警戒しているだろう)」

小次郎「(それに、逃げようかといって逃げられる状況でもない)」


俺は出血とこの危機的状況のため珍しく弱気になっていると自分でも自覚できた

そのためそれが次の俺の行動に出てしまった

フリッツは傷つきながらもその怒りのままに俺にナイフを振りかざしてくる


フリッツ「ヒャハハハ 死ね、死ねっ!!」

小次郎「ちっ……野郎!!」

フリッツ「フンッ!!」

   (バシッ)

小次郎「しまっ………銃が!!」

フリッツ「ふ……ふはははは! 貴様のような劣等民族に俺が……優劣民族であるこの俺が遅れをとるはずはない!!」


フリッツは怒りで興奮しているせいか目はすでに血走り、その言動も正気とは俺には思えない

本調子の俺なら勝機もあるだろうが、あいにくさっきのような奇策に出るだけの余裕は今の俺にはない


小次郎「いや………」

小次郎「(最近こういう場面に出くわしていなかったせいだろうな)」

小次郎「(………俺にしちゃらしくない。 弥生や氷室が今の俺のこんな姿を観たら多分ぶん殴るだろうな……)」

小次郎「あの2人の罵倒を聞くためにもここは足掻くか……」


俺は武器のない状態ながらもフリッツに対して身構える

フリッツも俺が武器のない状態でまだ諦めていないのを悟ったのか警戒の色を見せる


フリッツ「…………」

小次郎「(……来るな…)」

フリッツ「ヒャウッ!!」

小次郎「(えーい、ままよ!!)」

   (グサッ)

フリッツ「なにっ!? き、貴様……傷ついた腕で俺のナイフを受けとめただと!?」

小次郎「つぅーっ…… 突いてきたのが間違いだったな。 後で治療費の方もお前の組織に請求しといてやるよっ!!」

フリッツ「ば、馬鹿な!?」

小次郎「寝てなっ!」

   (バキッ)

フリッツ「ぐばあぁぁぁっ………」


俺の蹴りがフリッツの顔面を捉え、フリッツはそのまま地面に横たわる

そして俺はフリッツの手元に落ちたナイフをとりあえず蹴飛ばす


小次郎「はぁー、はぁー、はぁー………くっ……」

小次郎「……いくら反撃のためとはいえ腕で受けたのは失敗だったな。下手すりゃ切り落とされてたとこだ」

小次郎「だがこれでネオ・ナチの殺し屋を一人撃退できたわけか………」

小次郎「くっ………やばいな、さすがに出血が多くて気が遠くなってきた ………黄は…」


俺は辺りを見渡すが黄の姿がどこにも見当たらない


小次郎「………あ、あの野郎…自分だけいつのまにか逃げやがった」


黄が逃げたことにぼやくが、不思議なことに俺は黄が逃げたことに対して怒りが湧いてはこなかった

元々黄を助ける義理も、黄が俺を助ける義理もなかったからかもしれない

俺達はあくまでも探偵と情報屋という間柄で友人じゃあない

黄もそれがわかっていたから逃げる好機をうかがい逃げたのだろう

ただ今の俺の状態で逃げられたのは正直痛かった


小次郎「ちっ……… 足に力が……―」

フリッツ「はぁーーーっ!!」

小次郎「うおっ」


突如俺は足払いをかけられその場に転倒する

そしてすぐさまフリッツは俺に馬乗りになる格好でのしかかる

フリッツの顔面からは相変わらず流血が続いている。どうやら鼻の骨が折れているようだ


フリッツ「はぁーはぁー………と、止めを刺さなかったのは貴様の落ち度だったな」

小次郎「(………まったくだ)」

フリッツ「俺をここまで追い詰めたのは貴様が初めてだったよ……敬意を表してこのまま絞め殺してやる」

小次郎「……ぐぁっ」


左腕が傷ついてるとはいえ両腕で俺の首を締めてくる力は尋常じゃない

俺もあがこうと締めている手を外そうとするが、傷ついた右腕では力が入らず左腕だけではとても外せる状況じゃなかった



小次郎「(ぐっ……こ、こいつはマジでヤバイ…)」

小次郎「(このままじゃあマジで締め殺されちまう……)」

小次郎「(ちっ、俺様としたことがどじったな ………今日おやっさんに約束したばっかでこれかよ………)」



今日の墓参りのことが俺の脳裏に浮かび、同時に弥生の顔も浮かび上がる


小次郎「(そういや弥生とはまだちゃんと話していないままだったな………)」

小次郎「(俺がいなくなったらアイツはやはり泣くんだろうか……)」

小次郎「(俺がいてもいなくても泣かせるなんてな………)」



俺は絞められて薄れゆく意識の中でボンヤリとそんなことを考えていた

そして視界には目の前にいるフリッツさえ朦朧とする意識のためはっきりと見定められない

おまけにその背後に誰か立っているかのような幻覚まで見え始めた


フリッツ「死…………―!?」

   (ガシッ)

