小次郎編Y
17:05
小次郎「さて……俺様のゴージャスな事務所に帰るわけ…だが……―」
小次郎「………その前に例の件を確認しておくか」
俺は弥生の事務所で失敬した携帯電話を取り出し番号を押す
(プルルルルルルル プルルルルルルル ……ピッ)
…『Hello, who's it?』(訳:もしもし、どちら?)
小次郎「あ〜、えっとー……ア、アイアム ア プ…プ…プライベート スーパー ディテクティブ〜」
…『ああ、昨日の探偵さんね。確かアマゴロウと言ったかしら?』
小次郎「アマギだ! アマギ コジロウ!!」
…『冗談よ』
小次郎「………それがいわゆるドイツ流ってわけか、フリーダ」
フリーダ『ふふ、まさか。これは私個人のユーモアよ。 それよりなにかしら? もう姉の行方がつかめたの?』
小次郎「いや、それは残念ながらまだだ。 ただちょっと聞きたいことがあってな。これからちょっと付き合ってもらえないか?」
フリーダ『そう……じゃあ駅前の喫茶店なんてどうかしら?』
小次郎「いや。できれば誰もいないところで話したい」
フリーダ『あら? それってもしかしてプライベートなお誘い?』
小次郎「−でもないさ。 まぁ用件は会ったときに話す。だから……17:30にとりあえず―」
フリーダ『今すぐ……でも大丈夫よ、私は』
小次郎「?」
フリーダ『フフ…ゆっくりと後ろを振り向いてみて』
俺は言われたとおりゆっくりと後ろを振り向く
するとそこには電話の相手であるフリーダがにこやかな笑みを投げかけながら立っていた
フリーダ「またお会いできて嬉しいわ、日本のNo1探偵さん」
小次郎「………」
17:22 −廃ビル−
フリーダ「……男と女が話すには不似合いな場所……ね」
小次郎「ああ。だがここなら誰にも見られる心配はないからな」
フリーダ「あら? それはどういう意……―」
フリーダは言いかけた言葉をピタリと止め、動じることなく俺を見つめる
俺は今懐から調達したばかりのコルト ガバメントを取り出しフリーダに向けている
フリーダ「なんの真似かしら?」
小次郎「ほ〜、ジャーナリストにしちゃまったく動じていないな。っていうかこういうことには慣れっこって感じだぜ。言っておくがこいつはモデルガンじゃない」
フリーダ「見ればわかるわよ。それにあなたの知ってるジャーナリストと私とじゃ潜り抜けている場数が違うのよ」
小次郎「………」
フリーダ「そもそも女に銃を向けて話を聞こうとするのはあんまり感心しないわね」
小次郎「ああ、俺もそれには同感だ。 断っておくがこいつは俺の趣味じゃないが、今はそうも言ってられないんでな」
フリーダ「?」
小次郎「俺に近づいた理由を教えてもらおうか。 わざわざ茜まで使ってな」
フリーダ「なんのことかしら? 私はただこの日本での姉の行方を知りたいためにあなたという探偵を彼女に紹介してもらっただけよ」
小次郎「ほー、そいつはまた」
フリーダはそう言いながらも依然動じずに俺のほうを見つめ続けながら淡々と喋っている
そこにはなにかしらの自信が窺われている。そう、俺が撃つはずもないという自信が……だ
小次郎「………」
確かに俺は撃つつもりはなかった。なにしろこれはこれから始めることへの布石に過ぎないのだから
フリーダ「いい加減にその銃を降ろしてくれないかしら? さっきも言ったけど女に銃を突きつけて尋ねるというのは穏やかじゃないわ」
小次郎「俺も言ったはずだぜ。『俺の趣味じゃない』と」
フリーダ「OK,OK。 じゃああなたの聞きたいことってなんなの? そんなことするからには姉のことじゃないんでしょ?」
小次郎「ああ。 俺が知りたいのは何故俺に依頼してきたかということだ」
フリーダ「だからそれは茜の紹介で―」
小次郎「CIAが一ジャーナリストの紹介で俺に接触してくるのか?」
フリーダ「!?」
小次郎「悪いがこっちには優秀な情報屋がいてな。 まぁ依頼人を調べるのは探偵としての初歩だ」
小次郎「(以前にそれを怠って痛い目にも遭ったしな)」
フリーダ「…………」
フリーダの表情はさっきまでのにこやかなものとは明らかに違っている。そう、眼光はまるで俺を射抜くかのようだ
