テラー編T





22:10 某所


フリッツ「はぁ、はぁ、はぁ………くっ、あいつらめ……」

フリッツ「この俺を倒しておきながらとどめを刺さなかったことを後で死ぬほど後悔させてやる」

フリッツ「だが今は同志達の元へ戻るのが先決だ……」

フリッツ「それにしても………」

フリッツ「なんだこの感覚は……誰かが俺を見つめている視線を感じる」

フリッツ「気のせいか……?」


    (パチパチパチパチ)


フリッツ「なに!?」

…「フフフ、見せてもらいましたよ」

フリッツ「誰だ!!」

…「クスクス、あなたほどの人があんなに苦戦するなんて……天城小次郎。確かに面白い人物ですね」

フリッツ「………誰だかは知らんがサッサと姿を見せたらどうだ! それとも俺様に姿を見せるのは怖いか!!」

…「嫌だなぁ〜、フリッツさん……僕はさっきからあなたの後ろにいるじゃないですか」

フリッツ「なに!?」

    (クルッ)

…「ばぁ」

フリッツ「うおっ!」

…「なーんちゃって……こうも簡単に騙されるんですね」

フリッツ「き、貴様は!!」

フリッツ「(……コイツ、いつのまに俺の前に……さっきは確かに俺の背後から声がしたのに…)」

…「お久しぶりですね、フリッツさん」

フリッツ「フン、久しぶりだと? 貴様とはすでに昨日……―」

フリッツ「はっ、まさか!!」

…「いやだなぁ〜、今頃気付いたんですか? まぁもっともみんな同じ姿をしているから気付かないんでしょうけどね」

フリッツ「き、貴様……セ、セカンドか?」

セカンド「そうですよ、お久しぶりです。その口調からすると他のメンバーも日本に来ているようですね」

フリッツ「(くっ、こいつとここで遭うのは計算外だった…)」

セカンド「なにをそんなに警戒してるんですか? 嫌だなぁ〜、僕はあなたと争うつもりはないですよ」

フリッツ「フン、ヘラヘラとよく喋るやつだ」

セカンド「ははは、確かに僕は他の連中と比べるとおしゃべりな方ですね」

フリッツ「(……こいつ、なにを考えている……)」

セカンド「おっと、僕が聞きたいのはですね……あの天城小次郎に関してなんですよ」

フリッツ「………」

セカンド「いかがでしたか彼の実力は? まぁあなたのその表情が全てを語っていますけどね」

フリッツ「黙れ!! さっきは俺が油断していただけだ。それにあの女さえ現れなければ俺は確実にあの男を殺していた」

セカンド「あ、そうそう!彼女は一体何者です? ダメージを受けていたとはいえあなたをたった二発で倒すなんて只者じゃないですよ」

フリッツ「あ、あれも俺が油断していただけだ! それに天城小次郎に受けたダメージがなければアイツも一緒に俺が殺していた」

セカンド「へ〜、獅子を兎を狩るにも全力を尽くす……と言いますけどあなたは端から油断していたわけですか」

フリッツ「グッ……」

セカンド「なるほど、なかなか面白そうな人物がいるわけですねここには……彼女の言っていた通りだ」

フリッツ「彼女だと!?」

セカンド「フフ……」

フリッツ「貴様……組織を抜け出してこんな極東の国にまで来て何をしようとしている!!」

セカンド「それこそあなたには知る必要はないと思いますけど」

フリッツ「何!?」

セカンド「僕は他のメンバーとは違って自分の意志を持っている。命ぜられるままに動く連中とは違う」

フリッツ「フン、レジェクト(不良品)が……」

セカンド「……!!」

フリッツ「ハハハハ、さすがにこの言葉を聞くと貴様もその表情を歪めるのだな!! そうさ、お前はプロジェクト・ネクストが生み出した欠陥品だ!! 我らが偉大なるゲルマン民族には受け入れられない存在よ」