フリッツ「なっ!?」

…「はろはろ〜〜」

小次郎「!?」

…「悪いわね〜、そこにいるのはそんなんでも私の親友の大切な男(ひと)なの。だからあんたみたいなやつに殺させるわけにはいかないのよ」

フリッツ「き、貴様―」

…「よっ、せいっ!!」

   (ガツッ)

フリッツ「グゴォッ ……お、おのれ―」

…「Tschuβ♪(チュッス)」(訳:またね♪)

フリッツ「!!」

   (ガゴッ)

フリッツ「グッ………―」


俺は一瞬何が起こったのか分からなかった

絶体絶命のピンチを救ってくれたこの女。意識が朦朧としているためか目がかすむが、そいつの声だけは耳に届いている

だが、なぜこいつがここにいるのか。なぜこいつが………


…「あらあら、それにしてもけっこうやられちゃってるわね……ちょっと会わない間に腕が落ちたんじゃないのあなた?」

小次郎「………ふっ、返す言葉もないな ………けどおかげで助かったぜ」

…「まっ、無事みたいだからいいけどね」


俺を救った人物、それはこんな状況でなければこの地球上で最も会いたくはない人物

そう、元内閣調査室一級捜査官にして現在は教官という地位にある
法条まりなでだった

……それを知ると同時に俺は安堵感からか、向こうで法条が何事か言っているようだが俺の耳には入らずそのまま気を失った




…………………… to be continued




まりな「パンンパカパーン! とうとうこのまりな様が登場よ!」

小次郎「(本当に出て来やがった……)」

杏子「(ああ、至福の一時が……)」

ぱら「(ふぅー、これでなんとか一安心だ)」

まりな「あら、どうしたのよあんたたち?」

小次郎「な、なんでもないぞ俺さまは! な、なぁ桐野?」

杏子「え? え、ええそうですよ! なんにも邪なことなんて考えてませんよ」

ぱら「そうそう、まりなの登場で主人公達の影が薄くなるなんてひとっことも言ってないからな!!」

小次郎「ば、バカ! それを言ったら!!」

杏子「ひぃ〜、まりな先輩の目が怖いです〜〜〜」

まりな「あ〜んたたちね〜〜……私を一体なんだと思ってるのよ」

ぱら「ま、まぁまぁ!こうしてせっかく出てきたんだから。まりなの登場でやっとEVEらしくもなってきたんだし」

まりな「……それもそうね。でも作者、あんた書くの速かったわね」

ぱら「フッ、それもこれもアンケートの効果だ」

まりな「へ? なにそれ」

ぱら「知りたい??」

まりな「うんうん」

ぱら「ひ・み・つ♪」

    (バキッ)

ぱら「イテッ………殴ったね!親父にもぶたれたことないのに!!」

まりな「あんたがくだらないこと言ってるからでしょ!! それにその台詞、EVEじゃないじゃないのよ」

ぱら「いや〜、なんか言ってみたくって」(あははは)

まりな「ったく。まぁこうして真打が現れたからにはこの小説も盛り上がっていくわよ!!」

ぱら「ほほぉ〜、それはなにゆえ!?」

まりな「そりゃこのまりな様が登場したからよ」

ぱら「うっ……なんか滅茶苦茶言ってるようでそこはかとなく説得力がある」

まりな「でしょでしょ? だから私を真の主役ってことでこの話を進めましょうよ」

ぱら「え”っ!? ………主役で?」

まりな「もち♪」

ぱら「いや〜、いくらまりなさんでもそれはちょっと無理なんじゃないかな〜と」

まりな「大丈夫よ! 為せば成るって言うじゃない」

杏子「うう……この小説の主人公は私なのに……(シクシク)」

小次郎「(俺もだよ!!)」

まりな「ちゃんちゃん♪」



とうとう真打あらわる!
まりなの登場によって加速する
まりなとその仲間達vsネオ・ナチ(違)
だがその戦いに三つ巴の展開か!?
次回テラー編T!!

次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪


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EVE Endless Rhapsody