小次郎編X





黄「は〜い、小次郎! またこうして会えることをワタシはとても喜ぶネ」

小次郎「………俺を見捨てて先に逃げたやつの台詞だとはとても思えんな」

黄「まぁまぁ。その埋め合わせとして、ここの支払いはもちろん私もち―」

小次郎「あ、ウェイトレスのお姉さん。 ここのメニューにある値段の高い酒を上から順に持って…―」

    (ゴスッ)

小次郎「ゴッ……―」

黄「………おとなしくアイスティーでも頼むのよろしいヨ」

小次郎「い…今もろにはいったぞ………」

黄「お洒落にならない冗談を小次郎が言うからダヨ」

小次郎「(冗談じゃなかったんだけどな……)」

    (グリグリ)

小次郎「おわっ! ま、まだ何にも言ってねぇーぞ、俺は〜」

黄「今、よくないこと考えてたのお見通しよ」

小次郎「ひ、人の心を読むな!」

黄「さっ、早く要件を済ませるね。 まずは、昨日頼まれてたことはすでに調べがついてるヨ」

小次郎「なに、もう!? さすがに早いな……いったいどんな(情報)ソースを持ってるんだか」

黄「それは企業秘密ネ♪」


黄はそう言いながら俺が頼んでいた情報をさっそく提供し始めるべくその口を開く


黄「まずは……ブラッディ・ベル………ヘレンのことだが……」

小次郎「!!」


俺は思わず身を乗り出す。何しろ昨日受けた依頼の対象人物でもあり、個人的にも興味があるからだ


黄「昨日も言たが、彼女はそのネオナチという組織の中では異様な存在ヨ」

小次郎「ああ、それはわかる。 だがイデオロギーに共感したとかそういうことはないのか?」


俺は適当に言うが、その可能性はすでに自分自身否定している

何故なら昨日あった妹を名乗るフリーダの言葉を聞いたからだ

「姉は組織を憎んでいる」というその一言。ならば当然イデオロギーに共感するはずもなく、考えられるのはスナイパーとしてのその技量を見込まれたからだろう


黄「その前に小次郎。 第二次世界大戦中、ドイツが行った残虐行為はしているか?」

小次郎「んぁ? ああ、そりゃあいろいろ知ってるぜ。ナチスは自国民に選民的思想を植え付けるために行ったユダヤ人の大量虐殺とかな」

黄「そう、アウシュビッツとか有名ネ」

小次郎「……それとヘレン・ファルクがなにか関係してるのか?」

黄「そのヘレン・ファルクだけど……面白い事実がわかったネ」

小次郎「面白い事実…?」


俺は黄が語り始めたヘレンの素性を黙って聞く






黄「―と、いうわけネ」

小次郎「……なるほどな」

黄「って、小次郎……なんだかあまり驚いていないみたいだけど…」

小次郎「ああ、ちょっとしたルートからそのへレンがネオナチを憎んでいるという話を聞いてな。お前の話でさらに納得がいったってわけだ」

黄「ふ〜〜ん、ちょっとした……ツテ……ヘレンの妹か?」

小次郎「……さすがに情報収集は早いな」

黄「昨日アレからいろいろ調べたよ。そうしたらなんと、ブラッディ・ベルの妹までこの日本に来ていたからネ。しかしその妹がすでに小次郎と接触していたのは知らなかったヨ」