だがその眼光は再び解かれ、警戒を解いたものへとなった
フリーダ「どうして私を疑ったの?」
小次郎「あのな……ネオナチの事件にすでに巻き込まれている最中にその組織幹部の姉を名乗る女が現れた。これはどう考えても疑うだろう」
フリーダ「………」
小次郎「それに、今もその懐と足元にぶっそうなものを隠しているジャーナリストなんかいないしな」
そう、フリーダは懐と足元に何かしらの武器を隠していた。だがそれは銃じゃないことは確かだ
その証拠に銃の重みで身体が一方に傾いてもいないし、胸元も………両方とも生唾もので疑うものはない
フリーダ「………」
小次郎「あ、いや……と、とにかくそういうわけだ」
フリーダ「………OK,化かしあいは私の負けね。 確かに私はCIAのエージェントよ。」
小次郎「ここ(日本)での目的は?」
フリーダ「断っておくけどこれは仕事じゃないわ。まったくのプライベートでの来日よ」
小次郎「………」
フリーダ「別に信じてくれなくてもいいけどね。 でもヘレン・ファルクが私の双子の姉だというのは本当よ」
小次郎「CIAとネオナチ? 面白い組み合わせだな。 それともヘレンのほうはCIAのスパイなのか?」
フリーダ「いいえ。私たちのこの運命は……ある国で生まれたことに起因しているのよ」
小次郎「ある…国?」
俺はその言葉を聴いた瞬間嫌な予想が頭の中に浮かんできた
フリーダ「フフ……あなたにとっても案外関係のある国よ」
小次郎「………エルディア…か」
フリーダ「ええ。そこで私たちはある実験の結果として生み出されたの」
小次郎「実験の結果?」
フリーダ「私のことを調べたってことはネオナチのこともある程度は調べてあるんでしょ?」
小次郎「……ああ」
フリーダ「じゃあDr.カオスって聞いたことないかしら?」
フリーダの口から出されたその名前には聞き覚えがあった。 確か10代で旧ナチスの科学顧問となり第二次大戦中ではアウシュビッツ収容所で数々の非人道的実験を行ったマッドサイエンティストだと
まだ幼さが残る容姿にもかかわらず行ったその非人道的な行いから付いた二つ名がカオス・エンジェル、混沌の天使
終戦後は多くの残党が南米に逃げる最中エルディアに渡ったとも聞いている
そしてそこで今までの人体実験のデータが………
フリーダ「あなたはDr.カオスがアウシュビッツで最も熱心に取り組んでいた研究って知っているかしら?」
小次郎「い…いや……」
俺はいつの間にか向けていた銃を降ろしフリーダの話しに聞き入っていた
フリーダ「彼が最も興味を持っていたのは双子の遺伝子よ。 何故だかわかる?」
小次郎「………クローンか?」
フリーダ「そう、彼はそのために収容されていた多くの双子のユダヤ人を切り刻んできたのよ。老若男女を問わずにね。そしてその研究は戦後のエルディアでも続いていた」
小次郎「そして実験の最中でお前達が生まれた…ってわけか」
フリーダ「生まれたわけじゃないわ! 造られたのよ!! その証拠に私達は母親や父親の顔だって知らないのよ」
小次郎「………」
フリーダ「………そして私たちは物心ついたときから外の世界を見ることもなくただデータを採取するためのモルモットでしかなかった。そこでの生活は地獄だったわ……他にも造られた双子の兄弟姉妹がまわりには大勢いた。でもある日突然その何組かが消えていくの。私たちは怯えたわ、いつ私たちにその順番が回ってくるかと。でも私たちにできたのは姉さんとお互いに励ましあうだけだった………そんな生活がある人物に出会うまでの10年間続いていたわ」
小次郎「ある人物?」
フリーダ「ええ、その人は私か姉かのどちらかを逃がすことが可能だと言ってきた。姉は迷うことなく私を逃がしてくれたの」
小次郎「…………」
フリーダ「それで私はイスラエル経由でアメリカへと渡ることができ、今はCIAのエージェントとなっているわ」
小次郎「そのお前を助けたという男。名前は覚えているか?」
フリーダ「名前? いいえ、彼は教えてくれなかったし私も聞かなかったわ。 ただ中東系ではなく中国人のような東洋系の顔立ちだったのは覚えているわ。 ………こうしてあなたを見ていると、なんだか雰囲気が似ているわね」