セカンド「………気が変わりました…」

フリッツ「……なんだと?」

セカンド「考えてみれば今の僕の力試しにアナタはちょうどいい……退屈凌ぎにもね」

    (スルッ)

セカンド「フリッツ、一つゲームをしませんか?」

フリッツ「ゲーム……だと?」

セカンド「ええ、ハンティング(狩り)ですよ。今から10分後……僕はあなたを狩ります」

フリッツ「!!」

セカンド「ですからどこへとなく逃げて結構です。逃げきればあなたの勝ちですから」

フリッツ「フ、フン……いなくなってから僅かの期間でそこまで増長したか……」

セカンド「フフフ」

フリッツ「ふざけるなよ! いくら手傷を負っているとはいえ俺はネオ・ナチ最高のナイフ使いだ!! いかにテラーのコードネームを持つお前でも俺にかなうわけがない!!」

    (バッ)


フリッツは懐からナイフを取り出し両腕に構える

そして右腕に構えたほうをフリッツ目掛けて放る


セカンド「なんの真似です!!」


セカンドは放られたそれを難なく払い落とす

だがそれこそフリッツの狙いだった


フリッツ「かかったな!! 増長したお前など所詮は俺の敵ではないっ!」

フリッツ「死ねぇーーーーーーーっ!!」












セカンド「………僕は決して増長していたわけではありませんよ。あなたの実力、それにダメージ……そして僕の実力とを比較して冷静に分析した故です」

セカンド「つまりあなた程度には負けないという絶対の自信であって増長ではない……たとえ不意をつかれたといってもね」

セカンド「………でも…もう聞こえないみたいですけどね」


セカンドが見つめる先には首の皮一枚で繋がっているフリッツの死体が転がっている

フリッツのその死に顔は未だ己の勝利を確信していたときのままで、おそらく自分が死んだことにさえ気付かなかったかもしれない

そのことからもフリッツは即死だったであろうことは明白である


セカンド「あ、そうだ………確か僕はフリッツさんを殺すつもりはなかったんだよな……つまりこのゲーム(殺し)は始めた時点で僕の負けだったのか……」

セカンド「あ〜あ、ゲームには色々とルールがあって面倒だなぁ〜」

セカンド「でも……天城小次郎と、あの彼女なら………面白いゲームができるかもね」

セカンド「そういやフリッツさんが来ているってことは……あの老人も来ているのかな? ……まぁ、いいやどうでも」

セカンド「……さてと、行くかな」


セカンドはそう言い残すとまるで何事もなかったかのようにその場を後にする

残されたそこには……ネオ・ナチのナイフ使いフリッツの死骸、そしてその傍らには1本のナイフが残されていた










同日夕刻 新東京国際空港



    (ザワザワザワ)


『……お客さまにご連絡します。JAK58便は搭乗手続きをまもなく終了致します。まだお済でないお客様は……―』


    (ザワザワザワ)


    (カッカッカッカッ……)


 「お待ちしておりました。長旅ご苦労様です」

…「………」

 「こちらへ。車を用意しております。もちろん我らがドイツ車を」

…「当然だ。我らがゲルマンの生み出すものこそがこの地球上で最も優れたもの。例えかつての同盟国であろうと日本車などはな」

 「はっ」

…「フィーア、荷物を車へ」

フィーア「……」


    (ドンッ)