小次郎「まぁお前だから話すが……その妹からはブラッディ・ベル、つまりヘレンを探し出してほしいという依頼を受けたのさ」

黄「ふむふむ……それで一昨日はあまり興味がなさそうだたのが昨日はあんなに関心を示したわけカ」

小次郎「まぁな。 それと黄……昨日頼んでいたもう一人の方だが……」

黄「ああ、あの人物か……この人物は正直何を考えているのかわからないよ。 小次郎が気になるのももっともネ」

小次郎「………」

黄「この人物に関する情報はこれにまとめておいたから渡しておくよ」


俺は黄から渡された人物に関する情報を閲覧した

そこにはその人物の経歴や現在の状況が簡単に記されている

そして………


小次郎「………」

黄「どうか、小次郎?」

小次郎「……恩に着るぜ、黄」

黄「その顔だと小次郎の勘が当たたみたいネ」

小次郎「ああ……悪いほうにな。だがこれで納得がいった」

黄「じゃあ後は……武器か?」

小次郎「ああ、悪いが急ぎで必要になったんでな」

黄「あいにく今は……小次郎、急ぎといても2時間は大丈夫ダナ?」

小次郎「2時間?」


小次郎は現在の時刻を確かめると、16時15分前を指していた

指定された時刻は22時……今から2時間となると……


小次郎「ああ。 だができるだけ早く済ませたい、だからさっそく行くぞ」

黄「ああ!まだこれからワッフルを注文しようとおもてたのに!」

小次郎「そんなもんいつでも食えるだろうが……それに……」


俺は言いながら黄の前のテーブルを眺め唖然とする

そこにはこの話の間に黄一人によって平らげられた皿が山積みされている


小次郎「……太るぞ」

黄「余計なお世話ヨ」









16:27 -都内某所-


黄「さぁ、ついたよ小次郎!」

小次郎「着いたって……ここは……」


俺は着いた先の看板を見上げる。そこには『龍三味』という看板が掲げられており

そして周りを見渡せば中華料理屋、漢方薬、活気にあふれた露店などが出店しておりまるで日本じゃないような錯覚を受ける

話には聞いていたが今まで縁がなかっただけに足を踏み入れたことはなかったがここは中華街

とはいっても元町(横浜)や三宮(神戸)のとは違い規模も小さい

だが中国系はすぐに異国でも自分達の街を造ってそこで暮らすというが、なるほどと思わされるパワーをそこには感じられる

そう、まさにここは………


小次郎「って! お前時間あるかとか聞きながらこんなところに俺様を連れてきてまたなんか食うつもりだったのか? お前の胃袋は牛か??」

黄「失礼ね小次郎! 誰がまた御飯を食べる言うたカ!!」

小次郎「でも…ここは……」

黄「そう、確かに見た目は中華料理屋ね! でも入ってみれば……」

小次郎「どれどれ」

    (がちゃっ)

    (ワイワイ)

店員「三番テーブル、北京ダックの注文入ったヨ!」

コック「了解あるね!」

    (ガヤガヤ)

小次郎「………」

黄「………」

小次郎「おい………」

黄「……わかてるよ小次郎。 だけど早とちりは現金ね、小次郎!」

小次郎「それをいうなら厳禁……だろ」

黄「???」

小次郎「とにかく……冗談を言ってないでさっさと俺を―」

黄「了解、了解ネ!皆まで言わなくてよろしいヨ。 林(リン)!」


黄は俺の口をふさぐと、店の中に向かって叫ぶ

すると中からウェイターと思しき男が近寄ってくる


林「これはこれはお嬢様、気付きませんで。なにか御用でしょうか?」

小次郎「(お…お嬢様!?)」

黄「これから例の部屋に入るが……父はいるのか?」

林「いえ……現在は………」


どうやら黄はこの店の娘のようだ。 だが、この林と呼ばれた男の物腰……ただものじゃないな

何故ならかなり鍛えこんだ身体付きで、しかもときおり俺のほうを観る目が堅気のものとは思えない

つまりはここが真っ当な中華料理屋ではなく、裏の顔を持っているという可能性が高い

どうやらここに銃があるっていうのも嘘じゃなさそうだ


林「お嬢様…こちらは?」

小次郎「(どうやら俺様のことが気になるようだな。 黄をお嬢様と呼ぶことから察するにこの男は目付け役とでもいったところだろう)」

黄「ん? あぁ、私の商売相手よ……」

林「お嬢様……まだあのようなことをなさっておるのですが? お父上も申しておられたように、あのようなことはお嬢様がやらなくとも。 なにしろお嬢様は我等の……―」

黄「林! 客人の前ネ。 余計なことは喋らない!!」

林「……これは失礼いたしました。お客様にも大変御見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

小次郎「うむ、深く反省しとけ」

林「………」

小次郎「じょ、冗談だぜ冗談! デス イズ ア ジョークってヤツだ」

林「………」

小次郎「(俺様のユーモアを笑わないとは大層な堅物だな)」

黄「ったく、小次郎! 馬鹿はそのぐらいにしとくよろしいヨ」

小次郎「ぐっ―」

黄「じゃあ中に入るけど、このことはバーバには内緒にしとくのよろし!」

林「……かしこまりました」

黄「さっ、小次郎入るヨ」

小次郎「あ、ああ……」


俺は頭を下げたまま微動だにしない林という男を尻目に黄の後を追う

黄は店の奥にあるVIPルームへと入っていく。 中は豪勢な造りで四方に4つの彫像が置かれている

彫像にはプレートが付いており、玄武(げんぶ)、白虎(びゃっこ)、青竜(せいりゅう)、朱雀(すざく)と記されている。


小次郎「四神獣(しじんじゅう)か………」

黄「お、なかなか小次郎も博識ネ」

小次郎「ふん、な〜に言ってんだよ。これぐらい俺様だって知ってぜ」

黄「ふ〜ん、じゃあこういう仕掛けも知ってたか?」

小次郎「?」


黄は言うや白虎の像に向かうとおもむろに白虎の向きを180℃変え他の3体に対して尾を向ける格好となった


(ガコンッ)


小次郎「!?」


すると左隣の朱雀の像の目の前に地下へと続く階段が表れた


小次郎「なるほど、隠し階段か。 それにしても凝った趣味だな」

黄「他人の家のことをあまりとやかく言うのよくないネ」

小次郎「そういやさっきの林ってやつ、お前のことお嬢様って呼んでたけど……―」

黄「それは秘密ヨ、小次郎!」

小次郎「秘密……ネ」

黄「女はなにかと秘密が多いものネ。 だからこそミステリアス」

小次郎「………」

    (パチッ)