俺はその言葉で確信を得た
そんな施設に入ることができるのはエルディアでも幹部クラス。そして東洋系の顔立ちをしているのは御堂、ディーブ、そして…………
小次郎「(おやっさんか………)」
フリーダ「もしかしてその人物に心当たりがあるの?」
小次郎「……いや、多分人違いだ。 だがアンタが俺になにか裏があって近づいたわけじゃないってことはわかったぜ」
フリーダ「ええ。私の目的は姉を組織から抜け出させること。 でもこの日本でCIAとしての権限を使うわけにもいかないからこうしてあなたという探偵に依頼したわけよ」
小次郎「そいつは納得だ。 茜と知り合ったっていうのも本当らしいな」
フリーダ「ええ、ジャーナリストというのは私のアンダーカバーだしね」
俺たちはお互いに顔をあわせ苦笑する
俺はひとつの不安が晴れて正直安堵もできたわけだ
フリーダ「それにしてもいきなり銃を突きつけられるとは思わなかったわ」
小次郎「悪かったな。俺には今時間もないんで焦ってたのかもな」
フリーダ「時間がない?」
どうする? 俺は正直に弥生が連中に捕まっていることを告げるべきかどうか迷った
今夜これから出向くことを伝えればフリーダも間違いなくついてこようとする
だが行けばいかにCIAとはいえ命の保障なんかできないし、俺もフリーダを守りながら弥生まで救出なんて不可能に思えた
(ジャリ)
小次郎・フリーダ「!?」
ガキA「へっへへへへ。こんにちはルンペンさん」
小次郎「(ルンペンだと!?)」
ガキB「へー、こんなおっさんをボコるだけでいいのかよ……ラッキー」
ガキC「オッサンはアンラッキーだけどな〜」
小次郎「(オッサンだと!?)」
小次郎「なんだお前らは……今こっちは取り込み中だ。薬ならどっか別のところでやってろ」
ガキB「へへ……俺らが用があるのはそっちのお姉さんなんだよ」
小次郎「……知り合いか?」
フリーダ「まさか。こんなどこの国にでもいそうなアホ顔に知り合いはいないわ」
ガキA「あ…アホ顔だと!?」
小次郎「なるほど。それなら納得だ」
ガキC「てめぇーも納得するな、おっさん!」
小次郎「………」
ガキC「こっちはお前をボコって、そこのお姉さんを連れ出すだけだ」
ガキB「抵抗すると痛い目をみるぜ」
小次郎「(やれやれ……ただでさえ虫の居所が悪いっていうのに……かわいそうな連中だ)」
ガキA「なに睨んでやがんだコラァッ!」
小次郎「いやな……お前らが哀れだと思ってな」
ガキA「なに? てめぇー、いったいなにを―!!」
ガキが台詞言い終える前に俺はすばやくガキどもの懐に入り込み、正面に立っていた男の鼻っ面に頭突きを喰らわせる
ガキA「ぎゃーーーーっ……は、鼻が………」
小次郎「つぅーーー。ちょっと今のは俺もくらっときたな」
ガキB「やろーっ!」
小次郎「ヨッと!」
俺は頭突きをかませたガキを向かってくるガキに投げつけて、もう一方のガキに襟をつかんでそのまま一本背負いを思い切り背中からたたきつけた
ガキC「クハァーっ」
たたきつけられたガキはそのまま息も絶え絶えに苦痛に苛まれる
ガキB「や、野郎……なめやがって」
残ったガキはそう言い放つと懐からナイフを取り出して俺に向かって構える
小次郎「おいおい。まだやるつもりか? どうやら誰かに頼まれたようだが、このままじゃあその報酬以上に治療費がかかるぜ」
ガキB「うるせーっ!」
ガキはそう言いながらナイフを突き出してくる
だが俺にはその動きはあまりにも遅く余裕をもってかわす
ガキB「くっ……ち、ちくしょー!」
フリーダ「そこまでだ」
ガキB「!!」
いつのまにかフリーダがガキに近づきスッと持っていたナイフを取り上げる
小次郎「♪〜」
フリーダ「なかなかな手並みだったな。軍隊経験でもあるのか?」
小次郎「まさか。ただ場数を踏んでるだけさ」
フリーダ「フッ。さて……と」
フリーダが俺にやられた二人に目を向けると、二人は「ヒッ」と叫びそのまま仲間を置き去りにして一目散に逃げ出していった
俺は連中を追わずに残った一人の逃げ道にただ立ち塞がる
小次郎「おい!言いたいことはわかってるよな?」
ガキB「ヒッ……わ、わ、わ…悪かったよ。 お、俺たちはただ頼まれただけなんだ………」