 「!?」

フィーア「………」

…「……銃声?」


男「う、動くなぁーーー!!」

 「な、なんだあいつは!?」

 「み、見ろ!あいつ銃を持ってるぞ!!」


…「アレはなんだ?」

 「は、はぁ……どうにも説明がしがたいのですが……」

…「日本で銃の所持は不法だと聞いておったがそれは間違いか?しかもここは空港、セキュリティも厳しいはずだが」

 「そ、そのはずですが……たまにああして警備の目を抜けて持ち込む者もいるようで」

…「ふぉっふぉっふぉ……日本でもこのような事件が起こるとは………これからワシらがもっと愉快なことを起こすというにな」

…「まぁよい前座じゃろうて……いくぞ、フィーア」

フィーア「……」

…「それより他の連中はどうなっておる?」

 「はっ、すでにヘレン、フリッツ、マローナの3名は入国を果たしており……マローナは例の人物の依頼通り桐野杏子を……」

…「桐野杏子か……たしかに生かしておけばなにかと目障りな存在ではあろうが。それでやつはこちらの要求にはどう解答しておる?」

 「未だなんの返事も」

…「……まぁよいて。ヤツが裏切るならそれ相応の処置を取るまで。 サードはどうしておる?」

 「はっ。サードは本日ヘレンと接触致しました」

…「ふむ、ヘレンか……アヤツとはまだ面識はないがその腕は聞いておる。ならば全ては計画通りか」

 「それと……お耳にいれておくことが」

…「?」

 「セカンドのことですが……」

…「それについてはファーストから聞いておる。忌々しくも我等の元に潜入したスパイがおったわ。そいつがセカンドを日本に送り出しておった」

 「スパイ!? それでは今回の計画が……」

…「ふん、安心せい。例え漏れたとしてもワシの長年の夢をそんな些細なことで潰えさせてたまるか。第三帝国復活というワシの野望をな」

 「で、ですが…」

…「くどい! この計画が成功に終わればあのお方もお目覚めとなるのだ。こんなことなど些細なことよ」

 「はっ、申し訳ございません」

…「それにファーストもすでにこの国に来ておるしの〜」

…「いよいよワシの野望が実現する時がきたわ」

 「お、おめでとうございます……カオス・エンジェル…いえ、Dr.カオス」

カオス「ふん、世辞はいい。行くぞ」











一方カオス・エンジェル達ネオ・ナチの一行が去った空港内では……

銃を持って人質をとった犯人が立て篭もろうとしていた

人質を取っているため長引くかと思った瞬間、その均衡は一人の女性の叫び声と共に破られた


まりな「まりなキィーーーーーック!!」

    
(バキッ)

男「ぐべはぁっ」








………to be continued


あとがき

はい、今回は座談会風の後書ではありませぬ。 久々の小次郎、杏子編以外のテラー編! 思えば最後にテラー編書いたのって1999年……つまり3年近く前。それだけこの連載も続いてるんだな〜としみじみ思えます。これも一重に読んでくださる読者様方のおかげ、感謝しておりますぜ旦那! そして物語はやっと前座のような場面も終わり、予定では核心に入れたと思います。 これもやっと出したかったキャラ達が勢揃いして来てくれたおかげ。シリーズの面々にネオ・ナチ幹部。まりなも前回の小次郎編Zで出てきたし(笑)

このまりなに関してですが……杏子がもう片方の主人公のために出ないと思った読者様もいたかもしれませんが、私はこうして遅れて出したかったのです!そして所々読み返してみるとちゃんとまりなはアメリカから日本へ向っているシーンもあります!! その箇所がわかった方にはちゃんと読んでくれているという証なので素敵なプレゼントを進呈したい今日この頃ですw

さてさて、次話からはいよいよThe 3rd dayに突入!! 一体どうなるのやら……と期待してくれてもいるのかもしれませんが管理人の都合により暫しお休みさせていただきます。(またかい俺) 期間としては3〜6ヶ月ぐらいだと思います。勝手を言って本当にすみません(^^; 遭えて理由を言わせていただければ……ドイツ語勉強してきます(大嘘)

再開後、その時はまたEVE Endless Rhapsodyをヨロシクお願いします♪



とうとう役者は勢揃い!!(違)
ネオ・ナチのボスが部下を伴っての日本上陸
それを阻むために出るか、小次郎の新必殺技!!(嘘)
物語は3日目へと突入する!!
(いつ出るかわからないけど)次回小次郎編T!!

次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪



Next Back

EVE Endless Rhapsody