階下に到達し、黄は明かりを灯す

すると部屋に明かりが満ち、10畳ほどの大きさの部屋が俺の前に広がっている

さらに言えばまるでコレクションのごとく銃器や刀剣の類がショーケースに飾られまるで博物館のようだ


黄「さっ、着いたよ小次郎」

小次郎「おい、これ……」

黄「小次郎が言ったのだろ、銃が要ると。 好きなのを勝手に持って行くといいね。 どうせ飾ってるだけで使いもしないのだから」

小次郎「そりゃこの日本でこんなものをおおっぴらに使われても困るだろうがな」

黄「それに相手亜相手はネオナチなのだろ? それなら装備もちゃんとしないと駄目ネ。 これなんか破壊力満点ヨ!」

小次郎「そ、そんなもん持って街中を歩けるか!!」


黄が俺にさもありなんと見せたのはずっしりと重そうで存在感のあるどう見たって豆鉄砲には見えないバスーカ砲だった


黄「これなら一網打尽なのだがな〜」

小次郎「もっと目立たなくて使い勝手のいいのはないのか?」

黄「それならこの小型のマシンガン、Vz61スコーピオンがお薦めネ」

小次郎「スコーピオンか……確か冷戦の最中旧チェコスロヴァキアが開発した銃だったな」

黄「まぁ使い勝手と携帯性は良いと思うネ」

小次郎「ああ、ありがたく頂戴していくぜ。 それとこのコルト ガバメントももらって行くぜ」

黄「その二つでいいのか?」

小次郎「ああ。後は弾さえ余分に持っていけば何とかなるだろうからな」

黄「そうか」

小次郎「じゃあ黄!俺様はこの後もまだやることがあるんでここで失礼させてもらうぜ」

黄「了解ネ。 それとその銃だが……」

小次郎「わかってるって。 後で支払いは事務所の方に請求してくれ」

黄「……要らないよ」

小次郎「何!?」

黄「昨夜の借りを返すと思えばいいネ。 だから用が済んだら売るなり捨てるなり自由に遣うネ」

小次郎「………黄」

黄「死ぬなよ、小次郎」

小次郎「……ああ。 それに、知らなかったのか? 俺様は殺されたって死なないんだぜ」

黄「ああ、そうだたナ」

小次郎「じゃあな、黄」

黄「再見(ヅァイチェン)!」







16:50 -龍三味前-

小次郎「さて……情報も武器も揃った。 後は………」

小次郎「とりあえず俺様のゴージャスな事務所に戻らないとな」


………… to be continued




ぱら「終わっだ〜〜〜……づがれだ〜〜〜」

黄「一体どうしたネ、作者?」

ぱら「いや、書こう書こう思ってた話がようやく書き終わって安堵したってわけさ」

黄「なるほど。 でも今回の話……いやに伏線が多いネ」

ぱら「まぁな。 何気に今回の話は小次郎編では重要な1話だと言っても過言じゃないのさ」

黄「ほほぉ。 そしてなんか私の正体がチラッと出てきてもいるね」

ぱら「そう、なんと黄は中華屋の看板娘だったのです!」

黄「それ違うネ」

ぱら「やっぱわかる?」

黄「もろばれネ。 なにしろウェイターが私のこと"お嬢様"と言ってたヨ」

ぱら「ふむ……黄の正体って一体なんなんだろうね〜?」

黄「それはまだまだ秘密ネ!」

ぱら「うむ。 それは俺もできるだけ秘密にしておきたいぞ。書く手間も省けるしな」

黄「そういや今回小次郎の口調がところどころ変わってるような気がするのは気のせいか?」

ぱら「おお、よくぞ聞いてくれた!実はな……先日あるところでEVEのCDドラマをゲットして聴いてたわけさ」

黄「ふむふむ」

ぱら「そうしたら結構小次郎ってCDドラマだとあんな口調なわけネ」

黄「………」

ぱら「だからそれが伝染(うつ)ったのかもしれないヨ」

黄「理由はわかたネ、作者。ただナ……」

ぱら「ん? どうした、ニコニコしながらこみかめに血管浮かせて。 それじゃあまるで怒ってるみたいじゃん♪」

黄「私は今これ以上ないぐらいに怒ってるネーーーーーーーッ!!」

    (アッパァーーーカァァッッッッット)

ぱら「はがぁぁっっっっっ! ……………な…なぜだ」

黄「私の口調まで真似しないでよろし!」

ぱら「そ、そんな理由で作者を殴るなぁーーーー!」

黄「ちゃんちゃん♪」


情報も銃も揃え、弥生救出に立ち上がる小次郎
小次郎は黄から聞いた情報とは!?
そのとき杏子はモニカ、雄二とともに……
そこで杏子が知った驚愕の事実とは!
次回 杏子編X!

次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪


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EVE Endless Rhapsody