小次郎「誰にだ!」
ガキB「し、しらねー奴だよ。ただこのお姉さんが知り合いでルンペンに廃ビルに連れ込まれたから、助け出したら礼はするって言ったから」
小次郎「………んで、そいつはどこで待ってるって言ったんだ?」
ガキB「そ…それは………」
…「ボクですよ」
小次郎・フリーダ「!!」
突然前触れもなく俺たちの横合いから声が投げかけられ、俺たちがそちらに視線を向けたとたんなにかが横合いを過ぎ去っていった
ガキB「ぎゅあーーーーーーーーっ」
過ぎ去っていったものがなにかを確認する前にガキが悲痛の叫び声を発す
見るとガキの太ももに深々とナイフが突き刺さっていた
小次郎「………おい、大丈夫か?」
ガキB「いてぇー、いてぇーよー! 死んじまう」
フリーダ「いや、それぐらいでは死なんから大丈夫だ。うるさいので少し黙っていてもらおう」
ガキB「ガァッ」
フリーダはガキの首筋に軽く手刀を浴びせ気絶させる
俺のほうは懐から再びコルトを取り出し声の主に向けた
そこにはまだこのガキとそう違わない少年が立っている
しかもその顔は………
小次郎「貴様はアギブ……!」
小次郎「(いや、似てはいるがアイツよりは若い………)」
…「アギブ? ああ、じゃあもう会ってたんだね」
小次郎「何者だ、貴様! ネオナチのメンバーか」
フリーダ「!?」
…「ネオナチ? ふふ、違うよ。 だって僕がしてるのはゲームだもん」
小次郎「ゲーム……だと?」
…「そうだよ。僕が殺すか殺させるかの命を賭けたゲームさ」
小次郎「………なにを言って―」
…「僕はあなたに会いたかったんだ。 天城小次郎さん」
小次郎「!!」
…「はじめまして。僕の名前はセカンド」
to be continued
ぱら「ええー、皆様どうもお久しぶりです」
まりな「本当にお久しぶりよね。いったいなにをやってたのかしら?」
ぱら「うう……語れば長くなるんだよ」
まりな「まぁーまぁー、これでも飲んで語ってよ」
ぱら「うう、すまん。 グビグビグビ………ブフッーーーーーー」
まりな「あら、もったいない」
ぱら「ゲホゲホ……こ、これウォッカやんけ!」
まりな「あら? 嫌いだったの?」
ぱら「俺はウォッカは飲めないんだよ。あんなアルコールの塊みたいなのは」
まりな「そーよねー。やっぱお酒は楽しくおかしく飲まないと♪」
ぱら「って、話が逸れ始めるてる… って、なんでここまで遅れに遅れたかというと……」
まりな「ふむふむ」
ぱら「書き溜めていたデータが全て消えてしまったからなんだよ」
まりな「へー、それは災難だったわね〜」
ぱら「まりな編なんてのも書いてたのにそれもだし」
まりな「な・・・なんですってぇーーーーっ!」
ぱら「ひぃー、ごめんなさい」
まりな「どうしてちゃんとCDRとかFDに移しておかなかったのよ!」
ぱら「面倒だったから」
まりな「…………撲殺してもいいかしら?」
ぱら「えっと……もちろん冗談だよね?」
まりな「もっちろん。あったりまえじゃないー」
ぱら「えっと…なんでそう言いつつベレッタを取り出したの? え? なんでセーフティーも解除してるの?」
まりな「いや〜、最近射撃練習してないのよねー。 やっぱ練習してないと腕もなまってきちゃうしー」
ぱら「えっと……」
まりな「どうしようかな〜、ここでもうしちゃおうかしら?」
ぱら「ま…またこんなことが起こらないよう気をつけます」
まりな「動く的もいることだしここでやろうかしら?」
ぱら「ひぃーーー! も、もちろんまりな編のほうも書かせていただきます」
まりな「あら、そう? なんだかまるで私が脅したみたいにも聞こえるわねー」
ぱら「そ、そんなことはありませんよ〜」
まりな「ま、とにかくよろしくね、作者さん」
(ポンッ)
ぱら「………」
弥生を助ける前にセカンドと遭遇してしまった小次郎
そしてセカンドの前に為すすべもなく倒れ付してしまう
小次郎は果たして弥生を助け出せるのか?
そしてセカンドの真意とは?
次回 小次郎編Z!
次も読まないと1919ぶっ放しちゃうわよ♪
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